表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

第9話 魔王様、降臨

「姉様! 姉様っ!!」

「タット……!」


 タットがある獣人に抱きつき泣きじゃくっている。

 抱きつかれた獣人の女性はタットを抱きしめ、大切そうに頭を撫でていた。


 恐らく、あれがタットの姉だろう。

 確か、名前はシリルとか言っていた。


 タットと同じく、頭から獣の耳が生えていることを除けば人間の外見と大差無い。

 肩よりも少し長いくらいの銀髪がまっすぐと伸びていて、美人という印象が最初に来る。


「姫様! 姫様もご無事で!」


 ある獣人が叫ぶと、全員がメルに注目する。

 あっという間に取り囲まれ、歓喜の輪が広がった。


「余を助けようとして人間領に入ったそうじゃな? まったく無茶をしおって」


 メルは苦笑とともにため息をついて付け足す。


「でも、嬉しいぞ」


 その一言で獣人たちも笑顔になる。

 皆が嬉しそうにしているのを見て、俺も自然と笑みが溢れた。


「そういえば、姫様はどうして戻ってこられたのです? それに、奴隷錠も外れて……」

「ああ、それは全部ぬし様のおかげじゃ」

「なんと……! 奴隷錠まで外せるとは、まさに魔王様の再臨だ!」


 メルがそう言って、またも獣人たちは湧き立つ。

 ううむ、あまりこういう風に注目を集めるのは慣れてないんだが……。


 その後、俺は獣人たちの奴隷錠に触れて回る。


「おお、本当に外れた!」

「やったぞ! やはり魔王様の再臨だ!」


 メルの時と同じく、俺が魔力を込めて触ると奴隷錠は解除することができた。

 良かった。

 俺が魔王とか呼ばれているのはさておきとして、力が役立ったならそれは何よりだ。


「あなたが、ベゼル様ですね? 改めて獣人族を代表して感謝申し上げます」


 俺が最後の獣人の奴隷錠を解除すると、その獣人は両手を胸の前で合わせてそんな言葉を口にする。

 タットの姉、シリルだ。


 隣ではタットもそれに習って頭を下げている。


「ああ、怪我が無いようで何よりだ」

「ふふ。お優しいのですね、魔王様は」


 シリルは口に手を当てて控えめに笑う。


 銀の髪が少しだけ揺れて、どこか高潔な印象がリリアを思い出させる。

 王都にいるリリアは元気にしているだろうか?


 言葉を交わすこともできず王都を出てきてしまったことが心残りではある。

 といっても向こうは王族だ。

 今となってはもう会うことも難しいだろうが……。


「そういえば、これはタットにも言ったんだが、俺のことは魔王ではなくてベゼルと呼んでくれないか?」

「かしこまりました。それでは、ベゼル様、と」


 シリルは少しきょとんとした顔をした後、また柔らかく微笑んで言った。


 そういえば、さっきシリルは獣人族を代表して、と言っていたな。

 俺とそう変わらない年に見えるが、族長なんだろうか?


 俺はふとメルの方を見やる。


「……?」


 メルが突然見られて怪訝な顔を浮かべている。

 燃えるような赤い髪から角が覗く他は、幼いとも言える外見。


 まあ、メルがこんなだし、魔族はみな若く見えるのかもしれない。


「それで、これからどうしようか?」


「ふむ。まずは魔族領に戻るのがいいじゃろう。先の場所まで行けば我らの住処があるしな」

「ええ。今日は姫様の帰還と魔王様……、ベゼル様を讃えての祝杯ですね」

「ふふ。無論じゃシリルよ。さあ、皆の者! 魔族領へ戻るぞ!」

「ポヨッ!」


 メルが発して、獣人たちやレネもそれに続く。


 ――と、また来たか。


=====================

獣人族の信頼を得て新たなチートマジックを会得しました。

戦闘勝利により新たなチートマジックを会得しました。


【禁呪・チートマジック一覧】

●強化魔法

・対象:スライム

・対象:獣人族 【※新規】

・対象:自分自身(二倍強化(ダブルフォース)

自分自身(三倍強化(トリプルフォース)) 【※新規】

●攻撃魔法

極大黒炎魔法(ヘルフレイム)

=====================


 なんかどんどん魔法を覚えていくな。

 獣人族の強化なんかも覚えるあたり、本当に魔王の持つ魔法なんだと実感させられる。


「どうしたー、ぬし様よ。早く行こうぞ」

「ああ、すぐ行く」


 メルに呼ばれて俺は駆け出す。

 そうして俺たちは一団となって魔族領へと戻っていったのだった。


   ***


 その日の夜は宴が開かれた。

 俺がタットと出会った森の中で、焚き火を中心に輪を作っている。


 俺を改めて歓迎する旨の宣言がシリルよりあって、その場は大いに盛り上がった。


 禁呪を発現して生まれ育った屋敷からは追い出されてしまったが、こうして受け入れてくれる存在もいる。

 そしてそれがかねてより対話を望んできた魔族なのだ。


 俺はどこかこみ上げるものを感じながら、皆が嬉しそうに笑う様子を眺めていた。


 のだが……。


「ベゼル様ぁ。もっと飲んでくださいましぃ~」

「……」


 シリルが木製の酒器を片手に、俺の肩へと手を乗せてくる。

 顔は赤く染まり、とろんとした目を浮かべて銀の髪は色っぽく乱れている。


 これは本当にさっきまで礼儀正しく話していたシリルと同一人物か?


