2・誰の?
「ありえない」
エルン様はきっぱりと言い切った。
わたしのスキル『恋占』にて見える好感度が0である事についてだ。
「シルリアへの好感度が0な訳が無い。100でも足りない1000でも足りない。最大値が何だろうと、絶対にそれ以上だ。それは、シルリアへの好感度じゃない」
思いもよらない事を言われた。
わたしはきょとんとエルン様を見上げる。
出逢った時は同じくらいの背丈だったのに、一時はわたしの方が背が高かったのに、この頃エルン様はぐんぐんと背が伸びて、最近段々と、見上げないと目線が合わなくなってきたのだ。
「この好感度:0ってのは、わたしへの好感度じゃない……って事ですか? わたしのスキルなのに??」
「そうに決まってる」
エルン様は憮然とした表情で頷いた。
「ご両親も、メイファも、君への想いが0なわけが無い。なら、その好感度とやらは我々が見知らぬ誰かへの好感度、そう考えるのが自然だ」
「自然、かなあ? もしかしたら心の奥ではわたしの事なんか……」
「シルリア。それは君を愛する僕や周囲の人達に対して失礼だ。愛されてるのを、信じて欲しい。分かるだろう? そんなポッと出の数値に惑わされないで」
「!」
きゅっと抱き締められた。
ほうっと息がしやすくなる。
そうだ。
数字が常に表示されていると、まるでそれが絶対の事実の様に思えてしまった。当然の様に、自分に対する数字だと思ってしまった。私に対する、好感度:0だと思ってしまっていた。そんな訳ないのに。文字って恐い。
「ごめんなさいエルン様。わたし、ちょっと混乱してて」
「ごめん、僕こそ言葉が過ぎた。僕もちょっと動揺している。こんなにこんなに君が好きだというのに、好感度0だなんて酷いと思った。……でもよく考えたら、これは君の所為じゃない。スキルの説明不足だ。竜の女神様も妙な事をする」
「ねえエルン様……。本当の本当に、わたしへの好感度、0じゃない?」
「当たり前だ」
「うん。なら、もう大丈夫」
「信じてくれて助かるよ。これの所為で君の心が離れてしまったら僕はきっと発狂する」
「もう、大袈裟ですよ。大丈夫です。わたし、エルン様のこと信じます」
「良かった……」
わたし達は抱き合ったまま、大きく溜息を吐いた。
「これがわたしに対しての好感度じゃないのなら、誰への好感度なのでしょう?」
「さあ? でも何か腹立つ。僕のシルリアを便利に使われそうな予感がするよ」
「便利に……?」
「だってそうだろ? これ、つまり、誰かが誰かを好きです~ってわざわざシルリアが誰かに教えてやる必要があるから、竜の女神様が授けたって事じゃないか?」
「そういう事になりますかね?」
「それ以外の活用法が、僕には思い付かないよ」
「確かに。…………でも、誰に?」
答えは一月後にもたらされた。
「初めましてえ。アタシが! 本物の聖女の! フィリア・フィリンスでぇ~す☆ よろしくお願いしま~す自称聖女サマ♡」
みゅ~ん、みたいな音がして好感度がマイナスになった。
お父様の好感度マイナス500。
お母様の好感度マイナス10。
それぞれハートの色が真っ黒になった。
言っておくけど、お母様は一度たりとも聖女を自称した事はない! 感謝した方々が勝手に聖女と呼んでいらっしゃるだけ!




