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第69話 優勝者


クラン対エドワード戦初動、クランが先手を打った。

宝剣ルークスを鞘から抜いた瞬間、エドワードに向かって斬撃が飛んでいく。

居合術、抜刀と呼ばれる技術。

斬撃は残像を生み出すほどのパワー。


エドワードはその斬撃を滑らせるように長剣で受け流す。

クランの放った斬撃の軌道が逸れて上空へと駆け上がっていく。


クランは再度続けざまに斬撃を放つが、エドワードは走りながら受け流す。

エドワードの対戦は最初から最後まで見ていたが、よほど剣術の知識、加えて腕があると見える。


エドワードはタンっと地面を蹴り上げると上空に向かって複数の斬撃を放った。

そしてエドワードが地面に着地するな否や、上空にある斬撃は向きを変え地上へと落ちる。


まるで斬撃の雨。

その斬撃の雨をクランは宝剣ルークスで防ぎは避けるが、一方でエドワードは立っているだけで避けもしない。

いや、斬撃の雨がエドワードだけを逸れている。

自分の放った斬撃の雨の軌道を読んでいるのか。


エドワードは休ませまいと地上からも斬撃を放つ。


空と地からの挟み撃ち。


上空から落ちて来る斬撃と地上を疾る斬撃がぶつかり合い、周辺が見えなくなる。


「クラン選手!! 斬撃の嵐に為す術なしか~!?」


エドワードはその様子を待っているのか、長剣を構える。



その時だった。


煙で見えなくなっていた辺りからバトルフィールドを照らすほどの眩しい光が放たれた。

それと同時に降る斬撃の雨も跡形もなく消え去った。


「眩しい! 眩し過ぎる!! これは一体何ごとなんだ~!?」


バトルフィールド一体はまだ光で包まれている。


そして薄っすら見えるエドワードから斬られたと思われる血しぶきがあがった。


エドワードは地面に膝を落とし痛むであろう箇所を押さえ、光源の方に顔を向ける。


光が収束していくと宝剣ルークスを構えたクランの姿。

クランは容赦なく斬撃を放ったのだ。

その斬撃は初動こそ見えたものの、直ぐに見えなくなったかと思うと、斬撃音と共にエドワードが大きく後退。

さらに斬撃音が響くとエドワードは弾け飛ぶように空を舞った。


宝剣ル-クスを鞘へ収めてしまうクラン。

地面に倒れ込むエドワードは動くことも出来ないようだ。

審査員のエドワードの旗がクランに上がった。


「クラン選手! あっという間にエドワード選手を倒してしまった~!! 魔物撲滅本部勇者、何たる圧倒的力!! 次の最終決戦にも期待大です!! 負けてしまったエドワード選手も見事な戦いっぷりでした!! 皆皆さま! 盛大な拍手を!!」


観客席から割れるほどの拍手が送られる。


俺の最終決戦の相手はやはりクランか。

見えない斬撃の脅威。未だに地面に横たわるエドワードはわけもわからない間の出来事だっただろう。


その後、休憩をとることも可能なようだったが、クランはそのまま連戦でも構わないとディズに言っている。





そうしていよいよ、テクニック・ザ・トーナメントの最終決戦が始まろうとしている。


「皆様お待たせしました!! 本日、大いに盛り上がりを見せた本大会もクライマックスとなります!! そして最終決戦に挑むのは、魔物撲滅本部から来た宝剣を使う勇者クラン選手と、大会初出場ながらここまで勝ち上がって来たシン選手となります! この勝負を制した者が優勝です!!」


観客席から盛大な拍手と俺たちを応援する声。

どちらも勝て、どちらも負けるな。そう言った声があちらこちらから聞こえて来る。


「お互いいい勝負をしよう」


バトルフィールドへ向かう前、クランがそう言って来た。


「ああ」


そして俺とクランはバトルフィールドへと向かう。

俺とクラン、どちらか勝った方が大会優勝賞品となった宝剣アスティオンを手にすることになる。

初めはアスティオンにこだわる必要はないとそう思っていた時もあったが、やはり俺の剣はアスティオンしかない。

今持っているラフマの剣。たった5日ばかり振るっただけでも分かる。これは俺の剣ではないと。

何処ぞにいる持ち主でも探しているのだろうか。

大会が始まってからずっと俺の魔力を吸うペースが上がっている気がする。

鞘に収めている時は魔力は吸われないが、俺が試合中の時は微量ずつだが魔力を食らう。


蛇をモチーフにした剣なんて、余程悪趣味な刀鍛冶なのだろう。

第3の剣、ラフマの剣。宝剣を持つ勇者を相手にしてどこまで戦えるのか。


俺とクランが定位置に着くと、審査員のセリオーザが鐘を鳴らす者に合図を送る。

その者は頷き、そして試合開始の鐘が鳴った。

大会会場がしんと静まり返った中、クランが宝剣ルークスを鞘から抜いた。

俺は試合開始の鐘が鳴ると同時に既にラフマの剣を抜いている。


「君はよくここまで勝ち抜いて来たよ。僕が見ていた限り、相当な手練れも中にはいた。それでも君が僕の前にこうして現れたことは、もしかしたら決まっていたのかも知れない」