「す、すいません。姉様はお酒を飲むといつもこんな調子で……」


 隣にいたタットが申し訳無さそうな表情を浮かべてチラチラと見てくる。


「い、いや、大丈夫だ。それよりも……」

「ベゼル様ってば、本当に素敵なお・か・た」


 近い近い。

 何がとは言わないが、腕にシリルの大きな膨らみが押し付けられていた。

 健全な男子にとってはちょっと刺激が強すぎる。


 メルといいシリルといい、魔族はこういうスキンシップを取ることに抵抗が無いのだろうか……。


「なあ、タット。そういえばメルはどこに行ったんだ?」

「え、姫様ですか? ……そういえば見かけませんね」


 俺は辺りを見回すが、和気あいあいと盛り上がる獣人たちの中にメルは見当たらない。


「あ、もしかしたらあの場所に行かれたのかもしれません」

「あの場所?」


 俺はタットからメルが向かったであろう場所を聞き、向かうことに決めた。


「悪いがレネ、頼んだ」

「ポ!?」


 俺は腕の中に収まっていたレネを地面にそっと置き、シリルから逃げるようにして立ち上がる。


「ああん。レネちゃんも柔らかくて素敵ですわぁ」

「ポヨヨ……」


 シリルはレネの感触が気に入ったのか、頭を乗せて抱きついていた。

 すまん、レネ。


 俺は心の中で詫びを入れて、森の奥の方へと向かっていった。


   ***


「お、いたいた」

「ぬし様……。どうしてここに?」


 座り込んでいたメルは俺の姿を見ると、慌てて目元を拭うような仕草を見せる。


 涙……?


「ああ、お前がいなかったみたいで場所をタットに聞いたんだよ」

「くっく。余が恋しくなったか?」

「い、いや。そういうわけじゃないが……」


 いつものメルのように見える、けど……。

 どことなく元気が無いように感じた。


「これが先代魔王の……」

「……ああ。余の父の墓じゃ」

「……そうか。慕われてたんだな」


 メルの目の前には文字の刻まれた石碑があった。

 石碑の前にはいくつもの花束が供えられていて、先代魔王が魔族たちからどう思われていたかがよく分かる。


 数年前の話だ。

 先代の魔王は人族の手によって討たれたと聞く。


「俺たち人族のせいで……。メル、すまな――」


 言いかけた俺の言葉を遮るようにして、メルは首を横にふる。


「人族のことを恨んでいない、と言えば嘘になるかもしれぬがな……。それでも、ぬし様のような人間もいる。少なくともぬし様が謝る理由は一つも無い」


 メルは墓の方から視線を動かさずに続ける。


「別に人族に攻め入ろうとも思わん。人族が例え魔族を悪として見ていても構わん。ただ……」

「……ただ?」

「余は魔族が揃って静かに暮らせる場所が欲しい……。それだけ、なんじゃがの……」


 メルは言って、顔を伏せる。

 表情は見えない。


 いつも俺をからかうように接してくるメルが、今はただ力無く俯いていた。


「ぬし様、悪いが少し肩を貸してくれんか?」

「ああ……」

「ありがと……」


 静かな森の中でメルのすすり泣く音が響く。


 俺たちは少しの間、そのままでいた。




「さて、それじゃあ皆のところに戻るとするかの」


 メルは暗い気持ちを吹き飛ばすかのように、大きく伸びをして言った。

 いつものメルが戻ったように見えた。


 ただ、それでも俺はメルに伝えることにする。

 これは伝えておかなければいけないと、そう思った。


「メル。俺で良ければ、力になるよ」

「ぬし様?」

「いや、魔王になるとか、正直よく分からないんだが。魔族が安心して暮らせるようになればいいな、とは俺も思う」


 会ってまだ少ししか経っていないけど、まだ魔族たちのことを全部分かったわけじゃないかもしれないけど、それでも……


 それでも、放っておけないんだ。


「だから、魔王でもなんでも好きに呼んでくれていい。俺は魔族の力になりたい」


 俺は大きく目を開いているメルに向けて、はっきりと告げた。


「それから、俺で良ければいつでも肩は貸してやるよ」

「……ふふ。クサいの」

「別にいいだろ?」

「ああ。ぬし様はそれでいい」


 そうして、俺はメルと並んで夜の森の中を歩き出す。


「ぬし様」

「ん?」

「ありがと」


 メルは小さく呟き、手を差し出してくる。


 俺は黙ってメルの手を取り、魔族たちがいる場所へと歩き始めた――。


これで【第1章が終了】となります!


お読みいただき、本当にありがとうございますm(_ _)m


◆読者の皆さまにお願いがございます!


ここまでのお話で、


・面白かった。楽しかった

・続きが気になる


などと少しでも思ってくださった方は、↓の広告下にある☆☆☆☆☆をタップorクリックして【評価】を頂けるととても嬉しいです。


(「★5」ではないけど、少しだけ面白かった→「★★★☆☆」など、気軽に採点していただければと思います・・・!)


ブックマークも励みになりますし、【感想】もいただけたらとても嬉しいです!


何卒、よろしくお願いします!


引き続き面白くなるよう頑張ります(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
[一言] 両想い人ぽい子はいるのに完全に魔族側の味方をする主人公 理不尽追放から流れ的に魔族の姫以外仲良く出来そうにないな
[気になる点] 周りに沢山女の子が居ますが、タグにはハーレムと書いてありません。これはハーレムにはならない作品ですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