第二章 謎の部族
それから朝が来た。
目を覚ますと、いつもと変わらないような朝の空気が部屋の中に広がっていた。まだ少し眠気が残る中、顔を洗ったり、身支度を整えたりしながら、皆が少しずつ集まってくる。そして、皆で朝ごはんを食べることになった。温かいご飯を囲んでいる時間は、こうしていると何も問題なんて起きていないようにも思える。でも、頭の片隅にはまだ気になることが残っていて、完全に安心できるわけではなかった。
本当は大学になんか行きたくなかった。できることなら、今日はずっと皆と一緒にいて、これからどうするのかを考えたり、何か手伝ったりしたかった。でも——
「ちゃんと学校行きなさい」
とバロロさんに叱られ、結局は言うことを聞くしかなくなった。仕方なく、本当に仕方なく行くことになった……。正直、気持ちはまだ乗り気じゃない。学校にいる間も、何か大事なことが起きてしまわないか、皆だけで大丈夫なのか、そんなことばかり考えてしまいそうだった。そんな僕の気持ちを察しているのか、トロンプくんは明るい声で言った。
「カゲエくんとミライ・ユくんが学校に行ってる間はちゃんと僕たちが調べるからね!」
トロンプくんはそう張り切ってた。その表情を見ていると、不安な気持ちが少しだけ軽くなる気がした。皆が協力してくれるなら、きっと大丈夫だと思えた。
「うん!信用してるよ!」
そう返事をすると、皆の顔を見渡した。本当は一緒にいたい。でも、今はそれぞれができることをやるしかない。
こうして、朝は一旦分かれた。
◇
お昼休み。ミライ・ユくんとお昼ご飯を食べながらスマホを見ると、ふと着信履歴があることに気が付いた。……トロンプくんからだ!すぐさま折り返しかける。
プルルルル……ガチャリ。
「もしもし!トロンプくん、どうしたの?」
「あ!!カゲエくんっ!」
トロンプくんは興奮しているようだった。
「グリザイユくんのことなんだけどねっ!!」
「!」
スピーカーボタンを押して、ミライ・ユくんにも聞かせる。
「何か分かったのか!?」
「うん!!グリザイユくんの種族が分かったんだ!!!」
集中して電話を聞く……。
「部族名は、カグラノ族!アマゾン地帯にすむ、野性的な部族で、比較的大きな村に住んでたらしい!なんでも、五年前、村の近くの人によると、村人が全員突然姿を消したんだとか……!」
「なんだと!?」
「突然姿を消したって……グリサイユくんは、生き残りってこと?」
二人で顔を見合わせる。
「うーん、まだ詳しいことは分かってないし、この情報が正しいかも分からないんだけどね……カグラノ族は、体に黒い血液が流れてるらしくて、昔から神聖な武具を扱っていたんだって!だから、この部族なんじゃないかって話だよ!」
「なるほどなあ……」
その後もちょっと話して、電話を切る。
ミライ・ユくんと顔を合わせる。二人とも考えてることは一緒だった。
もう、午後の授業なんて受けていられなかった!
◇
珍しく車を爆走させるミライ・ユくんと一緒に、その日の学校はお昼で切り上げて帰ってきた。
家に着くなり、バロロさんの部屋へと急ぐ。
「皆!」
部屋に着くと、皆驚いた顔でこっちを見た。
「あれ……カゲエくんミライ・ユくん、学校は……?」
「そんなのどうでもいいぜ!!」
「もう、いてもたってもいられなくなって!」
すると、キアロくんとトロンプくんの二人は何か恐ろしい物でもみるような目でこっちを見てきた。
「あ……」
「……」
「いや、確かに学校サボるのって悪いことだけどさー」
「……」
「後ろ……」
?を浮かべてミライ・ユくんと一緒に振り返る。そこには……。
ブチギレた、バロロさん。
「二人とも~~~???学校はどうした~~????」
「「ひ、ヒイイィィ……!?!?」」
背景にはゴゴゴゴゴゴゴ……という文字を背負っている。口元は笑っていたが、もう、完全に激怒だった。
「ご……ごめんなさーーーい!?!?!?」
めちゃくちゃにはちゃめちゃに謝った……。
「……ハア」
バロロさんがため息をつく。
「連絡も入れないで授業をサボるとか……学校に迷惑をかけるんじゃない」
「「こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛……」」
僕たちは床に正座させられていた。バロロさんだけは絶対に怒らせてはいけない——この前学んだけど、改めて身をもって恐ろしさを思い知った。
「……グリサイユくんを、いち早く助けたくて」
ポツリポツリと話す。
「……気持ちは分かるけどね」
バロロさんは、パン!と手を合わせた。
「さて……説教タイムも終わり!今から皆で出かけるよ」
「え?」
「どこに行くんですか?」
「……カグラノ族が住んでいた村、カグラノ地帯さ。一回直接行ってみようと思ってね。現地調査ってとこかな」
「現地調査……!」
「今から着替えとか荷物をまとめてね。一泊二日で行くよ」
バロロさんは僕の方とキアロくんの方を見た。
「海に行ったときみたいに、またカゲエくんに絵画に私たちを入れてもらって、キアロくんに空を飛んでもらおうと思ってる。……二人とも、頼めるかな?」
「はい!」
「問題ない!」
即答。当たり前だった。
それから僕たちは旅行の荷物をまとめて、今回はバロロさん以外を絵画の中に入れることになった。キアロくんと、空を飛びながら方角とかを指示するらしい。
絵画の中。僕、ミライ・ユくん、トロンプくんの三人。今回は言った絵画は、海の絵画。サーッという海の音が響き渡って、潮風が心地いい。
「おお~!きれ~!」
「海は久しぶりだなっ!」
二人は盛り上がっていた。なんせ海の絶景を描いた絵の中だから、もう息をのむほどの美しさだった。海は青を描き、空を鏡写しにしている。でも、僕はあまり盛り上がれなかった。
「(砂浜で休んでいるときに、グリザイユくんも来てくれたんだよね)」
グリザイユくんのことばかり考えていた。
「(それから刀の手入れを僕も手伝って……楽しかったな)」
「……気持ちは分かるよ」
僕の暗い雰囲気を察知したミライ・ユくんがそう言う。
「でも、今はこの休暇を楽しもうぜ!あくまで旅行だし!」
「そうそう~!明るくいこっ!」
「二人とも……うん!そうだね、楽しく行こうっ!」
何より、二人が元気づけてくれたことが嬉しかった。こうして、バロロさんが呼んでくれるまで、僕たちは浜辺で休憩したのだった。




