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コミカライズ決定【8位】ヴェリタスの最終定理7 番外編 THE ORIGIN  作者: 王璃月
探偵・半自伝・オムニバス

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恐怖!伏線病!迫り来るでぃぎゃーん!そしてかちかち山!

私、Wan Liyue(リウ)は……世間に蔓延る有象無象の探偵たちを、そして、自らを名探偵と錯覚しているおまわりどもを、心の底から馬鹿だと思っている。


……いや。


これはもう、職業としての探偵に限った話ではない。


人間関係の構築や破綻、職場での出世競争や左遷、あるいは、休日の些細な遊びや娯楽に至るまで、この世界のありとあらゆる物事に、まるで……小説や映画のような「伏線」が存在すると無意識に信じ込んでいるすべての人間を、私は救いようのない「馬鹿」だと思っているのだ!


彼らは、ある事象Aが起きたとき、必ずそれが事象Bに繋がるための「理由」があると信じて疑わない。

人が人を殺せば、そこには必ず怨恨や痴情の揉れ、あるいは保険金目当てといったドラマチックな「動機」があると決めつける。

物が盗まれれば、その背後には緻密に計算された企業スパイの暗躍や、借金に首が回らなくなった者の切羽詰まった「事情」があると考える。

確かに、そうした何らかの「理由」は、気が遠くなるほど深掘りし、都合の良い事実だけをパッチワークのようにつなぎ合わせれば、そりゃあ、後付けで構築することはいくらでも可能だろう。


しかし、私は断言する!


現実世界において、人間の行動に一貫した理路整然たる「理由」など「基本的にはない」のだ!


人は、朝起きて気分が塞いでいたからという理由で長年の友人に暴言をわざわざ吐く生き物であり、ただ目の前にあったからという理由で他人の傘をわざわざ盗む生き物であり、酒を飲んで酔っ払ったからという理由で、自らの人生を破滅させるような凶行にわざわざ及ぶ生き物である。


そのエラーに伏線と因果関係はたしかに「ある」が、そのナラティブにおいて、伏線と因果関係は「基本的にはない」のだ!


あるのはただ、無秩序なカオスと、その瞬間の電気信号だけだ。探偵活動とは、その「理由はない」という圧倒的な虚無を前提として行われるべきものである。

にもかかわらず、深く物事を考え、推理し、他人の心の中にも自分と同じような論理的思考が存在すると思い込んでいる者たちは、全員が重度の「伏線病」にかかっていると言わざるを得ない。


考えることこそは、無駄だ!


ただ、ありのままを「視る」べきだ!


伏線病にかかった者たちは、事件現場に落ちていた無関係なゴミを「ダイイングメッセージ」だと勘違いし、犯人の無意味な奇行を「巧妙なアリバイ工作」だと深読みして、勝手に自滅していく。


私の超越した推理力とは、実のところ、学でも武でもなく、ましてや人の心が読めるなどというオカルトじみた能力でもなく、この「人間に理由などない」という真理を、誰よりも冷酷に、そしてロジカルに受け入れている点にあるのだ!


あの日、私が解決した事件も、まさにこの「伏線病」の恐ろしさと、私の持つ「虚無・ロジック」の正しさを証明するものであった。


舞台は、埼玉の郊外にある、油の匂いと機械の駆動音が絶え間なく響くうらぶれた町工場であった。その工場から、ある日突然、工場の土地と建物に関する重要な権利書が入ったファイルが、そっくりそのまま盗み出されたのである。

工場の事務所は密室に近い状態であり、外部からの侵入の形跡は皆無。防犯カメラも古いものが一台あるきりで、事件当夜の映像には何も不審な点は記録されていなかった。

私が依頼を受けて工場に足を踏み入れたとき、現場は疑心暗鬼のどん底に陥っていた。

工場長は顔面を蒼白にさせながら、近隣で土地の買収を進めている不動産会社や、ライバル関係にある同業他社の工作員の仕業に違いないと息巻いていた。

一方で、古参の従業員たちは、ギャンブルで借金を背負ったという若手の工員や、待遇に不満を漏らしていたベテラン職人を名指しで非難し、誰もが互いの背中を泥棒を見るような目でにらみ合っていた。

一触即発。


そう、彼らは皆、見事なまでに……「伏線病」に感染していたのだ!


