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世界樹の治療 ~土壌の再生~

1. 【開墾】神のクワ


「まずは、このコンクリートみたいに固まった土を砕く!」


俺は【万能農具】を振りかぶった。 狙うは、世界樹の根元。白く乾ききった、死の大地だ。


ガァァァァン!!


凄まじい金属音が響いた。普通のクワなら一撃で折れていただろう。 だが、俺の相棒は違った。刃は硬化した地面に深々と突き刺さり、ヒビを入れた。


「……いける!」


俺は渾身の力で土を掘り返した。 ザクッ、ザクッ! 一振りするたびに、死んでいた土が悲鳴を上げ、空気を吸い込んでいく。


2. 土に命を吹き込め


だが、耕すだけでは不十分だ。 この土は、高濃度の魔力漬けにされたせいで、土の中の「微生物」が死滅し、ただの「魔力の塊」になっている。これでは根が呼吸できず、腐る一方だ。


「エリシアさん、森中から『落ち葉』を集めてきてください。腐りかけの、黒くなっているものがベストだ!」 「は、はい! ……でも、栄養過多なのでは?」


「違う! 栄養を足すんじゃない。『土の構造』を変えるんだ!」


俺は説明した。 「今の土は、魔力でギチギチに詰まって息ができない状態だ。そこに『腐葉土(繊維質)』を混ぜて隙間を作る。さらに、ポン太!」


「はいです!」 「ドラゴンの住処から『糞』を持ってきてくれ。ただし、完全に発酵してサラサラになったやつだ!」


「ええっ!? ド、ドラゴンの糞ですか!?」 神官たちが悲鳴を上げる。


「そうだ。発酵した堆肥には、大量の『微生物』が住んでいる。彼らが、この土に溜まりすぎた魔力を分解して、世界樹が吸収できる形に変えてくれるんだ!」


3.中和剤としての堆肥


俺の意図を理解したエリシアが動いた。 「わかりました。……過剰な魔力を中和し、循環させるための『媒体』を入れるのですね」


数時間後。 世界樹の周りには、大量の腐葉土と、ポン太が決死の覚悟で回収してきた(完全に土化した)ドラゴン堆肥、そして俺の家のコンポストから持ってきた「完熟堆肥」が山積みになっていた。


「よし、これを混ぜ合わせる!」


俺は【万能農具】を巨大なフォークに変形させ、山を撹拌した。 さらに魔力を流し込む。 スキル**【生活魔法:熟成タイム・アクセラレーション】**発動!


ボワァァァ……


山が発熱し、湯気を上げる。 鼻をつく臭いはなく、あるのは森の奥深くのような、芳醇で温かい土の香りだ。 これで、過剰な魔力をスポンジのように吸い取ってくれる**『特製土壌改良材』**の完成だ。


4. 泥だらけの王女


「これを根元に撒いて、固い土と混ぜ合わせるんだ! 全員でやるぞ!」


俺が叫ぶと、真っ先に飛び込んだのはシルフィだった。 「よいしょぉぉ!」 彼女は手で堆肥を掴み、耕した土に混ぜ込んでいく。綺麗なドレスが泥で汚れるのも構わない。


「ピコもやるー!」 妖精が鱗粉を撒き散らしながら飛び回る。


「……私たちも、行きますわよ」 エリシアがドレスの裾を縛り、ヒールを脱ぎ捨てた。 「ええっ、王女様!?」 「世界を救うのです。汚れなど気にしていられません!」


高貴なハイエルフたちが、素足で土を踏みしめ、泥にまみれて作業をする。 その光景は、どんな魔法の儀式よりも力強く、美しかった。


5. 命のリレー


土は蘇った。 カチカチだった地面は、堆肥が混ざったことで黒く潤い、フカフカのベッドのようになった。 これなら根も呼吸できるし、過剰な魔力も微生物が処理してくれる。


「仕上げだ」


俺は「世界樹の苗木」を鉢から取り出した。 そして、古き世界樹の太い根の一部を削り、そこに苗木を差し込んだ。 **『接ぎ木』**だ。 古い命を土台にして、新しい命を繋ぐ。


「頼むぞ……育て!!」


俺は【万能農具】を『じょうろ』に変え、たっぷりと水を注いだ。


6. 鼓動


水が吸い込まれていく。 全員が固唾を飲んで見守る中、一瞬の静寂が訪れた。


ドクン……


地面から、心臓の鼓動のような振動が伝わってきた。


「……見て!」 シルフィが空を指差す。


枯れ木同然だった世界樹の枝先が、淡い緑色に輝き始めた。 そして、接ぎ木した苗木から爆発的な勢いで光が広がり、幹全体を駆け上がっていく。


「成功……ですか?」 エリシアが泥だらけの顔で、呆然と呟いた。


「いや、まだだ。……これから実がなるぞ」 俺は直感で悟った。 土が良くなりすぎた。……これだけの魔力を吸い上げれば、とんでもない「収穫」が始まると。

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