開催
体育祭当日。
ジャージに着替えた二人がグラウンドで相対する。
「やぁ、ミヤコ。今日は最高の晴天だ。この数日間、君に関わるのを我慢した僕の頑張りを無駄にしないでくれよ?」
「あんまり強い言葉だと泣かれそうだから、お淑やかに言わせてもらう。今日がアンタの命日だ」
「アッハ! 我慢したかいがあったかもね! お互い悔いの無いよう、全力で競い合おう」
「……で、なんで二チームしかないんだ?」
二人の後ろには、それぞれの派閥が集結していた。なんとなく察しているレイとは違い、学年ごとにチーム分けされるルールと違う現状にミヤコは困惑していた。
困惑していたのはミヤコだけでなく、遅れてグラウンドにやって来たリリも同じだった。
「え……どっちが、どっち?」
学年で分けられてるのならば同学年であるミヤコの方であるが、並んでる人の学年はバラバラ。旗持ちの生徒が掲げている旗には、勢いの乗った筆文字で派閥を示す名前が書かれてある。
「おい……! なんでアタシのチームはこんなに人数少ねぇんだ……!」
自分よりも殺気立つ両派閥の雰囲気に妙な危機感を覚えたミヤコは、目の前のレイにだけ聞こえるように尋ねた。
「仕方ないさ。君はまだ入学したばかりの新星なんだ。むしろ、既にこれだけの人数が集まってる事に驚いてるよ」
「あ、ん? あぁ?」
「まぁ、あまり気にしないでいい。君は僕だけに集中してればいいんだよ。それじゃあ」
「お、おい! 全ッ然分かんねぇよ!! 人数不利にも程が―――あー、もう! 人数不利がなんだ! 絶対勝つ!!」
レイが離れた後、今度はリリがミヤコに近付いた。リリの足音が近付いてくるのを耳にしたミヤコは、瞬時に表情を穏やかに切り替え、気味悪がられないように笑みを抑えながら振り向いた。
「リ、リリ……! 今日は晴れて―――じゃなくて、今日も―――あーっと、その……おはよう」
「お、おはよう……ねぇ、ミヤコちゃん。私って、ミヤコちゃんのチームでいい、んだよね?」
「う、うん。多分……」
「だよね! 同じ学年だし! でも、なんで私達の方に先輩達もいるんだろう? 混合に変わったのかな?」
「だとしても、人数差があり過ぎるよ。こっちは二十人で、他全員あっちだし……」
二人が訳も分からずにいると、グラウンドに設置された壇上に校長と教頭が登壇した。どちらの顔にも絆創膏が複数の箇所に貼られており、手にはマイクが握られている。
すると、ほぼ同時に着ていた上着を脱ぎ捨てた。露わとなったシャツには、生徒が持つ旗のように自身の派閥が示されていた。
「ただいまより! 体育祭を開戦します!!」
「ルールは単純明快! 全種目で相手をブチのめせ!!」
「貴様ら! レイ様を勝たせたいかー!!」
【イエェェェェ!!!】
「数でしか勝れぬ雑兵共など恐れるに足らず!! 新進気鋭の勢いを見せてやれ!!」
【ヤァァァァァ!!!】
怒号飛び交う開会宣言の中、ミヤコとリリの困惑はますます色濃くなるばかりであった。




