72 どこまで食い込んでるんだよ
猫又のおばばの屋敷の前に転移した俺は、早速いつもの座敷に向かい、おばばと話を始めた。
「おばば。なんかいい手があるの?」
「おお、実はな、何人か紹介しておこうと思うてな。入って来い。」
おばばはそういうと、座敷の奥に声をかけた。すると10名ほどのスーツを着た男たちが入ってきた。この人たちはあやかしか?
「この者たちは日本の官僚におる役人たちじゃ。お主が悩んでおる税金上の対策や方法を、うまくやってくれるじゃろう。いくら万眼鏡と印籠スマホを金儲けに使えばいいと許可を出したとことで、経済全体が破綻するとなると困るからな。超法規的措置ってやつじゃな。お主が自分の利益のために行っていることでもないしな。むしろこの世界の破滅を未然に防ごうとしておるのに、それをこの国の法律で縛っていては元も子もないでの。」
促されて一人ずつ名刺を渡してきてあいさつしだした。
一番驚いたのは内閣官房長官だった。確かにテレビで見ると妖怪っぽかったけど。おばば、そこで吹き出さない。
以下、内閣法制局長官、国家安全保障会議議長、宮内庁長官、公正取引委員会委員長、国家公安委員会委員長、法務大臣、外務大臣、財務大臣、農林水産大臣の10名
その中で宮内庁長官は「帝が気にかけておいでです。一度東京まで足をお運びください。」と話しかけてきた。俺があの方と会うの?
「ここに来ていないだけで、ほとんど全ての大臣は、あやかしの血が混じっておる。お主ほど濃くはないがの。お主は濃さでいうと帝より上じゃな。しかし万世一系でその力の使い方のノウハウの蓄積が半端じゃないからの。学ぶことも多いじゃろ。一度会ってみるとええ。」
いいのかな。俺みたいなのが帝に会うなんて。
「この者らに、今までの状況を話しておいた。あとは個別に相談しておけ。」と、猫又のおばばは席を立った。残った人たちが援助を申し出てくれた。
現在の株式会社とは別に特殊法人という形で、宮内庁傘下の外部機関として特殊法人を設立し、そこを通して物の手配をしてくれることとなった。そこから買い上げるものについては一切、その素性の追求はしないとのこと。うん。超法規的措置ってやつだな。株で儲けた金でその特殊法人から買い付ける形になるのか。そうすると出所の金も購入したものも追及されなくなると。海外からの輸入はどうなるのかな。
「海外からの物資の輸入にも同じ手が使えます。アメリカの弟さんの会社でも同じように、書類上は特殊法人から弟さんの会社に購入依頼を出します。物資を用意してもらい、それを鴨川さんが運ぶ。当然物はそこで途絶えますが、米国でもそれから先の介入はできません。特に米国は、この世の成り立ちを一切無視して、日本に戦争を仕掛け、占領した経緯から、今後二度と逆らわないような制約を課していますからご安心ください。」
怖え~よ。トルーマンさんどんだけ青ざめたんだろうな。マッカーサーもか。あの人、陛下に会ってるもんな。いい度胸してる。
まあ、裏話はともかく、俺はこれで何とかなりそうだと大きく息を吐いた。
その場で輝乃に人化させ、それぞれ詳細な打ち合わせを、実務者レベルで行うように手配した。
これでグローバルシナジー社も普通の会社のように粉飾できるだろう。
確かに俺がいくら頑張っても、足枷がついたままじゃ動きにくいもんな。
俺はいよいよとなったら愛ちゃんたちに、いろんなところのデータをハックしてもらおうかと思ってた。うん、最終手段だけどね。そこまでしないで何とかなったのは良かった。
もうすでに合法とか違法とかってレベル超えてるな。
その後、弟を迎えに米国に転移を使って行き、三条のグローバルシナジー社に転移ゲート経由で連れてきた。
幹部連中を集めて、おばば様のところでの話を伝えると、既にその使者が手続のために訪れていたようで各種書類にサインをさせられた。いや、おじさん疲れたよ。
