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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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14/25

解読士

教会の外から、

鎧の音が近づいてくる。


 数は多い。


 十人以上。


 しかも足音が揃っていた。


「教会騎士団だな」


 レイは静かに呟く。


 普通の兵じゃない。


 統率されている。


 リナが顔を強張らせる。


「まずくない?」


「かなりな」


 問題は、

侵食体と遭遇した直後ということだった。


 祭壇の奥では、

黒い亀裂がまだ脈打っている。


 この状況を見られれば、

言い逃れは難しい。


「レイ……」


 少年が怯えた声を漏らす。


 レイは短く息を吐いた。


 逃げ道を探す。


 だが。


「……遅いな」


「え?」


「包囲の割に、

 踏み込んでこない」


 違和感があった。


 教会騎士団なら、

もっと早く突入してくる。


 なのに外で止まっている。


 まるで。


「中を警戒してる?」


 リナが小さく呟く。


 レイは祭壇を見る。


 侵食体。


 亀裂。


 門。


 教会側も、

これを知っている可能性が高い。


 その時だった。


「中の者へ告ぐ!」


 外から声が響く。


「武器を捨て、

 両手を見える位置へ出せ!」


 若い男の声だった。


 だが。


 わずかに震えている。


 レイは目を細めた。


「……慣れてないな」


「分かるの?」


「声が硬い」


 緊張している。


 経験が浅い。


 しかも。


「突入順も遅い。

 多分、

 “中へ入りたくない”んだろうな」


 リナが少し黙る。


「……怖がってる?」


「ああ」


 侵食体を。


 亀裂を。


 そして教会そのものを。


 レイは周囲を見る。


 教会内部。


 崩れた壁。


 祭壇。


 侵食結晶。


 そして。


 騎士団。


 頭の中で、

少しずつ情報が繋がっていく。


「リナ」


「なに」


「お前、

 投げるの得意か」


「は?」


 レイは侵食結晶を見る。


「正面へ投げろ。

 ただし騎士には当てるな」


 リナの顔が引きつる。


「いや待って。

 それ危なくない?」


「危ない」


「じゃあなんで!?」


「でも、

 多分向こうは結晶を知ってる」


 リナが少し黙る。


 レイは続けた。


「もし知らないなら、

 即突入してる」


「…………」


「つまり、

 向こうも警戒してる」


 外から再び声が響く。


「返答しろ!」


 時間がない。


 レイは侵食結晶を見る。


 まだ脈打っている。


 だが。


 さっき解読した時、

一瞬だけ流れが止まった箇所があった。


「……そこか」


 レイは剣を握り直す。


「リナ。

 三歩前へ出たら投げろ」


「え?」


「その瞬間、

 騎士団は下がる」


「なんで分かるの!?」


 レイは静かに答えた。


「怖がってる奴は、

 危険物が来た瞬間、

 絶対に前へ出れない」


 外で鎧が鳴る。


 包囲が動き始めた。


 レイは目を閉じる。


 呼吸。


 足音。


 間合い。


 恐怖。


 全部が少しずつ、

一本へ繋がっていく。


「……今だ」

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