表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/20

空腹

 教室に戻ると、アタシの机周辺に人が集まっていた。イジメか?   


 一人と目が合うと、そこから連鎖するように全員がアタシに視線を向け、続々と押し寄せて来た。


「神木さん! 霧島先輩ともうお近づきになったの!?」

「昨日の夜、霧島先輩の部屋のベランダに居たもんね! 私見たよ!」

「私も!」

「どうやって仲良くなったの!?」

「何話したの!?」

「霧島先輩の部屋に置いてある芳香剤って何だった!?」


 あ、イジメだ。


「ま、待て待て! アタシは別にアイツなんかと―――」


「聞いた!? アイツだって!」

「もうそんなに親しげだなんて!」

「もしかして、夜も共に過ごしてちゃったりして!」

「キャー!」


 勝手に決めつけて、勝手に盛り上がりやがって。アタシのクラスの連中といい、この学校には霧島の信徒しかいないのか。それも盲目の。


 アタシの返答を待たずに盛り上がる門答は、一限目の先生が来るまで続いた。安堵したのも束の間、一限目が終わればすぐにまた集い、そういう繰り返しが昼休みまで続いた。


 昼休みのチャイムが鳴った瞬間に教室から飛び出し。囲まれる前になんとか逃げられた。このまま食堂に向かえば、待ち構えているであろう彼女達に捕まってしまう。


「それで屋上に来てたんだね」


「まったく……アンタの所為で、こっちはいい迷惑だよ」


「クラスの子達と打ち解けたようで何よりだ」


「話聞いてたか? アタシはアンタの所為で困ってるんだよ」


 屋上で隠れてたアタシの所へ、霧島はやってきた。たまたまというよりかは、ここにアタシが居ると分かっていたかのように。その証拠に、霧島が持ってきた袋には総菜パンが二つとジュースが二つ入っていた。


「コロッケパン、好きなのかい?」


「別に好物ってわけじゃねぇよ。ただそっちのメンチカツパンよりかはマシなだけだ」


「こっちも美味しいよ?」


「美味いのは分かってるけど、臭いがな。メンチカツって揚げたては臭わないけど、冷めたら臭くなるだろ」


「……そうかな?」


「鼻ぶっ壊れてんじゃねぇか?」


 それにしても、コイツでもメンチカツパン食うんだな。なんか気取った物しか口にしないのかと思ってた。変な色のパスタとか、鴨の肉とか。


「フフ……」


「なんだよ。なに笑ってんだ」


「いや、なに。君とこうして食事が出来てる事に感動してるんだ。昨日まで無視されてばっかりだったのに、今日はこうして隣でパンを食べてる。それが嬉しいんだ」


「噛み締める程の事じゃないだろ」


「君はもっと自惚れていいんだよ。自慢じゃないが、僕とこうして二人っきりで食事をしたい人間は星の数ほどいる。君は記念すべき初めての人だ」


「ウザいと思えばいいのか、気持ち悪いと思えばいいのか……」


「ハハ! そういう口の悪い所も君の魅力さ!」


 早いとこ食べ終わって何処かへ行きたい。コロッケパンって結構顎にくるな。美味い不味い以前に疲れる食べ物だ。


「……神木さん」

 

「なんだよ」


「名前で呼んでもいいかな?」


「呼べばいいだろ」


「他人事のように言っちゃって」


「アンタの相手は面倒だからな」


「直球だね。それでミヤコ。君は僕をどう呼んでくれるのかな?」


「……霧島?」


「え、名字? それだと仲良しとは言えないじゃないか!」


「仲良しじゃねぇだろ」


「こんなにも会話が続いて!?」


「ここまでのやり取りで仲良しだと思ってるんだったら、だいぶ頭の中お花畑だな」


「そんな……あ、そうだ。今日はスーパーに寄って帰ろうか」


「分かった分かった。分かったから一旦食事に集中しろ。アンタ一口しか食ってねぇじゃねぇか」


 どうしてコイツはアタシにちょっかい掛けるんだ? 似た者同士ってわけでもないし、話が合うわけでもない。アタシ以外の生徒なら、どんな話題だって喰い付くのに。


 けど、こんな風に誰かと食事をするのはいつぶりだろう。リリが引っ越して以来、学校でも家でも一人だった。次第に味も温度も気にしなくなって、腹を満たす感覚にするのが食事になっていた。


 リリ。


 いつかまた、あの頃のように一緒に何かを食べて満たされたいよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