教会騎士団
剣先が、
黒い核へ突き刺さる。
瞬間。
侵食体の動きが止まった。
空間の歪みが揺れる。
黒い身体が、
小さく軋んだ。
「■■■■——ッ!!」
耳障りな叫び。
人間の声に近い。
だが、
何かが決定的に壊れている。
レイは剣を押し込む。
核の位置は読めていた。
侵食体そのものじゃない。
空間の歪みが、
一点へ集まっている場所。
そこが中心だった。
「……やっぱりな」
侵食体の身体へ、
亀裂が走る。
黒い侵食が崩れ始めた。
リナが目を見開く。
「止まった……?」
次の瞬間。
侵食体の身体が、
灰になって崩れ落ちた。
教会の中へ静寂が戻る。
だが。
黒い亀裂は、
まだ祭壇の奥で脈打っていた。
「終わってないな」
レイは剣を下ろしながら、
亀裂を見る。
侵食体は、
向こう側から来た。
つまり。
「まだ繋がってる」
リナが顔をしかめる。
「閉じられないの?」
「分からない」
レイは祭壇の術式を見る。
結界は逆流している。
本来は封鎖用。
だが今は、
逆に門を維持していた。
「誰かが開けたなら、
閉じ方も知ってるはずだ」
その時だった。
床へ崩れた灰が、
小さく光る。
レイの視線が止まる。
「……これは」
灰の中に、
黒い結晶が残っていた。
拳大。
脈打つように揺れている。
嫌な魔力だった。
リナが後ずさる。
「それ、
触らない方がいい」
「多分な」
だが、
レイはしゃがみ込む。
《解読》を使う。
瞬間。
頭の奥へ、
大量の情報が流れ込んだ。
崩壊。
侵食。
門。
そして——。
「……供給源?」
レイの顔色が変わる。
この結晶。
亀裂側の魔力を、
こちらへ流し込んでいる。
つまり。
「これがある限り、
門は閉じない」
リナが息を呑む。
「壊せる?」
レイは結晶を見る。
魔力構造が異常だった。
普通に破壊すれば、
周囲ごと吹き飛ぶ。
だが。
「……一点だけ脆いな」
《解読》が、
構造の綻びを見つけていた。
その瞬間だった。
外から、
複数の足音が響く。
少年が顔を青ざめさせる。
「だ、誰か来る!」
リナが短剣を構える。
レイは静かに立ち上がった。
足音は多い。
しかも。
「……兵士か」
鎧の音。
そして。
「教会騎士団!」
外から鋭い声が響いた。
「中にいる者、
武器を捨てて出てこい!」
空気が止まる。
レイは静かに目を細めた。
タイミングが良すぎる。
まるで。
「……最初から、
ここを知っていたみたいだな」




