子供のまま
リリとは別のクラスだった。残念な気持ちと安堵を同時に覚え、どちらかが明確になる前に、理不尽でワガママな怒りで一杯になった。
リリと別れて、十年経ったんだ。アタシのようにいつまでも引きずっているのではなく、ちゃんと新しい出会いを受け入れ、前に進んでる。それが普通で、健常な事なんだろう。
だけど、十年も待ったアタシの想いは?
リリじゃなければ、簡単に忘れる事が出来た。でもアタシにとって、リリは特別なんだ。彼女が居なければ、アタシはいつまでもこのまま。出会いも別れも拒否して、ずっと独りのままだ。
もちろん、話しかけにいけばリリもアタシに気付いてくれるはずだ。見た目は少し変わっちゃったけど、アタシのように、リリもきっと気付いてくれるはず。
だってアタシ達は―――
「やぁ」
すぐ傍で声がした。耳をゾワゾワとさせる低い声。
振り向くと、そこにはあの上級生が微笑を浮かべてアタシを見下ろしていた。
「うわぁ……」
無意識に、アタシの本心が口に出た。今一番会いたくない人物が、よりによってアタシのすぐ傍に居るからだ。
すると、コイツはニヤけた。さっきまでの取り繕った微笑とは違い、嬉しさが表情に滲み出ている。
「……気持ち悪い笑い方、するんですね」
「え?」
「アン―――先輩の、顔だよ」
上手く話せない。あまりにも長い間、マトモな会話をしていなかった弊害が出ている。
しかし、コイツはアタシの言葉遣いに対して怒るとも不快にもなっていない。
むしろ、喜んでいる?
「……ふむ。では、わざわざ取り繕う事も無いか。単刀直入に言おう。神木ミヤコさん」
「チッ……!」
「あ、舌打ち良い……!」
「は?」
「あ……ゴホン! 神木ミヤコさん!」
やっぱり嬉しそうにしてるな。というか、なんでアタシの名前知ってんだ? アタシの名前を口にする相手は、リリが良かっ―――
「この僕と、お友達になりませんか?」
「―――は?」
思わず机を殴ってしまった。
コイツは、なんでよりにもよってそんな事を言ってきたんだ?
アタシの名前を知ってたのは、アタシとリリが幼馴染だと知っていたから?
だからこんな嫌がらせをしてきたのか?
アタシとリリの間に立つつもりか?
コイツは、アタシの唯一の大切な人を汚す敵だ。
「アンタとは……アンタだけとは、仲良くなれそうにない……!」
目の前のコイツを突き倒し、教室から出た。
怒りが鎮まらない。
なんで逃げた。
なんでこんなに他人と上手く関われない。
なんで、アタシはこんなにも不器用なんだ。
「リリ……アタシはまだ、十年前のあの頃のまま。自分自身も制御出来ない子供のままだ……」