そう言うと、クランは目を瞑る。


「何ふさげたことを……この勝負、俺が勝たせてもらう!」


初めから手なんて抜かない。今まで見てきたクランはまだまだ本気を出していない感じしかしなかった。

それでも俺が初めから大技を繰り出したのは、その本気を出す前に倒したかったからだ。


唸る斬撃ーー撃技+6の乗った斬撃波は色濃く、蛇が龍を喰らうかの如く疾っていく。

地面に斬り傷をつけながら斬撃波はさらにうねりをあげる。

鞘の上部に装飾された玉に向かって3匹の蛇が登るようにーー文字通り、玉を喰らうかのように斬撃は勢いを落とさない。


クランに直撃する、そう思った時だった。


「な、なんと!! シン選手の斬撃がいとも簡単に斬られてしまった~!! いかにも凄そうな斬撃もクラン選手には通じない~!!」


俺の放った斬撃波はクランの宝剣ルークスによって一刀両断されてしまった。

普通、飛ぶ斬撃を放ち何らかの障害物で阻まられても余韻は残るもの。だが、俺の斬撃波は宝剣ルークスよって一瞬で消え去った。


クランは間違いなく今回の大会で1番の強敵。魔物撲滅本部にいる人間は与えられた勇者ランクより2、3上だと聞いていたが、実践で感じる強さは桁違い。

そもそも、既に宝剣を持っているクランが何故この大会に参加したのか疑問だ。


「いいね。正しく敵を斬る斬撃。だけど、そんな物騒な斬撃、人間に放っちゃあ駄目だろう?」


その余裕たっぷりで言う感じが苛立ちを募らせる。

が、ここは冷静になってクランとの力の差を再認識する。


「いいさ、どうせ斬られない自信があるんだろう? ーーだから」


技とは、使用者本人に対して身体能力を一時的に上昇させるものではあるが、飛ぶ斬撃に対してももちろん影響する。

ただし、飛ぶ斬撃に影響するのは撃技のみ。速技と守技を影響させることは出来ない。


俺は撃技+6を解放して斬撃波をクランに放った。

速技によって加速しながら放った斬撃波は衝撃波を発生させ、斬撃波から左右の地面が荒く吹き飛んだ。



しかし、またも宝剣ルークスによって斬られてしまった。


「……これは」


宝剣ルークスだからじゃない。俺の斬撃波が2度も阻まれたのは、紛れもなくクランの力。

宝剣が保有者に対して与えるのは魔物を斬ることに長けた力のみ。

人間対人間の戦いにおいては希少な剣と言う名のただの剣に過ぎない。


ただし2度目は1度目に阻まれた時とは違うエフェクトがあった。

俺の斬撃波が斬られた瞬間に空高くまで登った鋭い光。音も一度目より何倍も鋭い。


「へぇ……君、なかなかやるんだね。今のは僕も能力を使わないと防げない感じがしたよ」


クランが1度目も2度目も撃技を使ったのかは分からない。

クランほどの勇者ともなると技のコントロールくらい容易く出来るだろう。

正直な話、もし撃技を使っていなかったとするならこの先の戦いは厳しいかもしれない。

連続して撃技+6の使用、加えて速技+6の使用。

こう何度も使っていれば身体能力も万全ではなくなってくる。早々に決着をつけたいが為に高いプラス値の技を使ったが、今の身体能力は若干低下しつつある。


「気になるな。どんな能力なんだ?」


「知りたいかい? いいだろう、教えてあげよう。ーー僕の能力は“光化”。僕の生み出すあらゆる物理攻撃を光と化す。光と化した物理攻撃の威力は数倍にも跳ね上がる上、スピードも増す」


「技要らず、か」


何て反則級の能力があったものだ。

技と同一のパワーアップではないとしても近い上、技のように体力の消耗がない。クランを見ている限り、そう感じざるを得ない。


「場合によるね。さあ、行くよ!」


クランが走り出した。

俺の得意とする接近戦。クランの行動は申し分ないのだが、“光化”、その能力がまだ得体が知れない。


ラフマの剣と宝剣ルークスが衝突し鉄音を響かせる。

宝剣ルークスに滑らせるようにクランの懐に入っていくが、意外にも強い力で斬り合いになる。

宝剣ルークスの方がリーチが長い分やりづらい。

だが、接近戦に持ち込んでくれたおかげで勝算が出てきた。


「やるね。だけど焦りは禁物。光の力は近距離でこそ発揮される」


気付いた瞬間だった。

両目を潰されるほどの光がクランの手から発生した。

瞬間、俺はクランの居場所を見失い……斬られた。

深く鋭い一閃。普通の剣の感触ではなかった。不思議な斬り。痛くはなかったが身体が言うことを聞かない。


接近戦に持ち込んでくれたおかげで勝算が出てきたなんて、思い上がりもいいところだった。


光が収束していくと倒れる俺の前にクランがいた。

宝剣ルークスを静かに背中の鞘にしまうクラン。


審査員のセリオーザの旗がクランにあがってしまった。


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