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【8位】私の最終定理  作者: 王璃月
探偵・半自伝・オムニバス

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6/32

最後の戦い!惨殺!破滅を呼ぶ探偵!

現在の私は、鏡を見るのもおぞましい、豚だ。


ぽっちゃりとした、救いようのないオタク。

外界との繋がりなどとうに絶ち切った。

他人の体温よりも、二次元の幻影の方が、ずっと心地よい。

だが、この醜悪な身体の奥底には、決して消し去ることのできない過去がへばりついている。


私、Wan Liyue(リウ)は以前、探偵だった。


歓楽街、ネオンが届かない薄暗く埃っぽい雑居ビルの一室で、他人の秘密を暴き、他人の人生の泥を啜って生きる、しがない探偵だったのだ。


これから語るのは、私の脳髄にこびりついて離れない完全なる「事実」である。


私がなぜ探偵という職を捨て、ぶざまにも牢獄のような自宅に引きこもり、常に何かに怯えているのか。そのすべての発端となった、あの日の出来事だ。


冷たい雨がアスファルトを濡らす、薄暗い午後だった。事務所のドアが、静かに開いた。そこに立っていた男の姿を、私は一生……忘れることができない。


美しかった!


ただ顔の造作が整っているという次元ではない。人間の形をした何か別の冷徹な生き物のような、背筋が凍るほどの怪しい魅力があった。仕立ての良さが一目でわかるダークスーツ。完璧にセットされた髪。そして、底知れない暗い瞳。彼が足を踏み入れた瞬間、埃っぽい事務所の空気が、高級な香水と、その奥に潜む隠しきれない暴力の匂いで満たされた。


「人。……人を。探してほしい。」


男の口調は静かで、感情の起伏が全く感じられなかった。テーブルに置かれたのは、一枚の写真と、私の半年分の家賃に相当するであろう分厚い封筒。写真には、若く線の細い男と、どこか虚ろな目をした女が写っていた。


私は依頼を引き受けた!


金に目が眩んだのもあるが、それ以上に、その男の圧倒的な存在感に逆らうことができなかったのだ。

それからの一ヶ月は、執念の調査だった。二人の痕跡は薄く、意図的に社会から身を隠そうとしているのが明らかだった。私は歓楽街の底辺から寂れた地方都市の安宿まで、ありとあらゆる糸をたぐり寄せた。足の裏にはマメができ、睡眠時間は削られ、胃には常に安物のコーヒーと疲労が滞留していた。


そして一ヶ月後……

私はついに彼らの居場所を突き止めた。県境にある、今にも崩れ落ちそうな古びたアパートの一室。二人はそこで、息を潜めるようにして生きていた。私はその足で事務所に戻り、男に報告の電話を入れた。男はただ一言、ご苦労だった、とだけ言い、指定の口座に残りの報酬を振り込むことを約束して電話を切った。


探偵としての仕事を完遂した達成感。口座の数字が増える悦び。その夜、私は安い酒で祝杯をあげ、泥のように眠った。


翌日の昼過ぎだった。

二日酔いの頭を抱えながらつけたテレビのニュース速報が、私の全身の血液を瞬時に凍らせた。


『県境の山中で、身元不明の男女の遺体が発見されました』


画面に映し出されたブルーシートと、騒然とする現場の映像。アナウンサーが読み上げる遺体の特徴は、私が一ヶ月かけて探し出したあの二人と完全に一致していた。だが、私を恐怖のどん底に突き落としたのは、その殺害の凄惨な手口だった。


男は、全身を刃物で数十箇所も滅多刺しにされ、原型をとどめない肉塊となって旅行用のトランクに詰め込まれていたという。怒りというよりも、見せしめのような執拗で徹底的な暴力の痕跡。


そして女は。彼女の遺体は、四肢を関節から無残にもぎ取られ、その切り離された四肢と胴体が、まるで悪趣味なオブジェのようにロープで綺麗に一つにまとめられ、山奥の獣道に転がされていたというのだ。


吐き気が、こみ上げた!


トイレに駆け込み、吐き続けた。偶然のはずがない。私が報告したその翌日に、彼らはこの世の地獄を味わわされて、無惨にも、殺されたのだ。私の頭の中で、あの美しく怪しい男の冷たい瞳がフラッシュバックした。


私は震える手で、終わったはずの調査を再び始めた。今度は彼らを見つけるためではない。自分が一体、「何の歯車に組み込まれてしまったのか」を知るための調査だ。裏社会の噂、歓楽街の闇のネットワーク、あらゆるコネクションを使って情報をかき集めた。そして浮かび上がってきた真相は、あまりにも残酷で、あまりにもありきたりな、歓楽街の冷酷な「掟」だった。


