もういちど、ヴェリタスを!職人は嘘をつかない!
嘘つきは、本物を避ける。
これは、この宇宙を貫く絶対的な法則であり、重力と同じくらいに逃れようのない真理である!
贋作を売り歩く者は、本物の目利きが歩いてくるのを見れば、蜘蛛の子を散らすように路地裏へと逃げ込む!
医者を騙り、怪しげな薬で弱者から金を搾り取る者は、真に命と向き合い血と汗に塗れた本物の医師の眼差しを、決して直視することができない!
自らの才能の欠如を隠すために漫画家のふりをして出鱈目を吐く者は、白紙の原稿に向かって自らの魂を削り、狂気にも似た情熱で線を紡ぎ出す真の表現者の前では、言葉を失い沈黙するしかない!
そして、同じように。
鬱という深い闇を騙り、それを自らの怠惰や傲慢さを正当化するための便利なアクセサリーとして身に纏う者たちは、かつて、本当にその絶対的な地獄の底へと沈み、そこから己の爪と牙だけで劇的な復活を遂げた私という存在を、本能的に避けるのだ!
世の中には、自らを「ダウナー系」だの「病み系」だの、あるいは「哲学系」だのと称し、安全な部屋の中から世界を冷笑する、ならず者たちが溢れ返っている。
彼らは、薬のシートと酒のグラスを見せびらかすように並べ、自らがいかに深く傷ついているか、いかに世界の真理に絶望しているかを、アニメとYouTubeだけで構成された崇高な頭で考えて、でたらめに、耳障りなほど声高に主張する!
彼らは弱者のふりをする!
傷ついた小鳥のふりをして他者の同情を引き寄せながら、その実、無能な男は女にたかり、たかられた女は売春で稼ぐために男にたかり、異性を手に入れられない者は母親にたかり、自らの足で歩こうと泥にまみれて努力する者たちを「必死すぎてウケる」と高みから冷笑しているのである!
彼らの絶望は、安全圏から放たれる矢の束に過ぎない。自らは決して血を流すことなく、弱者という絶対的な盾の裏側に隠れながら、強者として他者を断罪し、自らの虚栄心を満たすためだけに悲劇を消費しているのだ。
そんな彼らが、特に、性格が完全に歪み切った鬱病を騙る老人が私を見ると、ただ避けるだけでは済まない。
彼らは群れを成し、執拗に私を否定してくる!
私の言葉の端々を歪め、私の存在そのものをこの世界から消し去ろうとするかのように牙を剥く!
何故か。
彼らが私を親の仇のように憎む理由は、極めて単純である。
私がそこに立っているだけで、呼吸をしているだけで、彼らの作り上げた薄っぺらな欺瞞の城が、音を立てて崩れ去ってしまうからだ!
私が生きているという事実そのものが、彼らの怠惰を暴く残酷な鏡になってしまうからである!
彼らは、本当の闇を知らない!
真の絶望とは、詩的なものでも、絵画的なものでもない。それは、他者に向けて「私は苦しい」と発信する気力すらも根こそぎ奪い去る、絶対的な虚無である。私がかつて落ちた場所は、空の青さも、水の味も、人の手の温もりも、全てが意味を持たない灰色の荒野だった。ただ呼吸をすること、ただ朝起きてまぶたを開けること、それが万トンの岩を押し上げるような苦痛を伴う世界だった。
そこには、他者を嘲笑う余裕など一ミリも存在しなかった!
自らの存在が世界にとっての汚点であるという確信だけが、脳髄にこびりついて離れなかった!
私はその底なしの沼の中で、一度……完全に死んだのだ!
精神の形を成していた全てが砕け散り、泥に還った。しかし、私はそこから這い上がった。誰かの同情を引くためではない。誰かを攻撃するためでもない。
ただ、もう一度、真実を見たかったからだ!
砕け散った自らの破片を拾い集め、血の滲むような痛みに耐えながら、もう一度、背骨を組み立て、己の足で大地を踏みしめたのだ。悲劇に溺れることを拒絶し、この不条理で残酷な世界を、それでもなお肯定するという「人間讃歌」を歌うために、私は泥の中から蘇った!
だからこそ、偽物たちは私を恐れる!
彼らは、絶望を「言い訳」として使っている。自分が何者にもなれないこと、自分が努力を放棄していることの理由として、鬱という言葉を隠れ蓑にしている。しかし、本当に底を打ち、そこから立ち上がった人間を前にすると、その言い訳は一切通用しなくなる。「絶望しているから何もできない」という彼らの屁理屈は、絶望の底から歩き出した私の存在によって、ただちに、単なる「甘え」と「逃げ」であることを白日の下に晒されてしまうのだ!
