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木屋町ホンキートンク Ⅰ  作者: 鴨川 京介
第4章 魔道具って便利だよね。
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64 伏見がしっちゃかめっちゃか

 本当はもっとアメリカに滞在して、いろいろ見ておきたかったんだけどな。


 日本とヤマトを放ったらかしにしておくこともできなく、しぶしぶ帰国した。まあ、これからはいつでも行けるしね。すでに眷属の工作作業する皆さんが20名ほど飛んで、向こうで拠点の会社の建屋は作り終わって、転移ゲートのセット、迷彩結界の設置は済んでいる。


 さて、日本に帰ってくると、既に伏見の工場はとんでもない状態になっていた。うん、予想してた。

 行って交渉して帰ってくるだけで10日だったからな。

 この10日でとんでもない量の物資をヤマトに運んでいた。

 それでもこれでようやくひと段落つくだろう。


 そう思った矢先に、レティから連絡が入る。

 王が会って欲しいとのこと。


 日本でやらなければいけないことがまだあるので、明日の昼に伺うと伝えてもらい、その日は事務処理に忙殺された。


 まず何人かのメーカーの代表や、営業担当者から面会の打診が入っていた。うん、そりゃそうか。急に大量に買い付けてるんだもんな。メーカーによっては、初めのうちは現金取引しかしてくれなかったり、少数での販売しか対応してくれなかったりする。これは別にいじわるされているんじゃなくて、新規取引先との信用を積み重ねてからじゃないと、大口の取引に応じないってのはどこの業界でもあることだ。その次の一歩として、経営者との面談てのも当然要求されることではある。営業担当者との対応だけで大口注文されて詐欺にあうなんて、シャレにならないからな。


 明日からしばらくは、この面会に忙殺されるかな。

 輝乃が持ってきたスケジュールはびっしり10日分に上る。ヤマトの王に会いに行くのが先かな。その後片付けるか。


 それでも少しでも減らしておくべきだろうな。京都で会える面会希望者を固めて、すぐに回り始めた。おっと、京都の財界人でも有名どころの会長なんかも入ってるじゃない。

 会う企業、会う企業、すこぶる対応がよかった。今の不景気な時代に大量発注してるからそれも当然なのかもしれない。取引を進めるために保証金が必要だと申し出てきたところには、その倍額で相手の取引銀行で口座を作って保障金としてプールしておいた。銀行の担当者も交えて、億単位の金が動いていく…。油断すると眩暈がするな。


 どこか他人の金のような感覚がしている。自分が手に汗して働いた金じゃないからかもしれない。それでも輝乃がその能力を駆使して作ってくれたお金だ。輝乃と愛ちゃんを秘書代わりに同行させて、一つ一つ保証契約を結んでいく。これは保証金として銀行に預けた額までは、取引に応じるというもの。もしこちらからの支払いがない場合は、その補償金から支払われることとなる。銀行が間に入ることでこの契約は成立する。同じパターンでほかの企業も契約していく。要はとりっぱぐれの心配なく、こちらと商売をしてもらうための方法だな。

 この保証契約で済むところは、輝乃の部下に代行させ保証契約を結ぶように指示した。もちろん大人の格好(・・・・・)で行ってもらった。スーツ着てね。


 それでもやっぱり、経営者同士で顔を合わせないと、契約の話が進まないところもある。

 そういうところを重点的にアポイントを取った。

 今日一日だけで5件ほど回り終えて、へとへとだ。移動は迷彩かけながらの転移だから、次から次に飛んでいく。

 帰りに食ったこってりラーメンは、久しぶりにうまかった。


 翌日は三条の会社で、これまでに完成した新たな魔道具の説明を受けていた。

 武器、防御の魔道具を除いても数十に上る。


 あやかしが持っていた今までの魔道具製作のノウハウと、俺の新しい魔法理論とを合わせ、高効率化を目指したものがずらりと並んでいた。

 社長室に入らない大きなものもあったので、それは工房の方に移動して見ていく。


 これで魔道具は作ることができそうだな。でもまだ問題はある。これらの魔道具を全部眷属が作っていくと切りがない。ヤマトの民が製作できるようにしないと。

 そこでそれぞれの魔道具に組み込んだ魔核にどんなイメージで、どういう魔法を込めたかを列記してもらった。

 ふむふむ。要するにこれってプログラムと一緒だよな。

 発動する魔法の種類、込めるMP、使うMP、発動条件などとともに、発動しているイメージを魔核に込める。あやふやなのはこの『イメージ』ってところか。ここが作る人でいろいろと違ってて、性能に差が出てきているようだ。


 逆に言うと、ここを統一できれば高品質な製品を、量産できることになりそうだな。


 それぞれの魔道具の制作チームに魔核に込めるイメージを、具体的な絵や映像、文章、数値で記載してもらうように指示し、統一フォーマットで管理させた。これさえ安定すればあとは製作、組み立て工程の精度と速度を上げれば、量産の目途は立つ。


 いっそのこと、魔核へのイメージも機械的に行えたらもっと効率よくなるんだろうけど、今はまだその段階じゃないな。焦らず段階を踏んでいこう。

 昼までかかってそれらを指示し、昼ご飯を食べ終わったころには統一フォーマットが出来上がってきた。それらに目を通していく。こうやって見るとやはり日常生活で現代日本に出入りしているあやかしの眷属の方が、より具体的なイメージを持ちやすい傾向があるようだな。どんどん人の生活に入り込んでいってもらうか。…あ、あれ?それなら逆にあやかしの血を引く人たちのイメージを眷属の皆さんで読み取ってもらって、魔核にイメージを掻き込む方が効率がいいのかもしれない。むしろすでに人として生活してきた人たちだから、その人たちに魔道具製作を教えて、作ってもらった方が性能が上がるかもしれないな。

 この辺りはまたあの人たちに相談するか。



 すでに常人の数十倍での思考、作業を行っていることを、京介は気づいていない。

 その可能性を京介の思考から読み取り、着々とレポートとして蓄積していってる輝乃がいた。

 それはすでに魔法体系の教則本として、一部はひそかに眷属たちで共有しており、その魔法の精度、威力共に格段に向上していた。


 魔道具製作においても、既にあやかしたちが持っていた魔道具は時代遅れとなり、少ない魔力で高効率な作業を行う新しい魔道具たちを見て「わしたちの今までの万を超える年月の努力は一体何じゃったんだろ…。」と、自信を無くさせてることも、今の京介は知らなかった。


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