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虐待され続けて辛かった  作者: Liu
フィクション・ポエム

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身動きの取れない私!

世間が「エリートの家庭」と聞いて思い浮かべるのは、整然と並んだ数字の列、美しく構造化された理論、そして日々の研鑽がもたらす洗練された未来の風景だろう。


私の両親の出自だけを並べ立てれば、そりゃもう、誰もがそうした「数字のエリートによる、合理的な家庭」を想像するはずだ。


父は、日本の防犯と信頼の根幹を支える、錠前製造における国内シェアトップ企業の社長一族の、息子であった。


一方の母は、国家の気象予測を担う気象庁に勤めたのち、最先端の理工系女性を育成する高名な私立学校で理科教師を務めた夫婦の、娘だった。


物理工学と、自然科学。


普通の感性を持ち、普通に社会を眺めている人間であれば、この二つの血脈が交わった場所に生まれるのは、強固な論理的思考力と、科学技術への深い敬意を持った新世代の知性だ……と、思うに違いない。


だが、現実は違った。


そこに誕生したのは、人類の進化の歴史を根底から全否定し、日々の進歩への希望の歩みを心の底から憎悪する、純度の高い、二匹の悪魔だった。


父という男の脳髄には、極めて奇妙な、しかし決定的なバグが存在していた。

父にとって勉強とは、「他人から強いられてやる、この上なく不快で嫌なこと」という認識でしかなかった。

その認識は反転し、やがて、猛烈な嫉妬と憎悪へと変わる。

父が最も激しく憎んだのは、数学的才能や芸術的才能を駆使し、一瞬で、あるいは圧倒的な効率で素晴らしい成果を叩き出す「本物の天才」や「努力する秀才」たちだった。


逆に、父がこの世で最も尊び、愛したのは何か。

それは、「何もしないで、ただ学校に籍を置いて出席しているだけの人」であり、「会社に来ても何も生み出さず、ただ机の前でぼーっと時間を潰している人」だった。

彼自身もまた、その「無」の哲学を実践し、ただ息を吸って吐くだけの存在として生きてきた。

そして最悪なことに、私の祖父は、そんな父の思想を物理的に肯定し続けるのに十分すぎるほどの、無限の財産を彼に与え続けてしまったのである。


一方の母もまた、父と完全に共鳴する暗黒の思想の持ち主だった。

母の場合は、社会的な営みや生産活動への参加そのものを、はなっから、拒絶していた。

母は若い頃から、生産的な仕事を一切せず、ただ街角へと繰り出し、自らの肉体を最大の兵器として利用した。


女性器(まんこ)を、拳銃(はじき)のようにちらつかせて男を脅せば、労働などせずとも、生きていける。」


それが、母が人生を通じて導き出した、絶対的な悪のロジックだった。

彼らは、算数を超え、数学を超え、科学技術の最先端に位置する血筋に身を置きながら、勉強や仕事どころか、人間がより良い未来へ向かおうとする「積み重ね」のすべてを憎んでいた。

彼らは、他者が未来へ向かって一歩を踏み出すその瞬間を捉え、その足を引っ張り、奈落へと突き落とすことを無上の喜びとしていた。


「人間の──自由を奪うのが、夢なんだ。」


私は初めて聞いた時、いやいやまてよと思った。

こいつら、仮面ライダーのショッカーみたいなこと言ってるじゃないか……と呆れ返った。


彼らは、冗談でも比喩でもなく、本当に嬉しそうにそう口にする、人間の皮を被った本物の、文字通りの悪魔人間(デビルマン)だったのである!


