戦士の手記
このダンジョン攻略は「冒険」というより「訓練」の延長だった。俺たち四人はギルドホールで息が合い、話の流れでパーティーを組んだどこにでもいる集まりだ。メンバーの構成も戦士、弓使い、魔法使い、ヒーラーという特筆することのないありふれた構成だ。
このダンジョンは入るたびに構造が変わる不思議なダンジョンで、それでもモンスターの構成はそこまでバラツキがないため、結成したてのパーティーから少々腕が立つようになったパーティーまでに薦められる人気のスポットだ。今日も潜る前に「うまく攻略出来たら、次はもう少し難しい所に潜ろう」なんて話もした。そう、これも通過点のはずだった。
最初の綻びはこちらに向けられた一本の矢だった。慢心もあったかもしれない。あるいは構えた盾がほんの少しずれていたか、あるいは立ち位置が半歩ずれていたか。敵の放った矢は真っ直ぐヒーラーに吸い込まれていった。それでもヒーラーは冷静に矢を引き抜き自身に回復魔法をかけた。それで事は収まったはずだった。しかし矢に塗られた毒は思いの外強く、気づかぬうちにその体を内側から蝕んでいた。気づいた時には手遅れで、いくら回復魔法をかけても穴のあいた風船を膨らませるようにかけた端から生命力が抜けていく。やがて魔力を使い果たしたヒーラーはその場に倒れた。
ヒーラーを失ったパーティーが崩壊するのは早かった。魔法使いが昔覚えた初級の回復魔法で凌いでいたがそれでも受けたダメージには見合わず、皆一様にボロボロになっていた。やがて、攻撃魔法に回していた魔力まで使い果たした魔法使いが倒れた。回復を失ったパーティーに残されたのは撤退か全滅だ。しかし村に戻るにはいささか深く潜りすぎたようだ。先ほど後方で弓使いが倒れる音がした。
もしこれを読んでいる者がいたらこれだけは伝えておく。
「回復役は何としても守れ。もしくは万が一に備えて薬草は持っておけ。」
どうやら、俺もまたもう間もなく皆の元に行くことになりそうだ……
ダンジョン中階に落ちていた『戦士の手記』より




