第十四章 新たな繋がり
そして。
その日はキアロくんに家まで送ってもらった。空を飛んで帰るという、普段なら絶対に経験できないような帰り道。少しだけ目立ってしまったけど、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
だって。キアロくんが僕たちのために来てくれたことが。すごく嬉しかったから。家に着いてからは。皆で仲良く晩御飯を食べた。グリザイユくんとバロロさんはいないけれど。それでも。僕たちはいつも通り笑っていた。ご飯を食べて。明日の準備をして。そして。いつものように眠りについた。
——そして翌日。
僕とミライ・ユくんが教室に入り。席についた瞬間だった。
ドドドド……。
なぜか、大勢の人が僕たちの周りに集まってきた。
「ねえ!昨日の羽の人、何者なのー!?」
「あの人とはどういう関係なのっ!?」
「ただの知り合いじゃなさそうだったぜ!」
「「!?」」
突然の質問攻め。あまりにも勢いがすごくて。僕は完全に圧倒されてしまった。
「え、えっと……」
どう答えればいいんだろう。困っていると。
隣のミライ・ユくんが口を開いた。
「あ……まあ、友達って感じかな」
そして。ちらりと僕を見る。その視線の意味は分かった。どう答える?僕は少し考えて。
「うん!友達……だよ!」
そう答えた。
すると。
「ふーん?てかさ、カゲエくん?だっけ!」
「えっ、僕?」
突然名前を呼ばれて驚く。
「そうだけど……」
すると。女の子がスマホを取り出した。
「よかったらカゲエくんも、ルンスタ交換しない?」
「!」
スマホを差し出される。
一瞬。戸惑った。だって。こんな風に誰かから話しかけてもらうことなんて。あまりなかったから。でも。
断る理由なんてなかった。
「!ぼ、僕でいいなら……!全然……!」
慌ててスマホを出す。
ミライ・ユくんに言われて、一応入れておいたルンスタ。
最初は。
本当に少なかった。
フォロワーの数は。
全部で五人。
ミライ・ユくん。グリザイユくん。キアロくん。トロンプくん。バロロさん。
僕にとって。
大切な人たちだけ。
それだけだった。
でも。今。その数字が。少しだけ増える。
「私、ミナ!今まであんまり喋んなかったけど、これからよかったら話そー!」
「あ……うん!ミナちゃん、よろしくねっ!」
新しい名前。新しい繋がり。それだけのことなのかもしれない。でも。僕には。すごく大きなことだった。すると。それを見ていた他の人たちも。
「あ!私とも交換しよー!」
「俺も俺も!おい、お前ら集まれー!」
ルトくん(あとで教えてもらった)が声をかける。すると。次々にクラスの皆が集まってくる。気付けば。皆とルンスタを交換していた。
「わあ……!」
画面を見る。
増えていく名前。増えていく繋がり。この行為には。もしかしたら、たいして深い意味はないのかもしれない。ただ。連絡先を交換しただけ。ただ。同じクラスだから仲良くしただけ。でも。僕にとっては。ずっと欲しかったものだった。
「……皆、よろしくね……!」
少し照れながら言う。
すると。
「「「うん!」」」
皆は。優しく答えてくれた。
「カゲエくんって、優しい声してるよねー!」
「え!そ、そうかな?ありがとう……?」
急に褒められて。思わず驚く。でも。嫌じゃなかった。むしろ。胸の奥が少し温かくなった。あははは……。皆が優しく笑う。
その様子を。ミライ・ユくんは隣で見つめていた。優しいため息をつきながら。そして。少しだけ。嫉妬も混ぜながら。
「(ふんっ、カゲエくんの魅力を一番よく知ってるのは俺なんだからなッ!!)」
そんなことを思っていた。
でも。その言葉が発せられることは。なかったのだった。
◇
お昼休み。
午前中、クラスの皆とたくさん話した。ルンスタも交換した。今までとは違う、新しい時間。少しだけ。世界が広がったような気がした。でも。やっぱり。この時間だけは。僕とミライ・ユくん二人きりの時間だった。それは。僕にとっても。ミライ・ユくんにとっても。大切な時間だった。
「じゃ、空き教室探そっか!」
いつものように声をかける。人が少ない場所で。ゆっくりお昼を食べる。それが僕たちの日常だった。……なのに。
「……ん」
ミライ・ユくんの返事は。
少しだけ冷たかった。
「?」
違和感を覚える。いつもなら。
「おう!」
とか。
「早く行こうぜ!」
とか。もっと明るく返してくれるのに。
今日は。
なんだか様子がおかしい。僕はミライ・ユくんの顔を覗き込む。
「……?」
どうしたんだろう。そう思って見ていると。ミライ・ユくんは。プイ、と反対方向を向いた。
「あれ……?」
避けられた……?思わず戸惑う。
「えっと……どうしたの?」
聞いてみる。でも。
「別にーー??」
返ってきた言葉は。
明らかに何かある時の返事だった。
「……」
僕は考える。何かしただろうか。怒らせるようなこと。言ったかな。したかな。でも。全然思い浮かばない。むしろ。今日は嬉しいことばかりだった。皆と仲良くなれたこと。話しかけてもらえたこと。それを。ミライ・ユくんも喜んでくれていると思っていた。
……でも。
「ミライ・ユくん……ちょっと怒ってる?」
恐る恐る聞く。
すると。
「別にーー??」
また同じ返事。
うう……。
やっぱり何かある。
僕は困った顔でミライ・ユくんを見る。そんな僕をよそに。ミライ・ユくんは窓の外を見る。その表情は。いつもの明るい笑顔じゃなかった。そして。そんな空気の中。突然。携帯電話が鳴った。
ピロロロロ……。
二人とも。
同時にそちらを見る。誰からだろう。このタイミングで鳴るなんて。少しだけ。嫌な予感がした。