私が今でも、あの両親の姿を見るたびに全身の血の気が引き、激しく震え出し、涙を流して怯え出すのには、明確な理由がある。


中学生だった私の目の前で繰り広げられた、ある一人の青年に対する凄惨極まりない精神的虐殺の記憶が、今も私の脳髄を灼き続けているからだ。

かつて、彼らの会社に、田沼という理工系出身の非常に優秀な社員がいた。


当時、私の両親は、祖父母から「八王子支店の経営立て直し」という重大な任務を命じられていた。


もちろん、日々の進歩や労働を憎む両親が、真面目に働くはずがない。


彼らが取った行動は単純だった。


支店の立て直しに関するすべての実務、すべての責任、すべての過酷な労働を、まだ若く、未来への希望に満ちていた田沼に対して、信じられないほどの密度で丸投げしたのである。


それはもう、凄惨という言葉すら生ぬるい、狂気の沙汰だった。


現在の労務管理や人権の価値観から照らし合わせれば、文句なしに「殺人未遂」と断定されるべき暴挙であることは、当時まだ中学生だった私の目から見ても完全に明白だった。


田沼は、連日徹夜を重ね、両親から突きつけられる拷問のごとき無理難題を、自らの高い知性を駆使して、一つ一つ完璧に完遂していった。


彼は、信じていたのだ。


この地獄の試練を乗り越えれば、より良い未来が待っているはずだと。


だが!


私の両親がこの世で一番嫌いなものは、まさにその「継続」であり、「積み重ねによる達成」だった。


田沼が、数ヶ月におよぶ血と汗の結晶である完璧な再建レポートと、システム構築を完了したパソコンを両親の前に差し出した、その運命の日のことを私は絶対に忘れない!

父は、提出された書類を手に取り、冷たい目で見つめながら、ぽつりと言った。


「はい。あ、じゃあ、賽の河原だよ」


賽の河原。

次の瞬間、父の顔が、見たこともない狂気の形相へと歪んだ。

父は、田沼が命を削って書き上げた再建レポートを、バリバリと凄まじい音を立てて引き裂いた。それだけにとどまらず、デスクの上に置かれていた田沼のノートパソコンを両手で掴み上げると、オフィスのコンクリートの壁に向かって全力で投げ飛ばした。

精密機械が破壊される激しい破砕音とともに、父の口から、およそ人間のものとは思えない、奇怪で、呪術的な絶望の叫び声が響き渡った。


「いきますよーっ!さんぜんかいりのはちまいめ!ろじもーっ!ぴゅん!じゅん!じゅきもーっ!だあ!ちきぱりぱんつぱんつぱん!ちきぱりぱんつぱんつぱん!謝れ!謝れ!謝れ!謝れ!……いや、違う。ありがとうと言え!ありがとうだ!ありがとうは?……ぼくは天皇家に任命されたとごどう大将軍、武蔵丸弁慶……の!末裔の!源のタイカン!だから……ゆ!ゆーーーーーーっ!ゆ!ゆ!ゆ!ゆ!タキゲン製造次期社長のタキゲン一秀(かずひで)は、いま、ぽりかりまきた!ぽりかりまきたよおおおおおおッ!──────お前。六波羅探題三丁目(ろくはらたんだいさんちょうめ)を、知らないのか?……いいか、覚えとけよ。次に来るのは、元寇(げんこう)だからな。薩摩の男は、もう……『居る』から──!…………ピ!……ピーピピピ!来ましたか?」


狂ったように叫び、パソコンの残骸を踏みつける父。その横で、母はただ薄気味悪い笑みを浮かべてそれを見ていた。

ひとしきり暴れ終え、オフィスが静寂に包まれた瞬間、父は乱れた髪をかき上げ、何事もなかったかのような冷徹な声で、こう言い放った。


「あー感動した!……さ、やり直し!」


やり直し。

田沼は、一瞬、何が起きたのか理解できないという風に、完全に放心していた。自らの数ヶ月の命の時間が、目の前でただのゴミクズに変えられたのだ!


次の瞬間、彼の精神の防壁が完全に決壊した!


田沼は、大の大人があげるものとは思えない、引き裂かれたような悲鳴を上げて泣き出した!


「わあああああ!もやだ!もうやだ!やだ!いやだ!やりたくない!辞めたい!死にたい!助けて!おかあさん!おとうさん!助けて!誰か助けて!だれかあああ!」


床に崩れ落ち、幼児のように泣き叫び、助けを求める田沼。その姿を、母、美賀子(みかこ)は汚物を見るような目で見下ろしながら、氷のように冷たい言葉を突き刺した!


