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霧越しの別府湾
それは秋の早朝のこと。私は、霧の向こうの別府湾をぼんやりと眺めていた。イヤホンからはクラシック音楽が聞こえてくる。ドビュッシーの『前奏曲集 第一集』第10曲。あの曲のタイトルは確か……。
旋律が少しずつ強くなる。と、霧の絶え間からあるはずのない木々の梢が一つ二つと現れてくる。旋律が強まるにつれ、その全容があらわになる。とても古い町並み。そのどれもが既に廃れていたが、「確かに存在した」と言わんばかりに並んでいた。旋律がまた弱まっていく。町並みはまた海へ滑っていく。またとても静かな旋律に戻ると、見慣れた穏やかな別府湾に戻っていた。それでも微かに聞こえる旋律は、まだそこに名残があるようだった。あぁ、そうか。あのタイトルは確か……。