「権利書が盗まれた」という結果に対して、「敵対組織の陰謀」や「金に困った従業員の謀反」という、いかにもミステリー小説にありそうな「わかりやすい伏線と動機」を無意識に当てはめ、その幻と戦っていたのである。

私は内部の謀反者を見つけ出すという名目で駆り出されたわけだが、現場を五分ほど見渡しただけで、完全に、何の手掛かりもないことを悟った。


証拠もなければ、痕跡もない……。


論理的に考えれば考えるほど、完全に「詰み」の状況であった。

伏線病の探偵であれば、ここで従業員一人一人の身辺調査を行い、借金の額や人間関係のトラブルを洗い出し、無実の人間を犯人に仕立て上げるためのパズル作りに没頭したことだろう。


しかし、私は違う!


「詰み」の状況下で、やたらにドラマを作り出すような三流の真似はしない。


私は騒がしい事務所から抜け出し、工場の裏手にあるプレハブ小屋の陰で、安いタバコに火をつけた。紫煙を肺の奥深くまで吸い込み、冬の冷たい空気に吐き出しながら、ぼんやりと周囲の景色を眺めていた。工場の隣には、トタン屋根の古びた民家が数軒、肩を寄せるように建っている。


その時だった!


一番端にある、今にも崩れ落ちそうな薄汚れた家の玄関の引き戸が、乱暴な音を立てて開け放たれた。

中から飛び出してきたのは……季節外れの薄汚れた半袖シャツに、丈の合わないジャージのズボンを穿いた、小太りの中年男性であった。彼の目は焦点が合っておらず、口元には不気味な笑みがへばりついている。そして、彼はまるでカエルのように不規則に飛び跳ねながら、こう叫んだのである。


「でぃーでぃでぃでぃでぃでぃでぃッ!…………ぶうみーーーっ!」


空気を切り裂くような、しかし全く意味を成さない奇声。彼は「ぶうみーーーっ!」「ぶうみーーーっ!」と叫びながら、工場の敷地の境界線ギリギリのところを、右へ左へと跳ね回っていた。


狂人(きちがい)だ!


そういう、社会の枠組みから逸脱した、脳の配線が根本的に狂ってしまった者は、この世界のどこにでもいる。

美しい住宅街の片隅にも、煌びやかなオフィスの清掃員の中にも、そして、このうらぶれた町工場の隣にも。

彼らは確実に存在しているが、たいていの場合は健常者たちの防衛本能によって「見えないもの」として処理され、見過ごされる。伏線病にかかった探偵たちも同様だ。彼らは「権利書の盗難」という楽しい楽しいミステリーのプロットに、「ぶうみーーーっ!」と叫ぶ狂人はノイズにしかならないと考え、無意識に捜査線状から排除する。


しかし、私は「狂人を手懐けるプロ」である。


「人間に理由などない」という真理を知っている私にとって、彼の存在は決してノイズではない。むしろ、理由のない行動を完全に、純粋に体現している彼らこそが、理由のない事件の鍵を握っていることが多いのだ。

私はタバコを揉み消すと、工場長たちには何も告げずに、その中年男性にゆっくりと近づいていった。


そして……私は彼と「お友達」になったのだ!


狂人を手懐ける上で最も重要なのは、決して彼らを論理の枠組みに当てはめようとしないことだ。彼らの言語を否定せず、彼らの見ている幻覚を否定せず、ただその波長にピタリと合わせる。

私は数日かけて彼と奇妙なコミュニケーションを重ねた。

ある時は彼と共に「ぶうみーーーっ!」と叫びながら跳ね回り、ある時は彼が土に描く意味不明な図形「でぃきぽー」を真剣な顔で褒め称えた。私は彼にとっての絶対的な理解者、「ちゅぴちゅ」としてのポジションを確立したのだ。


この途方もなく不条理な話の結末を言おう……


捜査開始からたった三日後。私は、あの「ぶうみーーーっ!」と叫ぶ中年男性の自宅の押し入れの中から、権利書のファイルを無傷のまま回収することに成功したのである。

工場の事務所で、その事実を報告した時の工場長や従業員たちの顔は、まさに滑稽そのものであった。彼らは、敵対組織の陰謀でもなく、借金を抱えた内部の裏切り者でもなく、ただ、隣に住んでいた奇声を発する中年男性が犯人であったという事実を、到底……受け入れることができずにいた。


