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召喚の真実 ~システムの声~

1. 【到着】灰色の聖地


飛竜の背から見下ろした「ハイエルフの都」は、かつての栄華を思わせる白亜の建造物が立ち並んでいた。 しかし、その中心に聳え立つ巨木――**「世界樹」**は、見るも無惨な姿だった。


葉は全て落ち、幹は白く乾燥し、まるで巨大な魚の骨のようだ。 都全体が、色を失ったモノクロ写真のように沈んでいる。


「……酷い。こんなになるまで」 シルフィが口元を押さえる。


俺たちは根元に降り立った。 地面はカチカチに固まり、ひび割れている。雑草一本生えていない。


2. 【診断】魔力という名の毒


「私たちは、毎日交代で最高位の回復魔法をかけています。それなのに……」 エリシアが悔しそうに拳を握る。


俺はしゃがみ込み、白い土を手に取った。 パサパサで、砂のように指の間からこぼれ落ちる。


「……やっぱりだ。これは『栄養失調』じゃない。『肥料焼け』だ」


「ひりょう……やけ?」


「木が弱っているのに、無理やり高濃度の魔力(栄養剤)を与えすぎたんだ。土の中の微生物が死滅して、根っこが窒息してる」


俺は【万能農具】をクワに変え、地面を軽く叩いた。 カァン! 金属音。土が岩のように硬化している。これでは水も空気も通らない。


3. 【接触】光の中へ


その時、俺が持っていた「世界樹の苗木(鉢植え)」が強く輝き出した。 呼応するように、枯れた巨木の根元からも淡い光が漏れ出す。


「カイト……? 体が光ってるわよ!?」 シルフィの声が遠のく。


視界が真っ白に染まった。 気がつくと、俺はどこまでも広がる「金色の麦畑」の中に立っていた。


『……待っていましたよ。土を愛する人』


麦の穂を撫でながら、一人の女性が歩いてきた。 素朴な麻の服を着た、どこにでもいそうな村娘のような姿。 だが、その存在感は、この世界そのもののように大きく、懐かしい。


4. 【対話】脳内に響く感覚


「あなたは……?」


俺は彼女を見て、既視感を覚えた。 姿を見たことはない。声を聞いた覚えもない。 けれど、この感覚を知っている。


この世界に来た瞬間、脳内に直接響いた「ステータス画面」の感覚。 そして、「ここならやっていける」と告げた**「直感」**の正体。


「……俺に【万能農具】の使い方を教えてくれたのは、あなたか」


『はい。あの時は衰弱しすぎていて、言葉を交わすこともできませんでした。だから「システム」という形を借りて、あなたの脳に直接干渉するしかなかったのです』


彼女は微笑んだ。この星の意志――世界樹の精霊だ。


『この世界は疲れ切っていました。人々は「魔法」という安易な力に頼り、大地から搾取するばかり。英雄たちは剣を振るい、敵を倒しましたが、荒れた土地を治すことはしませんでした』


彼女は俺の目の前に立った。


『私は「戦う力」を求めませんでした。敵を倒す勇者も、真理を解く賢者も、もういらない。……私が欲しかったのは、ただひたすらに土を耕し、種を撒き、命を育んでくれる魂』


5. 【真実】万能農具の正体


彼女の手が、俺の【万能農具】に触れた。


『だから、あなたを選びました。日本の片隅で、ただ土と作物を愛していたあなたを』


『その農具は、武器ではありません。星そのものを耕すための「神のくわ」。……どうか、世界樹を「畑」にしてください。あなたのやり方で』


俺の手の中で、農具が微かに震えた。 第1話で初めてこれを握った時、「頼もしさ」を感じた理由がようやくわかった。 これは最初から、このために用意されていたのだ。


6. 【覚醒】農家の仕事


「……わかった。任せてくれ」


俺は力強く頷いた。 戦うんじゃない。育てるんだ。それなら俺の専門分野だ。


『頼みましたよ、異世界の農家さん』


光が弾けた。 俺は現実世界に戻ってきた。 心配そうに覗き込むシルフィ、エリシア、ピコ、ポン太の顔がある。


「カイト! 大丈夫!?」 「ああ。……やるべきことがわかった」


俺はクワを担ぎ直し、カチカチに固まった大地を見据えた。


「エリシアさん。回復魔法は中止だ。神官たち全員に伝えてくれ」 「えっ? し、しかし!」


「これからここを『畑』にする。……世界一巨大で、世界一わがままな作物を育てるんだ」


俺はニヤリと笑った。 かつてない大仕事だ。だが、腕が鳴る。


「みんな、手伝ってくれ。泥だらけになってもらうぞ!」


「望むところよ!」 シルフィが袖をまくった。


こうして、世界を救うための「前代未聞の農作業」が始まろうとしていた。

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