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木屋町ホンキートンク Ⅰ  作者: 鴨川 京介
第6章 木屋町はてんやわんや
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77/79

77 俺は一体どこにいるんだろう?

 俺はどこにいるんだろう?


 何をやってるんだろう?


 街を行きかう子供が、ホバーボードに乗ってあやかしの方たちと追いかけっこをしていた。

 道端には俺が小さい頃によく通った駄菓子屋と同じような商品を並べた店が立ち並び、アシスタントナビが入ったスマホを持った商人がレーション(携帯食)が並んだ店の商品を手に取りながら鑑定し、値段交渉している。


 うん、この街、ちょっと進みすぎてる(・・・・・・)よな。文明が一気に進んだことの弊害は起こっていないかと見ているんだが、一向にその気配はない。…みなさん順応性が高いこと高いこと。


 「ご主人様、あそこがご主人様のお屋敷どす。」


 輝乃が前方を指示した。


 …で、でかくない?えらく立派な洋館が立ってるんだけど。

 俺は洋館の門をくぐった。するとずらりと並んだメイドさんたちが「お帰りなさいませご主人様。」って、これはいくら何でもやりすぎだろう。

 何でも眷属の皆さんの間でこの屋敷のメイドは、応募率上位らしい。


 「こちらにもゲートは設置してあります。相手側のゲートは現在建設中の木屋町のペントハウスの中になっております。」


 この屋敷の執務室に入ると、ここでも仕事ができるように、かなり広いスペースがとられている。これって三条の社長室と同じじゃね?


 「あちらの機能がこちらでもフルに使えるようになっております。」


 コーヒーを出してくれながら他のメイドが、「私共もお仕事のお手伝いをサポートいたしますので、何なりとお申し付けください。」と丁寧に頭を下げて、壁際に並んで立つ他のメイドとともに、俺からの指示待ち状態になっている。


 …怖え~よ。全然気が休まらね~よ。


 「え~っと。みんなの気持ちはありがたいんだけど、俺も家に戻ってきた時ぐらいちょっと休みたいんだよね。用事があるときには呼ぶから、それぞれ他の仕事をしておいてくれないかな。基本ここでは俺と愛、レティ、輝乃だけが入れるようにしてくれ。」


 「かしこまりました、ご主人様。」と、メイドたちは部屋から出ていった。


 ふ~。ようやく落ち着けるか。


 「マスター、かなりお疲れのようですね。」


 「ようやくひと段落ついたんやから、もっとゆっくりしぃはったらよろしいのに。」


 「京介様、当分仕事を入れずにのんびりされてはいかがですか?たまにはお酒を飲みに出かけられるのもいいかと存じます。」


 「うん、ありがとね。人の命がかかってた時は、結構緊張して駆け抜けた感じなんだけど、ここにきてこの街の変わり様を見たらなんか気が抜けちゃってね。ちょっとのんびりさせてもらうわ。」


 俺はそう言って屋敷の風呂に行き、ゆっくり入り、風呂から上がってビールを飲んで夕食にした。


 うん、このタイミングでいつも寂しさを感じるんだな~。眷属の皆さんも愛たちも基本食事はとらない。中には食事を趣味として取ってる人もいるみたいだけど。魔素さえあれば生きていける謎生物だ。魔素自体が精神体や魂というものらしいから、ある意味、知的精神生命体そのものってことになる。


 結果、俺はいつも食事を一人でとることになる。

 せめてだれか食事に付き合ってくれないかな。

 瑞月ちゃんはこっちには来れないだろうしな。あやかしの血が混じっているといっても300程しかMPはない。

 もっともあやかしの血が混じっている人たちにも、手を出すこともできないんだけどね。これだけ美人に囲まれながら、枯れた話だわ。


 え?なんで手を出せないかって?だってそんなことしたら猫又のおばばまで知れるのはあっという間だぜ?ましてあやかし、その血族がほとんど周りにいる中で、俺がしたことを事細かに話されてみ?いたたまれないだろ?せっかく肉体は若返ったというのに、女の子と気軽に遊ぶこともできやしない。

 だからこそ割り切った上で、キャバクラや風俗に行こうとしても、却下される。最も店に行っても目は光ってるんだけどね。


 俺って人ができないような、転移や異界渡りの能力を手に入れながら、人並みの自由もないんだな。改めて思ったわ。

 まあ、もう少しすればこの世界を回ることもできるし、まだ地球で行ってないところに行くこともできる。そう考えればまだまだチャンスはあるだろう。

 俺はかすかな、とってもかすかな希望を胸に抱き、今日はもう寝ることにした。


 あくる日、愛ちゃんの印籠スマホと輝乃のミニタブレットを持って、ヤマト王国の各所領をバイクで回ることを思いついてバイクで出かけた。


 う~ん、このバイクって今まで見たことないんだけど…。え?新たに作った?なるほどね。小さいながらも出力は大型バイク並、なるほど。アメリカンな形なのにタイヤはモトクロッサー用のオフロードタイヤなんだね。うん、いいね。よしこれで行ってみよう。


 それから10日かけて、それぞれの所領を回った。所領には既に領主館も建てられていて、そこで宿泊した。日がな一日、その領地の開発具合や特産品などの話をして、地元の料理を食べ、翌朝次の領地に向かうという強行軍だった。


 強行軍だったんだけど、かなり楽しかった。

 日本ではなかなかないよな、こんな体験。

 森を抜けるといきなり町が現れたり、たまに野生のシカやイノシシが出てきたり、魔物が出てきたときは討伐していく。


 う~ん。なんかマッドマックス的な気分になるな。


 これで後ろにいい女でもしがみついてくれてたらな…。

 …うん?いいよ。愛ちゃんも輝乃ちゃんも、出てこなくていいからね。


 ふ~。


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