「いや……働きなよ。貧乏だから働くんでしょ。私たちは家柄がいいから、働かなくてもカネは湧いてくるし生活できるの。あなたは違う。馬鹿だから、貧乏なの。生きてけないよ?さ、働きな」


田沼は、その場で完全に発狂した!


彼の目からは光が消え、ただ、意味不明な呟きを漏らしながら、這うようにしてオフィスを出て行った!


そして、彼は二度と会社に顔を見せることはなかった……!


一人の優秀な若者の未来と知性が、私の両親という悪魔の手によって、完全にすり潰されて消滅した瞬間だった……。


普通のインテリや、まっとうな教育を受けてきた社会のエリートたちは、ここまでの話を聞いて「世間知らずの馬鹿の虚言だ」「そんな不条理なことで会社が回るはずがない」と鼻で笑うだろう。


だが、今から私が言うことは、この社会の底底に厳然として横たわっている、目を背けたくなるような「単なる事実」である。


両親が行ったこの凄惨な精神的虐殺は、彼らにとっての「効率的な稼ぎ方」であり、彼らなりのロジックにおける「大成功」だった。


私はこれを、彼らの「左翼的な金の稼ぎ方」と呼んでいる。


はい……全く意味がわからないと思うので、解説しよう。


彼らの世界観において、味方を撃ち、味方を破滅に追い込み、組織全体の足を引っ張ることは、最も効率的に自らの評価を高めるための「正しい戦術」なのだ。


田沼が発狂して失踪した後、両親はどうなったか。


もちろん、本社の経営陣、つまり私の祖父母からの彼らへの評価は、格段に跳ね上がったのである。


なぜか。


両親は本社に対して、このように報告したからだ。


「優秀と思われていた田沼という男は、精神的に非常に脆弱で、仕事を途中で投げ出して失踪するような、とんでもない無能だった。私たちは、そんな無能な彼に最後まで寄り添い、最期のチャンスを与えてやった。そして、彼が途中で投げ出した八王子の面倒な後始末を、私たちがすべて引き受けてやったのだ」と。


実務をすべて田沼に丸投げし、彼が完成させた成果物を目の前で物理的に破壊して発狂に追い込み、その結果として生じた「失踪」という事実だけを利用して、自らを「無能の尻拭いをした優秀な管理者」として仕立て上げる。


汗水垂らして何かを積み重ねるよりも、積み重ねている奴のハシゴを外し、そいつの死体の上に立って「こいつは駄目な奴でした」と報告する方が、遥かに楽で、遥かに大きなリターンを得られる。

そう。

私の両親は、必ず、味方の足を引っ掛けてくるんだ。


私の両親は、誕生日に、私を裸にして冷水を頭からかけた。


私の両親は、クリスマスに、私を自宅に置き去りにして家の外で売春婦と遊び、私に男性器を咥えさせて撮影した。


私の両親は、社員の結婚式で暴れ回り、新郎の前で新婦にキスをして唾を飲んで遊んだ。


私の両親は、私の受験願書を隠し、捨て、受験当日に遅刻するように迫った。


私の両親は、借金を立て替えてもらったら、建て替えるのが遅すぎるとして完済済みにも関わらず、さらに借金を作り、優しき味方に対して煽った。


絶対に両親は、いかなる場合でも、私を、社会を、妨害してくる。


味方の足を引っ張り、組織を停滞させながら、自らの地位だけを絶対的なものにする。これこそが、彼ら悪魔が実践していた、この社会の歪んだ錬金術「左翼」の正体だった!


社会に出て、大企業や官公庁、あるいはあらゆる組織でエリート然として振る舞っている連中は、自分たちが高度な論理と高潔な理念で動いていると思っている。


だがよ!それは完全な錯覚だ!