依頼人のあの男は、歓楽街を牛耳る巨大なホストクラブグループの幹部だった。そして、殺された男はその後輩ホスト。女は、もともとその幹部の太客だったのだ。


幹部の客であった女に、後輩ホストが手を出した。


いや、正確には自分の客として寝取ったのだ。


ホストの世界において、先輩の客を奪うという行為は絶対的なタブーであり、命に関わる反逆行為だ。女は新しい担当となったその後輩ホストのために、店で莫大な借金を重ねた。そしてその借金は、連帯保証人である後輩ホスト自身の首を激しく絞めることになった。

回収の期日が迫り、女は借金のカタとして風俗の奥深くに沈められそうになった。後輩ホストもまた、組織からの過酷な制裁と借金の重圧から逃れられなくなった。絶望の淵に立たされた二人が選んだ道は、組織の目を盗んでの駆け落ちだったのだ。


裏切られた幹部の怒りは、想像を絶するものだった……


自分の面子を潰し、金を奪い、泥を塗って逃げた二人。幹部は二人を絶対に許さず、この世で最も残酷な方法で始末することを決意した。


だが、彼は組織の幹部であり、表向きは華やかなホストクラブの経営や後輩の管理に忙殺されている。自らの足で逃げ回る二人を地道に探す時間などない。


そこで、何も知らない馬鹿な私が駆り出されたのだ!


何も知らない、金で動く、しがない探偵。私は彼の代わりに猟犬となり、二人の隠れ家を見つけ出し、そして彼をそこへ案内した。


私は……殺人の手助けをしたのだ!


あの無残に滅多刺しにされた男の痛みも、四肢をもぎ取られた女の絶望も、すべては私が彼らの居場所を売り渡したことから始まった。


私の手は、目に見えない彼らの血でべっとりと染まっていた!


事実を繋ぎ合わせ、自分が取り返しのつかない罪に加担したことを理解した瞬間、全身の震えが止まらなくなった。警察に駆け込むべきか。いや、あの男の背後にある組織の力を考えれば、警察が動く前に私が消される。全身を短刀で切り刻まれ、四肢をもぎ取られてロープで縛られる自分の姿が脳裏をよぎり、恐怖で呼吸ができなくなった。


その時だった!


事務所のドアチャイムが鳴った。

振り返った私の視線の先に立っていたのは、あの依頼人だった。

仕立てのいいスーツ。完璧な髪。底知れない瞳。彼からは、一滴の血の匂いもしなかった。まるで先日の雨の日の続きのように、彼は静かに、優雅に、そこにいた。

私は声を出そうとしたが、一音も発することができなかった。ただ、恐怖に見開かれた目で彼を見つめることしかできない。彼は私の怯えた様子を気にする素振りすら見せず、ゆっくりと歩み寄り、私のデスクの上に小さな箱を置いた。

箱の蓋が開けられると、中には、高級な、白いブランド時計が鎮座していた。光を乱反射するその冷たいセラミックの輝きは、私に向けられた明確なメッセージだった。


これで、黙れ。


お前も、共犯だ。


口を割れば、次はお前が死ぬことになる。


彼は、私に選択肢など与えなかった。


私が真実に辿り着くことすら見越した上で、圧倒的な暴力の暗示と、それを封じ込めるための莫大な対価を突きつけてきたのだ。


彼は私が絶対に逆らえないことを知っていた。


男は静かに背を向け、ドアを開けて出て行った。足音一つ立てずに。

事務所には、私と、デスクの上で冷酷な光を放つ高級時計だけが残された。その時計が刻む秒針の音が、まるで私の寿命を削り取るカウントダウンのように、静まり返った部屋に響き渡っていた。


あの日から、私の時間は止まっている。


私は、探偵事務所を畳んだ。


外界と関わることを恐れ、人の目を見ることを恐れ、ただ、息を潜めて生きる道を選んだ。恐怖と罪悪感を誤魔化すために、でたらめに酒を煽り、食欲という最も原始的な本能に身を委ねて醜く肥え、現実から目を背けるために二次元の幻想に溺れ続けた。


ぽっちゃりとした、変態の、馬鹿野郎。


それが、人殺しの片棒を担いだ私の、せめてもの贖罪であり、逃避の果てに行き着いた無惨な姿だ。

時折、震えて眠れない夜がくる。そんな時、私の耳には決まってあの音が聞こえてくるのだ。トランクの中で男が滅多刺しにされる鈍い音。女の四肢が引きちぎられる絶叫。そして、私の太い腕に食い込むように巻き付いたまま、今も無機質に時を刻み続ける、あの忌まわしい高級時計の音が。


私は、永遠にこの牢獄から抜け出すことはできない!


私は、あの怪しく美しい悪魔の影に怯えながら、一人静かに腐り果てていくのを待つしかないのだ……

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