「はああああ?全然!ぜんっぜん意味がわからねえよ!あいつが?あのカタワの野郎がよ?……どうやってあの密室から……!探偵さんよ!説明しろよ!いや、いったいどんな理由でこんな……!」


工場長が震える声で問い詰める中、私は工場の外に呼び出しておいたあの中年男性を事務所に招き入れた。そして、工場長たちの目の前で、彼から直接事の真相を語らせたのだ。それが、彼らにとって最も残酷な「伏線病の治療」になると知っていたからである。


「あっちもー!だ!ちゅぴちゅ!でー、シリカゲルが、食べた?赤川さん?……いー、白線の内側までぃー、お下がりください!……おさがりくださいッ!でぃきぽーは?」


中年男性は、工場長たちの怯えた視線など意に介さず、私に向かって満面の笑みでそう叫んだ。私は彼の言葉の裏にある論理構造を解読しようなどという無駄な努力は一切せず、ただ穏やかな微笑みを浮かべて、彼の狂気に寄り添うように相槌を打った。


「そうだねえ、シリカゲルは食べないね。でさあ、ちゅぴちゅもわかるんだけど、権利書……いや、そのファイルを。どうして、持ってっちゃおうと、思ったのお?」


私の極めて柔らかく、しかし、的確な問いかけに対し、中年男性は工場長たちの顔を一度だけ見回すと、まるで世界の真理を説く哲学者のような堂々とした態度で、声高らかにこう宣言したのである。


「でぃぎゃーん!だーの。ニッ?」


沈黙が事務所を支配した。工場長も、従業員たちも、誰一人として言葉を発することができなかった。彼らの頭の中では、「でぃぎゃーん」なる言葉が持つ意味を必死に解析しようと論理の回路が悲鳴を上げていたことだろう。


企業スパイの暗号か?


誰かの名前の隠語か?


それとも何かの頭文字か?


しかし、意味などないんだなあ、これが!


いきなり夜中に工場の鍵の開いていた窓から無断で侵入し、いきなり机の上にたまたま放置されていた権利書の入ったファイルを盗み出した理由は、ただ、純粋に……「でぃぎゃーん」だったからだ!


「でぃぎゃーん」だから、侵入した!


「でぃぎゃーん」だから、ファイルを盗んだ!


そこには、怨恨も、金銭目的も、壮大な陰謀も、見事なトリックも一切存在しない。彼の脳内でその瞬間、ファイルを盗むという行動に結びつく電気信号が「でぃぎゃーん」という音と共に弾けただけのことなのだ。


意味がわからないかい?


ああ。


それが正常な反応だ。


だが、これでいいのだ。


いきなり権利書は無事に手元に戻り、もちろん誰も逮捕されることなく、なぜか平穏な日常が戻ってきた。

伏線病にかかった三流の探偵であれば、「でぃぎゃーん」の背後にある意味を捏造し、誰かを犯人に仕立て上げていたかもしれない。しかし、私は「理由はない」という大前提を持ち、「伏線もない」という常識で生きているからこそ、狂人の全く理屈の通らない理屈を最も簡単に、そして最も平和的に解き明かしてしまうのである。


では。


なぜ私がこれほどまでに人間の行動の「無意味さ」を確信し、狂人の論理を一切の抵抗なく受け入れ、それを操ることができるようになったのか。

それは、私の探偵としての資質でも、持って生まれた才能でもない。

全ては、あの忌まわしい幼少期の経験、つまり、私の「父」という名の絶対的な怪異との血みどろの対話の歴史に起因しているのだ。


父は、狂人という言葉すら生ぬるい、宇宙の論理から完全に逸脱した存在であった。

彼の中には、社会のルールも、他者への共感も、原因と結果という最低限の因果律すら存在しなかった。

彼が行動する動機は常に、その瞬間に湧き上がる暴力的で自己中心的な衝動のみであった。


私は物心ついた時から、その予測不可能な狂気の嵐のど真ん中で、文字通り……命を削られながら生き延びてきたのである!