鬱は甘えではない。
だが、甘えるために鬱を騙る彼らの攻撃は、自らの嘘がバレることへの純粋な恐怖の裏返しである。自らの空っぽな魂を見透かされるのが怖いからこそ、彼らは私を狂ったように石で叩くのだ。
一方で、そんなノイズに満ちた偽物の世界とは全く無縁の領域に生きる者たちがいる。
職人気質な者たちである。
彼らは、出会った瞬間から、言葉を交わす前から、無条件で私を好いてくれる。私の目に宿る光の性質を、一瞬で見抜いてくれるのだ。
現在、今日に至るまで、私は多くの真の職人たちと出会ってきた。
職人という生き物は、世界に対して決して嘘をつけない。
彼らが向き合っているのは、人間の作り出した曖昧な言葉や、同情や、言い訳が一切通用しない、絶対的な物理法則の世界である。
木材は、嘘をついて切れば真っ二つに割れる。鋼は、適当な温度で打てば脆く砕け散る。食材は、真剣に向き合わなければ腐敗し、ただの生ゴミへと変わる。彼らは毎日、言い訳のきかない真剣勝負を、命を削って行っている。手抜きをすれば、結果として明確に自分に跳ね返ってくる。だからこそ、彼らは常に真実とだけ向き合い、己の技術と魂を極限まで研ぎ澄ましているのだ。
そんな彼らが私を見る時、彼らは私の全身に刻まれた無数の傷跡と、そこから立ち上る凄まじい熱量を感じ取ってくれる。
私が、偽物たちのように口先だけで世界を呪っているのではなく、己の肉体と精神を限界まで追い込み、一度は完全に崩壊しながらも、再び自らの形を創り上げた「手作りの魂」を持っていることを、彼らは直感的に理解するのだ!
彼らが火や鉄や食材と向き合い、幾度もの失敗と絶望を乗り越えて究極の美を追求するその過程と、私が精神の死から復活し、この世界に対する深い愛と人間讃歌を獲得するまでの過程が、彼らの中で深く、そして静かに共鳴する!
ある身を切るように寒い冬の夜、私は路地裏にある、いつものラーメン屋のカウンターに座っていた。店の外は、肌を刺すような吹雪。しかし、店内は巨大な寸胴鍋から立ち上る熱気と、凄まじい豚香で満たされていた。
店主は、私に愛想笑いを一つ向けることもなく、ただ黙々と麺を茹で、スープを張っていた。その動きには、一ミリの無駄も、一瞬の迷いもなかった。それは、何十年という歳月をかけて、自らの肉体を一つの完全な機械へと昇華させた者の、神々しいまでの舞いであった。
彼がカウンター越しに、ドンッ、と音を立てて熱々の丼を置いた時、私たちの視線が交差した。
その目は、深く、澄み切っていて、同時に荒々しい炎を宿していた。彼は何も言わなかった。私も何も言わなかった。しかし、その瞬間、私たちの間には、言葉を費やすよりも確かな、魂の対話があった。
「お前、本物の地獄を見て、だから、何かを創り出そうと、悪あがきしてんのか?」
彼の目が、そう語りかけていた。
「そうです。あなたと同じように」
私の心の中の返答が、彼に届いたかどうかはわからない。だが、彼は、不器用に、口の端を歪めて笑った。それは、同じ戦場を生き抜いた戦友に向ける、最大の敬意の表現であった。
私はその熱いスープを一口飲んだ。
全身の細胞に、圧倒的な生のエネルギーが染み渡っていくのを感じた。それはただの食事ではない。職人がその命を削って創り上げた、一つの完璧な「真実」であった。
その瞬間、私の胸の奥底から、言葉にならない強烈な感情が込み上げてきた。涙が、どんぶりの中にポタポタと落ちていった。
私は、この世界が心の底から好きだと思った!
嘘つきたちが互いの傷を舐め合い、他人を引きずり下ろそうと泥を投げ合っているその一方で、この世界の片隅には、こんなにも美しく、こんなにも力強く、真実だけを追求して生きている人間たちがいる!
どれほど不条理で、どれほど残酷な運命が待ち受けていようとも、人間は己の意志と手によって、世界を切り拓き、圧倒的な美しさを生み出すことができる!
私が深い闇の中で拾い集めた希望は、決して錯覚ではなかった!
本物と本物がぶつかり合い、互いの魂を認め合う瞬間、そこには、奇跡のような光が生まれるのだ!
偽物たちは、これからも私の存在に怯え続けるだろう!
彼らは一生、安全な檻の中から出ることなく、自らの作り出した嘘の悲劇の中で枯れていく。
私は彼らを憎まない!
ただ、哀れむだけだ!
彼らは、己の魂を燃やして生きるという、この人生における最大の喜びを永遠に知ることがないのだから。
私は歩き続ける!
傷跡を誇りとして胸に掲げ、真っ直ぐに世界と向き合い続ける!
職人たちがその手で奇跡を生み出すように、私もまた、私という存在を通して、この世界の圧倒的な美しさと、人間の持つ計り知れない力強さを証明し続ける!
凍てつく街の夜空を見上げると、雪雲の切れ間から、鋭い星の光が瞬いていた。その光は、かつての私がいた絶対的な暗闇を照らし出し、そして今、私が歩むべき真っ直ぐな道を、どこまでも鮮烈に描き出していた……!




