78 木屋町ホンキートンク
ヤマトの視察をじっくり終えて、俺は日本に戻ってきた。足掛け1か月ぐらいかかったかな。
以前の一斉摘発でこの街もだいぶましになった。とりあえず日本の木屋町は、これで何とか健全になるだろう。
あとはあやかしの長達との約束だが、何十年もかかるってことはなさそうだな。
向こうではもうすぐ人工衛星が打ちあがるんだから。
季節はもう初夏か。あれからまだ半年ぐらいしかたってないんだな。
俺は目の前にある新築の家を見ながら感慨深く感動していた。
木屋町にある京介所有のビルの屋上に、立派なペントハウスが完成していた。
ようやく日本での自分の『家』を持つことができたのだ。
もともとここにあったやくざが使っていた事務所は完全撤去し、ビルに補強を入れたうえで工事に取り掛かっていた。俺がヤマトに行っていた1か月の間に完成までこぎつけてくれた。ご苦労様、眷属の皆さん。でも、建築申請とか大丈夫だったの?…なるほど、それ以上聞かないことにするよ。
あの競馬場近くのマンションを引っ越してから、三条の町屋では会社の事務所の奥の、窓も無い部屋になってしまうし、伏見は工場になっている。京介は転々としながら、その日暮らしの生活を送っていた。
大概が三条の事務所で朝まで協議して、そのまま寝てるのがほとんどだったけど。
そういう生活からも足が洗えそうだ。
ようやくペントハウスが完成した。
鍵の引き渡しを工務店から受けて、いよいよ部屋に入ろうとドアを開けると、なぜかすでにそこにいる、猫又のおばばたち。
確かに広くリビングは取ったけど、お前たちがたむろするためじゃねえ。
「なぜ愛がこのビルを取得するように指示したか聞いてなかったのか。」
「聞いてないな。理由があったのか?」
「このビルの下には、魔素の道ができておってな。ビルごと封印をかけねば危うかったのじゃ。それで浄化して、われらも使えるようにしたのじゃ。久しぶりに人の多い繁華街に行けると皆が張り切っての。一階だけは店舗として営業できるが、2階から上はそれぞれの眷属の宿舎になっておるぞ。みな魔素の濃いところに来れてうれしそうじゃわい。」
「いや、だからってみんな来なくてもいいだろ。それに伏見はどうするんだよ。」
「あそこはたまに覗きに行けばよい。どうせ今まで長い間われらが住まい、結界を張っておったのじゃ。ちょっとやそっとじゃゆらぎもせんわ。それにの、ようやく異界へのゲートの魔道具ができたようで、この隣の部屋とこの下にある眷属の各階に設置しておいたぞ。」
うっぷ。
しばらくして、京介のビルの1階に洋風居酒屋がオープンした。カントリーウェスタンな内装としつらえ。
店の表の壁にはあやかしたちが楽器を持って踊っている姿が書かれている。
猫がバンジョー持って踊ってるよ。
店の看板には店名が書かれている。
『木屋町ホンキートンク(てんやわんや)』
第一部 END
【ご挨拶】
『木屋町ホンキートンク』第一部を読了いただき誠にありがとうございました。
実は皆さんが思ってらっしゃるように、この物語はまだまだ続きます。
タイトル回収の意味もあり、洋風居酒屋『木屋町ホンキートンク』のオープンをもって第一部を終了とさせていただきました。
長い間のお付き合い誠にありがとうございました。
第二部を始める前に、木屋町ホンキートンクで働く眷属の皆さんの日常を描いたり、おばばたちあやかしの長達の異世界での散歩(本人たちは散歩と言い張ってます。)を描いたり、伏見の工場での開発日記を書いたりしてみたいと考えていますが、いつになることやら。
【注:すいません勇み足で『こちら魔道具開発工房』はすでに投稿しております。】
ご要望、ご意見、いただけましたら幸いです。あくまで耳にやさしい意見しか聞く耳はついていませんが。
それと評価など入れていただけましたら感謝します。
この物語は右往左往している状況なので、なかなかキリがいいところまで読んでいただかないと評価もしていただけないと思い、最後に少しおねだりしてみます。
構想3年、執筆10日、総文字数192,264文字でした。いや~、怒涛の10日間でした。もう続きが気になって寝れなくてね。
人名を考えるのと、地名を考えるのが苦手でして、なおかつ会話を書くのが苦手です。
この辺りを自動で設定してくれる魔道具を、愛ちゃんに発注してるんだけど…。
その魔道具完成をもって続きを書くとします。
壮大な物語のほんの初めの第一歩ですが、お楽しみいただけたなら幸いです。
鴨川京介