あの日の出来事は、私の脳裏に決して消えることのない焼き印のように刻み込まれている。


ある冬の日、私は父に連れられて近所のコンビニエンスストアに入った。

父は店内をふらふらと歩き回った後、陳列棚にあった菓子パンを無造作に掴み取り、そのままレジを通さずに店の外へと歩き出したのである。


白昼堂々の、あまりにも悪びれない、明らかな万引きの光景に、私は一瞬自分の目を疑った。私は慌てて父の腕を掴み、問い詰めた。


「はああああ?いや、いやいやいやいや、いったい……あんた、なに堂々と万引きしてるんですかよ!いや……いや?……ほら!なんかいうことないの?」


常識的な人間であれば、ここで罪悪感から言い訳をするか、あるいは逆ギレして逃走を図るかのどちらかだろう。しかし、私の父は違った。


父は立ち止まり、手の中の盗んだばかりのパンをまじまじと見つめた後、おもむろに袋を引きちぎり……かじったのである……!


そして、突然顔を真っ赤にして激怒し、店内に向かって怒鳴り込み始めたのである。


「あてゃてゃてゃてゃ!ワ!このパンまずい!まずいの食べさせてごめんなさいって、言え!食べてやった!だからありがとうとも、言え!金返せ!ゆうゆ!ゆうゆーーーッッッ!……え!?居ませんか?謝ってよォォォォンッ!」


私は耳を疑った!


父は万引きをしておきながら、その商品が自分の口に合わなかったという理由で、店側に対して「謝罪」と「感謝」、そして、なんと……あろうことか「金銭」まで要求したのだ!


原因と結果が完全に逆転している!


盗んだ者が被害者ぶり、盗まれた側に賠償を求める。これはもう、単なる屁理屈ではない。父の脳内では、己の不快感こそが世界の絶対的なルールであり、そのルールを犯した店側が悪であるという論理が、恐ろしいほどの純度で成立していたのだ。


レジの奥から飛び出してきた若い男性店員は、父の常軌を逸した要求に、完全にパニックに陥っていた!


「なんなんだよこいつはッ!キチガイ野郎ッ!盗んだ上に金まで請求するの?えええええッ!頭おかしいんじゃねえのか?もういいよお前!誰だよお前お前、俺ッ!俺もう警察呼ぶから!ああもう!なんだこいつは!帰れよ!」


店員が怒りに震えながらそう叫ぶと、父はニタリと醜悪な笑みを浮かべ、さらに意味不明な言語の奔流を解き放った。


「もういいんだ!はいぼくの勝ち!かちかちかちかち、かちかち山ッ!因習春秋真前後!三振南北瑞統合!北宋南宋現民進!ぴぴぴーっ!おしっこ発射しませんかッ!」


それは、もはや言葉ではなかった!


歴史用語や四字熟語、そして幼児語を無作為に切り刻んで繋ぎ合わせた、まさに、呪いの呪文であった!


父は自らの狂気を盾にして論理的な対話を完全に拒絶し、この場を己の支配する「無意味の空間」へと作り変えようとしていたのだ。店員は恐怖のあまり後ずさりし、周囲の客たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく!


このままでは警察沙汰になり、私も巻き込まれる!


だが。


それ以上に、私はこの圧倒的な不条理を前にして、父がこのまま「勝ち逃げ」することだけは、私のプライドが許さなかった。狂人に対して論理的な説教など無意味だ。


もちろん、理論などというお利口さんがでっちあげた言葉遊びなど、狂気の前では無駄だ。


かといって、力でねじ伏せることもできない。私は生き延びるために、自らの精神を冷酷な機械へと切り替えた。

私は父の前に進み出ると、まるで幼児をあやすような、極めて大げさで間延びした声で、彼にこう語りかけたのである。


「すごい!かちかち山だね。いっぱい知っているんだね。私はお馬鹿さんだから知らなかったなあ。あっ、そうだ。物知りさんだから、お利口さんだから、お金、払おっか」


それは、私の持てる全てのプライドを泥水に沈め、自らを「お馬鹿さん」へと貶め、狂人である父を「お利口さん」と持ち上げるという、究極の自己否定の言葉であった。


だが、私は知っていた!


父のような肥大化した自己愛を持つ怪物は、論理による説得よりも、己の全能感をくすぐる安い称賛に対して致命的なまでに脆いということを!


人を動かすのは、いかなる場合も感情だということを!


