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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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解読戦術

侵食体の絶叫が、

教会の中へ響き渡る。


 黒い核へ入った亀裂が、

不安定に脈打っていた。


 エルドは荒い息を吐く。


「はぁ……っ、はぁ……!」


 手は震えている。


 だが、

目はもう逸らしていなかった。


 レイは静かに侵食体を見る。


 核の揺れ。


 空間歪曲。


 侵食流。


 全部が崩れ始めている。


「次で終わる」


 エルドが顔を上げる。


「え……?」


「核の循環が乱れてる」


 侵食体が再び消える。


 だが。


 今までより遅い。


「左」


 エルドが反応する。


 剣を振る。


 侵食体の腕が弾かれた。


「下がるな」


「っ!」


「今、

 向こうが崩れてる」


 エルドの呼吸が変わる。


 恐怖だけで動いていた足が、

少しずつ前へ出始める。


 侵食体が咆哮する。


 空間が軋む。


 床が浮き上がる。


 だが。


「正面は囮だ」


 レイが静かに言う。


「本命は右後方」


 エルドが咄嗟に振り向く。


 そこへ。


 侵食体の腕が現れた。


「うおおっ!!」


 剣が振り抜かれる。


 黒い核へ、

さらに深い亀裂が走った。


 侵食体が大きく揺れる。


 外の騎士たちが息を呑む。


「新人が押してる……」


「違う」


 騎士の一人が、

震えた声で呟く。


「あの黒髪の男だ」


 全員の視線が、

レイへ集まる。


 レイ自身は動いていない。


 剣も振っていない。


 だが。


 侵食体の動きが、

完全に読まれていた。


 エルドが勝てている理由。


 それが分かり始める。


「解読……」


 誰かが小さく呟く。


 レイは侵食体を見つめたまま、

静かに口を開いた。


「エルド」


「っ、はい!」


「次で核を潰せ」


 侵食体が消える。


 だが。


 エルドはもう、

目で追っていなかった。


 床の歪み。


 空気の揺れ。


 レイが見ているものを、

少しずつ理解し始めている。


「右前!」


 エルドが踏み込む。


 侵食体が現れる。


 その瞬間。


 剣が、

黒い核を正面から貫いた。


 沈黙。


 次の瞬間。


 侵食体の身体へ、

無数の亀裂が走る。


「■■■■■■——!!」


 絶叫と共に、

黒い身体が崩壊した。


 灰が舞う。


 空間の歪みが、

ゆっくり静まり始める。


 エルドが膝をついた。


「か、勝った……?」


 レイは祭壇を見る。


 亀裂はまだ残っている。


 だが。


 さっきより脈動が弱い。


「侵食体と門は繋がってるな」


 リナがレイを見る。


「分かるの?」


「ああ」


 レイは静かに核の残骸を見る。


「向こう側は、

 侵食体を“通してる”」


 その時だった。


 外の騎士たちが、

ゆっくり武器を下ろし始める。


 さっきまでの敵意が、

少し変わっていた。


 恐怖。


 警戒。


 そして。


「……なんだ、

 あの男」


 理解できないものを見る目。


 レイはその視線へ気づきながら、

静かに亀裂を見つめ続けていた。

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