弟にもその裏話を話し、納得してもらってとりあえずアメリカに帰って行った。
便利なんだけど、情緒がないよね。ほとんどこれじゃご近所だもん。俺の好きな機内食も食べれないし…。
とりあえず車両もあえて土地を確保せずともよくなった。
「その件ですが、とりあえず土地を確保したいのですが、よろしいでしょうか。実は大山崎インター付近の土地はインターができたころ、その値上がりを期待して多くの不動産屋が買い上げたそうですが、実際はそこは通過点に過ぎず、流通拠点としても使いにくいため、土地が結構余っているようなのです。そこで今後のことも踏まえて土地を購入しておきたいのですが、いかがでしょうか。」
何かあるんだろうな。まあ、買えるんならいいよ。
「了解しました。」
「後は日本の木屋町界隈をどうするかだな。」
「こちら側ですか?それはどういったことでしょうか。」
「うん、いや。あくまで対処療法なんだけど、ほころびができるってことは、その周辺に『怨』がたまって行ってるってことなんだよな。つまり治安が良ければ基本『怨』が生まれないし、溜まらない。でもそこまであの町に手を出すのもな。やくざも結構いるからな。あの町からそれらを無くすのは無理があるだろう。」
「確かに一掃するのは無理がありますね。それならば共存するための、同盟みたいなものを組むことはできないでしょうか?」
「同盟?」
「はい、木屋町同盟です。木屋町の治安維持に協力するという同盟です。ある程度駆除は必要でしょうが、中には共存していく選択もすると思います。まして、今のマスターの『武』と『財』をもってすれば大抵のものはその下に就くでしょう。」
物騒なこと言ってるな。武って。武力鎮圧ってことだよね。う~ん。当然そうなるのか。あとは財か。買収か。いくらかかるか考えるだけで怖いな。だって町丸ごとだよ。
「いえ、あくまで敵対するところだけです。」
うん、それにしても考えたくないな。
でも何とかしないと、あの辺りっておかしな店が結構出てきてるからな。
「一度それぞれの店に打診してみてはいかがでしょうか。」
いやいや、どれだけあるの店って。
「軽く3,000は超えるかと。ですが、その所有者はもっと少ないようです。」
「どれぐらい?」
「土地建物のオーナー合わせて約1,000程かと。」
ぶっ。吹いたわ。それ全部俺が回るの?
「いえ、まず初めの打診は眷属にやらせましょう。そうすれば書状を持って向かうだけなので、一日で打診はできます。さらに少し日を開けて結果を聞きに行くことにしましょう。これも1日で済みます。その中で興味を示したり、危機感を感じていたり、協力しそうな人たちを集めて、まず第1期の同盟を結びます。そこから同盟未加入のところを虱潰しに行けば、何とかなるのではないでしょうか。」
そんなにうまくいくかな。結局1,000か所を俺が回らないといけない気がする。
それにしてもやらないよりいいか。少しは前進するだろうし、監視の目が光ってるとわかれば悪事も減るだろうしね。
「わかった、打診するための文章の案を考えて、俺に渡してほしい。その上で俺のサインを付けて持って行ってもらおう。何をするにしてもまず始めなきゃね。」
「了解しました。さっそく手配します。」
あとは客の方か。経営者やオーナーから攻める方と客の方から攻める方法。これはパトロールかな。
「それと併せてパトロールを始めてくれ。質の悪いナンパや恐喝、薬の売人、それに最近は脱法ドラッグなんかもあるだろうから、それも取り締まり対象だな。そいつらは捕まえて一か所に集めてくれ、今日の晩から早速開始して、明日にでも俺が会ってみるよ。」
それと拠点がほしいな。
「それと木屋町の中で、どこか適当なところで購入できるビルはないかな。できれば犯罪に加担してそうな奴らが入ってるビル。そこを拠点として使おう。」
「了解しました。すぐに調査いたします。」