私のその卑屈な誘いに、父は見事に引っかかった。父は目を大きく見開き、興奮のあまり口の端から唾液を飛ばしながら、狂喜乱舞して叫んだ。


「はいお前バーカ!バカバカバカバカ!カバカバカバカバ!バカカカ、カカカカバ!バカはカバ!カバはバカ!バカカカ!カカカバ!カカバカバ!イーーーーーーーッ!……死ね死ね死ね死ね!ヒューウ!でゅくし!じきし!じし!ぶくし!ずくし!……はいお金っ!ポン!」


ポン。

父は私に向かって罵詈雑言を浴びせ、私の頭や肩を何度も拳で殴りつけた。物理的な痛みと、公衆の面前で狂人の父親から「バカ」と連呼され殴られるという屈辱が、私の全身を切り刻んでいった。しかし、父の狂乱が頂点に達し、「はいお金っ!ポン!」と叫んだその瞬間、父の手は無意識にポケットへと伸び、くしゃくしゃになった千円札を引き張り出して、ポンと、レジのカウンターに叩きつけたのである。


私は馬鹿と罵られ、理不尽に殴られた!


だが!


私は父に「賠償をさせる」という唯一にして最大の目的に成功したのだ。店員は恐怖で震えながらもその千円札を受け取り、私は殴られて腫れた顔のまま、父を連れて逃げるように店を後にした。


私は、自分のプライドがこの世界の誰よりも高いと自負している。

他人に頭を下げること、馬鹿にされること、自分の論理を曲げられることに対する嫌悪感は、常人の何千倍も強い。


だが!


本当に、圧倒的にプライドが高いからこそ、私はそのプライドなど、目的を達成するためならば、ためらうことなく一瞬でドブに捨てることができるのだ!


世間で「プライドが高い」と見られている、決して自分から謝らない人間や、他者に対して下手に出ることができない人間がいる。

彼らは自らの過ちを認めず、強がって見せることで自分を守ろうとする。


だが!


私から言わせれば、それは単なる「傲慢」でしかない!


傲慢とは、己の精神の脆弱さを隠すための鎧であり、それこそ、「馬鹿」という言葉を別の表現に言い換えたにすぎない。

彼らは、一度でも頭を下げれば自分の全存在が崩壊してしまうと怯えているのだ。


傲慢と、真のプライドの高さは、似て非なるものであるどころか、完全な対極にある!


真のプライドとは……どれだけ他人に泥を塗られようと、どれだけピエロとして嘲笑されようと、どれだけ地獄を味わおうと、決して傷つくことのない、強靭で冷酷な……黄金の自我のことである!


目的のためならば、自らを「お馬鹿さん」と呼び、狂人に殴られながらもほくそ笑むことができる。その精神の異常なまでの柔軟性こそが、私の圧倒的な強さの源泉なのだ。


私は、親族という名の理不尽な怪異との日常的な戦闘を通じて、この世界の論理の通じなさを骨の髄まで学習した。


「伏線」などというものは、安全な場所から世界を傍観している、怠惰になりすぎて頭がふやけた人間たちが作り出した、心地よいファンタジーに過ぎない!


現実は、意味不明な奇声と、脈絡のない暴力と、理由なき行動で構成されている。


私は探偵として、その理由なき世界を誰よりも冷徹に見つめ、伏線を否定し、狂人の言葉を翻訳し、自らのプライドを切り売りしながら、真実という名の無意味な紙切れを拾い集めているのだ。


あの町工場で権利書を盗み出した中年男性が、もし仮に伏線病にかかった探偵に尋問されていたら、彼はただ怯え、あるいはさらに狂乱し、事件は迷宮入りするか、無実の人間が冤罪に問われていたことだろう。


しかし、私は彼に「でぃぎゃーん」と言わせることができた。


彼の中の無意味さを、一切のジャッジを下さずにそのままこの世界に定着させることができた。


それこそが、幼い頃にコンビニエンスストアの冷たい床の上で、殴られながら私が獲得した、この世で最も悲しく、そして最も強力な「理論」の究極の形なのである。


私はこれからも、この狂った世界で、誰よりも高いプライドを胸に秘めながら、最も泥にまみれたピエロとして踊り続けるだろう。


人間に、理由などない。


生きているから、生きている。


ただ、それだけだ。


そこに気づけない馬鹿な探偵たちが右往左往するのを横目に、私は今日も安いタバコを吹かしながら、「意味不明」の中に隠された、虚無という名の真実を拾い上げるのだ!

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