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街頭の大時計
この町の街頭にはとても大きな時計がある。緑青を纏ったその意匠は百数十年の年月をこの町と共に刻んだ歴史を感じさせるものだった。定期的な点検により、今も時を刻み続けるこの時計は待ち合わせの場所としてもとても人気があった。
「大時計の真下にいる。」
それはこれまでも多くの恋人たちにとっての合言葉になっていた。それはこの先も続く伝統に思われていた。
その日はとても穏やかで、それでも日が差すと少し暑さを感じるくらいだった。今日も数組のカップルが待ち合わせをし、そんな恋人たちの真上で正午を告げる鐘の音が厳かに鳴り響く。それは点検が甘かった結果であろうか、それとも点検ですら気付けない小さなひびの蓄積だろうか。鐘の音が鳴りやむ頃、人の背丈ほどはある短針が根元から折れた。
「大時計の真下にいる。」
それは合言葉であると同時に「誰かしらは、真下にいる。」と言う意味でもあった。




