第五章 冷たい面会
それからしばらくしたら、バロロさんは戻ってきた。手には、大量の書類。
「……バロロさんッ!大丈夫でしたか!?」
心配そうにバロロさんを見る。
「ああ……私は大丈夫だよ。それより、君たちの方が心配だ。こんな惨状な場所に長く待たせて悪かったね。今家に帰ろう」
え?と思った次の瞬間——バロロさんが大きな魔法陣を出したころには、家の中にいた。
「え!?」
「ん!?」
バロロさんが得意げに語る。
「これは、私の中でもかなり便利な応用魔法……瞬間移動、さ。一度行ったことのある場所でしか使えない代わり、どこへでも一瞬で行けちゃうよ」
「す、すごい……!」
ただでさえ強力な魔法特殊能力を持っているのに、色んな応用魔法も扱えちゃうなんて……!やっぱり、バロロさんはカッコいい!
「……で、これなんだけどね」
バロロさんは一冊の本を見せてくれた。そこには……グリサイユくんの名前が書いてあった。
「!バロロさん、これは…!」
バロロさんは説明をくれる。
「一番奥に佇んでいた豪邸でこれを見つけた……恐らく、グリザイユくんの日記だろう。中には、その日にあったこととかが書いてあった。でもね……」
バロロさんの顔が暗くなる。
「日記によると、ある日から突然狂桜の声が聞こえるようになったと書かれている。そして、真夜中に狂桜に会いに行った——それで、日記は途絶えている」
「なるほど……」
キアロくんは考え込む。
「狂桜と話しているのを親に見られて、それで大ゲンカしたとかか……?」
「……でも、そしたらあの惨状はどうやって説明がつくの?」
「うむ……」
皆で考え込む。すると、バロロさんが喋った。
「……こればかりは、彼に聞かないと分からないね。そこでだ……カゲエくん、君と一緒に聞きに行きたいと思っている」
「えっ……」
困惑する。
「グリザイユくんは、狂桜を奪った私のことを憎んで詳しくは話してくれないだろう。でも——君になら、話してくれそうな気がするんだ。はは、なぜだろうね」
バロロさんはほほ笑む。僕は……。
「はい……わかりました。グリザイユくんに、聞いてみましょう」
覚悟を決めた。
◇
「……聞こえるかい?」
バロロさんは魔法通信機に声をかける。
《はい!聞こえます》
《問題ない》
《大丈夫ですよ~》
三人の声が聞こえる。ミライ・ユくん、キアロくん、トロンプくんだ。彼らには別室で待機してもらってる。そして。
「さて……開けるよ」
「はい……」
グリザイユくんと、ご対面だ。
部屋に入るなり、ガシャン!!と音がした。グリザイユくんがオリに捕まっていた。
「またテメエか……狂桜はどこだッ!!」
バロロさんを見るなり、怒鳴りつける。バロロさんはハア、とため息をついた。
「……君に大事な話がある。これを見てくれ」
バロロさんはグリザイユくんに見えるように日記を差し出す。
「は……?」
「これは、君が書いた日記だよ。今日、君の故郷と思われるカグラノ村へ行ってきた。そこの奥の豪邸で見つけたんだ」
「?……う゛!?」
グリザイユくんは、また頭を押さえた。
「グリザイユくん!!」
「ッ……!」
バロロさんは、グリザイユくんの周りに魔法陣を浮かべる。癒しの魔法だろうか。少しだけ、ほんの少しだけグリザイユくんの顔が穏やかになった気がした。
「ハア……ハア……」
息が乱れるグリザイユくん。
「……狂桜に会いに行ってから、何が起きたんだ?」
緊張の瞬間だ。誰しもが、集中している。
「……」
「……」
「……」
「……はっ」
グリザイユくんは笑った。
「覚えてねえな」
「……本当に?」
「たとえ覚えてても、テメエには言わねえよ」
「グリザイユくん!!」
僕は、思わず叫んだ。もう、我慢ができなかった。
「皆……!!グリザイユくんのことを心配してるんだよっ!?狂桜を取り上げたのだって、グリザイユくんにこれ以上怪我させないためだし……!」
そう訴えかけるが。
「……知らねえよ」
冷たく返されてしまう。
「……さっさと狂桜を返せ。そして」
その一言は、あまりにも冷たかった。
「もうこんなトコ、出て行ってやるよ」
——。
心に、冷たい氷柱を刺されたようだった。僕は……ただ……。
「グリザイユ!!!!!」
バロロさんがそう叫ぶ。
「!?」
思わずびっくりする。
「言ってはいけないことがあるだろう……!?」
「……はっ」
グリザイユくんは、興味がないみたいに寝ころんだ。
「……うるせえよ」
そして、その日の冷たい面会は終わった。




