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第70話 交換


宝剣ルークスによって斬られた箇所はさほど血が流れていなかった。


クラン曰く、“光化”の能力を纏った斬撃は攻撃力こそ増すものの、身体表面へのダメージはほぼ抑えられるという。

光は身体表面を突き抜け身体内部まで行き届く。

身体の内に臓器が損傷したということもない。

ただし、俺が魔物であればそうはいかなかった。

魔物の本質は闇。光と相反する闇の属性を持つ魔物はダメ-ジを抑えられるどころかむしろ倍増するとクランは言う。

宝剣ルークスがどのような魔物特効特性を持っているのかは定かではないが、“光化”によって付与された斬撃は想像を凌駕する力だろう。



そして、大会賞品となっていた宝剣アスティオンは優勝者であるクランに渡された。

宝剣を2つ持つ勇者の誕生は異例なことだそうだ。


ディズが対戦した参加者たちの雄姿を振り返り、特別ゲストのセシリアが参加者たちに称賛の言葉を送っていた。


間も無くしてテクニック・ザ・ト-ナメントの会場は閉鎖することになり、ギャラリーたちも帰って行く。


「お疲れ様!」


「お疲れお疲れ~!」


久々に見た顔はいつしか俺にとっての居場所となりつつあった。


「アスティオンは取り返せなかったけどな」


「まあまあ、確かにそうだけど宝剣がないと目的は果たせないってわけでもないでしょ? その分、鍛える必要は出るかもしれないけど、いいじゃない別に」


メアがそうポジティブ思考で言う隣でセシルがシャドーボクシングをやっている。


「……そうだな。セシル、今度俺の相手をまたしてくれるか?」


「おけ-!」


セシルは小さく人差し指と親指を合わせて、OKサインをする。


その後、日が傾いて来ている西の通りを歩いて行った。





夕食はこじんまりとした民家風のカフェレストランですることになった。


チキンのバジルチーズ焼き、具材をライスに包んで揚げたライスコロッケ。

鶏モモ肉、白ワイン、オリ-ブオイルに塩と胡椒で味付けしたシンプルな料理チキンフリカッセ。

牛肉、タマネギ、パプリカ、ジャガイモから作られる、トマトソースをベ-スに味付けされたグヤ-シュというシチューの一種。

牛肉、タマネギ、マッシュルームなどを炒めた上でサワ-クリ-ムを仕上げに使用したビ-フストロガノフ。

揚げたてのライスコロッケと良くマッチしている。


店内の天井で回るプロペラが優雅な気分を醸し出す。

そんな店内の様子を楽しみながら食事をしていると店内に入って来るお客もちらほら。

どうやら常連客もいるようなお店らしい。

セシルは大会に出ていた俺よりも食事が進んでいる。

そして食べ物を詰まらせたようで、メアはセシルの背中を叩く。


戦いの場では戦士の顔を見せるセシルも、こうして食事をする様子はまだまだ子供。

メアは最近になってきて随分大人びた雰囲気がして来た。

セシルが来て世話や行動をして母性本能でも刺激されたのだろうか。

体力面でも戦闘面でも優秀なセシル。

ギルドサル-フで受けた魔物討伐依頼も難なくこなしていた。


そんなセシルはまだ子供。

獣人は大人になるにつれて力もスピードも増すというから面白くなりそうだ。


俺がセシルを見ながらそんな風に考えているとふと顔を上げて見る。

にこりと笑い、また食事を続け始める。


「メア、明日の朝バタリアを出発する」


「ええ、分かったわ。もう、早く出発したくてうずうずしてたから!」


「セシルもー!」


片方の手を上げてそう言うセシル。


その後、泊まっている宿屋に戻ると正面玄関前に見慣れた顔があった。


「あなたは……」


「これはお美しいお嬢さん、彼のお知り合い?」


「俺の旅に付いて来てるんだよ」


「そうなんだ。そこの子もかい?」


セシルはメアの背後に隠れる。

観客席からずっと見ていたのだ、何か感じるものがあるのだろう。


「俺に用だろう? 何だ?」


「これを、渡そうと思ってね」


そう言って渡されたのは紛れもなく宝剣アスティオン。


「どういうことだ?」


「僕には必要のないものだからね。宝剣なんて一本で十分なのさ。欲張って扱える代物じゃないことくらい僕は知っている。だから、君に渡すのさ」


「……礼は言わない」


「もうっ! シンったら!」


手に持った瞬間のアスティオンは、俺の身体に共鳴するかのように感じた。

ラフマの剣がまるでおもちゃに見えるほどだ。


「真なる持ち主が使うからこそ、武器はその力を貸してくれる。その宝剣は、間違いなく君のものだ」


「言われなくてもな」


言葉では言わないものの、クランには感謝しかなかった。

久しぶりに持つアスティオンはやはりラフマの剣とは比べ物にならないほどしっくりくる。


そして、腰元に掛けてあるラフマの剣。

俺は二刀流なんて柄じゃない。まあ、使えないことはないから、役に立たないということもない。


「わわっ!? 何!? シンも!?」


メアが驚いた様子で後退りする。


クランが宝剣ルークスを鞘から抜いて突き出すと、俺もアスティオンを突き出した。


「君の希望だ、宝剣の特性を解除しよう」


宝剣ルークスと宝剣アスティオンが交わると赤く発光した光が青くなっていき消えた。


「ーーこれで、もうアスティオンの特性は使えないんだな」


「そういうことになる。ああそれと、代わりにってわけじゃないけど、その腰元の剣を僕に渡してくれないかい?」


「これを? 別に構わないが」


ラフマの剣をクランに渡した。


「……物騒な剣だ。これは本来使うべきではないものかもしれない。我々、魔物撲滅本部が管理しよう。また、何処かで会うことになったその時は宜しく頼むよ」


そう言い残して、宝剣ルークスを持つ勇者クランは行ってしまった。


その後宿屋へ入り、翌日出発の為の準備を済ませて1日の疲れを取るべく床に就いた。


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