65 王との邂逅
魔道具の製作も、ようやく軌道に乗りそうだな。
今日はゆっくり休んで、明日朝からヤマトに向かおう。
俺は社長室の裏にある、俺の部屋に入り込んで、ベッドに横になった。
あくる朝、迷彩服を着こんでヤマトに向かった。
レティから報告がないから、特に状況が急変していることはないだろうが、どこで何に遭遇するかわからない。用心に越したことはないだろう。
それにしても、相手から見えないとはいえ、この年になって迷彩服で街を歩くのはこっぱずかしい。もし視認できたら、サバイバルゲームでもしてるように見えるのかな。こんな街中でそれはないわ。うん、ないない。ああ、スマホにしゃべりかけた時以来の、この何とも言えない残念感。今は見た目が20代なんだから気にしない…ってことはない。中身はおじさんなんだから思いっきり気になるって。
そろそろ異界へのゲートも設置するべきだよな。会社の中に作るのが一番いいよな。
こんな格好で表歩かなくてもいいんだし。でも、こっちから向こうに行くのに何で転移が使えないんだろ?ん…ひょっとして…お、行けたじゃない。
う~ん、これは、どうやらかなりの魔力を使うみたいだ。向こうからこっちに行けたのは魔素が濃いからその分補えるんだろうな。こっちから向こうに行けないのって、ひょっとしてまたいつもの『常識』ってやつが邪魔して、行けないと思い込んで、おばばは俺に言ってたのかな。確かにMPで2,000程は消費してるからな。普通は無理か。
おばばたちは8,000ぐらいだったか。眷属の皆さんで1,000ぐらいか。ヤマトの一般人で多くて300ぐらい、一般の人で100ぐらいか。うん、あながち嘘ではないな。
とすると、これを応用するゲートも少し特殊な魔核が要りそうだ。これは早いとこ入手しときたいけど、今はまだ無理そうだな。余裕がない。
そんなことを考えながら、バイクを印籠スマホから出し、王都に向かった。
さて、今まで全権委任をして、王子がヤマト王国を動かしていたはずだ。王が会いたいってことは、王が復調したのだろうか。
王との謁見の為、ヤマト王国の王城に向かう。王女が出迎えてくれた。俺の動きをレティが伝えてくれていたようだ。王女曰く、王は謁見の間ではなく、寝室で会いたいとのことだ。まだ起き上れていないらしい。
そりゃそうか、まだひと月もたってないからな。
王と会い、なぜ呪いをかけられたのか、その相手はだれなのか。そのあたりを詳しく聞かないとな。
王はまだベッドの上で座ったままで対応した。
「ようやく来ていただいたようだな。わしがヤマト王国の王、ヤマトシンゲンである。その方が、鴨川京介か。」
うん、王だから無理はないけど、なんか偉そうだよね。
「そうだ。俺が鴨川京介だ。あんたの呪いを解き、あんたの命を救い、王都とシオンの街の復興に協力している。俺からの要望はすでに王子たちから聞いているのか?」
こっちは大分貸しがある身だ。王であろうとへりくだってやる必要はない。こういうことははじめが肝心だからな。どっちがどっちの世話になってるのかよくわからせておかないと、人から担がれてばかりいる奴らはすぐに図々しくなるからな。
「…それについては感謝する。しかし、お前は一国の王を前にして、えらく横柄な奴だな。」
「横柄で悪いか?あんたに忠誠を誓ったわけでもなければ、あんたに借りがあるわけでもない。まして俺はこの国の国民でもない。お前の方こそ、なんで命の恩人にそんだけ横柄なんだ?お前の息子や娘から今までのいきさつは聞いてないのか?」
「それは聞いておる。しかし、わしはこの国の王じゃ。わしが頭を下げることはできん。」
「そうか。だったら俺たちは今この瞬間に手を引いてもいいってことだな?レティ、撤収するぞ。」
俺はすぐさま部屋を出ていこうとした。
「お待ちください京介様。父は国王としての・・・。」
王女が取り乱して、俺に追い縋ろうと駆け寄ってきた。
「もう一度、俺があの時話したことを話そうか?俺はお前たちの親父が目を覚ましたら、王子に全権を譲るように言ったはずだが。まだこの過去にしがみついて、民のことに碌に目を向けず、国を疲弊させて、まだ自分が王だとバカなことを言ってるやつが、今後も王権を握るなら、俺が要求していた条件を破ったことになる。俺はあの時も言ったが、この国を救う義務はない。もう一度親子でよく話し合え。」
俺はそういって、その場を後にした。
いや、こうなることはわかってたんだけどな。あんな宰相や部下の貴族を登用してた時点で。こいつは愚王だ。いっそ殺しておくべきかもしれないな。このまま王子が全権を握っても、いろいろと茶々入れてきそうな気がする。
「京介様。その点はお任せください。体が動くようになったら、眷属の皆さんの下に就けて、復興の手伝いを強制的に行うようにいたします。」
レティ、俺がここを離れた数日で何があった?
「実は、ご報告するまでもなく、こちらで処理をしておりましたが、宰相の親族たちが宰相の解放と、王との謁見を求めて詰めかけてきました。あまりに言っていることがおかしいので、話し合う余地もなく、拘束し、牢につないでおります。その際、すでに気づかれていた王が、宰相と話がしたい、宰相をすぐに解放しろとかなりの権幕でした。王子と王女が状況を説明し、現在の復興も王子を中心に行っている旨をお伝えしたようですが、今度は王権に固執しだして、今に至っているようです。王子に王権を渡すことを拒否し、仕方なく京介様にご登場いただいたというわけなんです。」
なるほどね。そいつら邪魔だな。一掃すればすっきりするけど、そういうわけにもいかんのだろうな。
「はい。ですので、なぜ今このような国になったのか、国王としてどういうことをしなければいけなかったのか、今までの失態の償いをどうするのかを、今晩からみっちり教育することにいたします。」
ひょっとして、俺にあれを見せるために、わざわざ今まで教育をしてなかったとか?
「お察しの通りです、京介様。京介様の偉大さとあの男が行ってきた悪政のために、どれだけ民が苦しんだかをきっちり教育いたしておきます。ほほほ。」
うん、レティさんや。ここ数日でどれだけいやなことがあったかちょっと察するけど。程々にしておいてね。