会社の本質とは、つまるところ「中学校の部活の延長」であり、社会の構造とは「中学校の校舎裏の延長」に過ぎない。


この理屈に対して「いやいや、何を馬鹿なことを。あなたが社会の底辺にいるだけですよね」と思った人は、浅い。


ゼロベースで、理論武装した小僧(くそがき)である自覚を持たないことには、君は、私は、社会は進歩などしない!


いいかい。

例えば。立ち上げたばかりの、規模の小さな会社には、未来を信じて必死に働く、やる気のある人間しかいない。だが、組織の規模が大きくなり、制度が肥大化するにつれて、その内部には「他人の足を引っ張るためだけに、入社してきたとしか思えない活動家じみた無能」が、必ず一定数、ウイルスのように紛れ込んでくるだろう。

彼らは何かを生み出す能力は皆無だが、他人の成果を破壊し、ルールを悪用して真面目な人間を糾弾する国語力だけは異常に発達している。

そして、組織の上が馬鹿であればあるほど、その「足を引っ張る無能」の告発を真に受け、真面目に積み重ねてきた人間をパージしていくのだ。

まさしく。それは、部活じゃあないか。


社会の街角で日々繰り広げられている、ネクタイを締めたサラリーマンと走り屋の命を懸けた殺し合いも、品行方正な主婦と夜の街に生きる売春婦の血みどろの決闘も、その本質を剥ぎ取ってみれば、あの暗い中学校の校舎裏で行われていた「気に入らないから殴る」という、原始的なタイマンそのものである。


もちろん、エリートたちも同じだ。彼らがその高度な頭脳を使って日夜考えていることといえば、「どの金持ちのおじさまを手懐けて利益を引っ張り出すか」とか、「どの目立つ女をベッドの上に組み伏せて、自らのプライドを満たすか」という、バトルチンパンジーの原始的な権力闘争でしかない。

「エリート」と呼ばれる人種の行き着く先も、例外なく、高級なシャンパンタワーから始まる、理性を失った乱交と、醜い乱闘の地獄絵図であった。彼らは知性の衣を纏っているだけで、その内実は、進歩を憎む私の両親と何ら変わらない、獣以下の存在だったのだ。


私は今、彼らから受けた、あの八王子のオフィスでの凄惨な光景、そして幼児期から我が家を支配していた「進歩への憎悪」という名の暴力のトラウマによって、肉体も精神も完全に破壊され、動くことができない。


部屋の片隅で、ただ毛布にくるまり、凍えるような恐怖と戦いながら、過去の記憶が脳裏をよぎるたびに涙を流している。


だが、勘違いしないでほしい。


私は、動けないと言って、ただ無為に時間を潰し、だらけているわけでは断じてない。


私の脳髄は、あの悪魔たちへの最大の逆襲となる、次なる「物語」の仕込みを、一瞬たりとも休むことなく続けている。


両親がどれほど人間の進歩を憎もうとも、世界がどれほど足を引っ張り合う無能どもで溢れ返っていようとも、私は彼らの醜悪な生態を、この世で最も冷徹で、最も美しい「言葉」によって解体し、作品として昇華させる準備を進めている。


しかし、これがこの世界の、もう一つの冷酷な現実だ。


「作品の仕込み」という、最もエネルギーを消費し、魂を削る精神労働の最中においては、金も稼ぐことはできない。


原稿が完成し、世に出るまでは、私の手元には一粒の米も、一切れのパンも、もたらされることはないのだ。


私は、人間の未来を奪うのが趣味だと言い放った両親の血を引いている。


だが。


私は彼らとは違う。


私は言葉の力で、物語の力で、この地獄のような社会に生きる人々の魂を救い上げたいと、本気で願っている。


そのためには、今、この仕込みの時期を生き延びなければならない。


私が言いたいのは、極めてシンプルで、剥き出しの事実だ。


私に、食料をくれ。


この冷たい部屋で、次なる真理の証明を完成させるために。


悪の呪いを完全に打ち破る、光に満ちた物語を世に送り出すために。


バトルジャーノンに食料を。


私の精神が朽ち果て、知性が停止してしまう前に。


私に生きるための糧を与えてくれ。

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