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第67話 重力を制す者


「いよいよこのテクニック・ザ・トーナメントも終わりが近づいて参りました! 残る選手は4人……シン選手、クラン選手、勢いに乗るに乗っているエドワード選手、そして今しがた戦い終わったグレイス選手。この4人の中から優勝者が決定しまああす!!」


漸くここまで来たか。


エドワードは恐らく問題なく勝てそうなのだが、問題はクランとグレイス。

グレイスのスキルは先程のローグとの対戦で見た限り、重力を操るようなスキル。

その上、あの巨大な剣を振り回されればたまったものではない。

クランはまだはっきりとした力が分かっていない以上、どう対処するか実際に対戦してみるまで分からない。

そして今、俺を含めた4人の対戦相手はまだ決まってはいない。


その間、暫しの休息時間となった。




「お待たせしました! それでは! 公平なランダムによって決まった対戦者を発表しましょう! 1組目は……シン選手、グレイス選手! そして2組目はクラン選手、エドワード選手となります!」


グレイスと当たったか。


グレイスが腕組みをしながら自信満々な様子で俺を見た。


暫く、格上の相手と戦った記憶がない。

それはそうだ。勇者である俺の相手は基本魔物しかいない。同じ人間の相手は街や村でいざこざに巻き込まれる程度。それも外傷を与えられたほど大きなものは今までない。


……ただ、今回ばかりはそうもいかないかも知れない。


庭園で現れたタイガーラビットをいとも簡単に討伐したグレイス。

タイガーラビットのレベルは平均しても70代と高い魔物。

俺と同じランク7の勇者。

加えて、重力を操るようなスキルも持っている大剣使い。

対する俺は5日前に手に入れたラフマの剣を使う勇者。


「まあ、戦い方次第だな」


後先考えても仕方がない。

仮にグレイスのスキルが重力を操るものであっても、この世に無敵スキルなんてものは存在しない。


「さああああ!! 本大会もラストスパートまで駆け上がりましょう!! 1組目、各対戦者、前へ!」


わああっと歓声が上がるテクニック・ザ・トーナメントの会場。

天気は変わらず快晴。射す太陽の光を力に変えるかの如く、俺は拳に力を入れてバトルフィールドへと歩みを向かわせた。


この対戦でグレイスに勝った後、もう1勝すれば俺の手元にアスティオンは戻る。

その対戦はクランかエドワードか……どちらにしても、まずはグレイスに勝つことだけを考えよう。


深く深呼吸し、大剣を抜いたグレイスと見合わせた。


「ああ~、連戦なんてついてねえな」


そう言ってグレイスは首を左右に動かして音を鳴らす。


「よく言う。そんな風には見えないけどな」


言葉と表情が噛み合っていなかったからそう言った。



「ーーああそうだ、そうだ。俺は楽しみにしてたんだ」


「楽しみ?」


「庭園で会った時から面白い奴がいると……誰が好き好んで食人植物が湧く森に来る? たとえそれがギルドからの討伐依頼だったとしても、食人植物が沸けば、そいつらを食う奴も現れる。聞いたことなかったか?」


食人植物は人を食う。だが、その食人植物を好物とする魔物がいることも知っていた。

その魔物の名はイエロセルペント。鉄の剣さえも通らない肉厚の皮膚を持つ大蛇で勇者殺しの魔物と悪名高い。

ブルッフラのギルド、リベルタで討伐依頼が出ていた魔物だ。


「ある……だが、出れば出たでその時だ」


「……お気楽だな。まあ嫌いじゃないがな、そういう考え方も。ーーただ、この戦いでその考えは通じないぜ!!」


グレイスが大剣を振り上げた。

その斬撃は周囲の空気を飲み込むかのように放たれた。


迫り来る巨大な斬撃波。


だが、俺はそれをさらりと避ける。

避けられた斬撃波は止まることなく直進していく。


グレイスは軽々と大剣を持ち上げ肩に落とし、リズムよく上下に動かす。


「そりゃ避けるわな」


「当然だ、次は俺の番だ」


生身で喰らえばひとたまりもなかっただろう。


俺は真っ向からグレイスの元に駆ける。

ああいう、力任せに攻撃してくるような相手には不利だろうがそれも考えてのことだ。

錯乱させるような戦い方をしても対処法くらい知っているだろう。

一度対戦を見ただけだが、相手の動きを予測したような攻撃をしていた。

となれば、無意味な戦略ほど無駄に体力を使う必要はない。

ただ倒す。そのことだけを考えればいい。


「イノシシのように向かって来るだけじゃあ俺には勝てねえぜ!?」


グレイスは右手だけで大剣を上げ、もう片方の手をばっと開いた。


体全体に乗ってくるような重力が発生し、走る速度が殺されてしまった。

力任せにどうこう出来るものではなかったが速技を使って脱出する。


「ーーたいしたもんだ、俺の重力空間から抜け出すとは……。だがな、離れればいいってもんじゃないぜ?」


グレイスの大剣が大きく振動している。


一か八か。こういう戦い方は好きではなかったが、撃技を乗せた斬撃を放った。


「良い攻撃だ! ……だが、俺の大剣と重力の合わせ技を超えられるか? ーー重求砲」


圧縮された黒い弾が大剣の切っ先から放出された。

周囲の地面をミシミシと言わせ、俺の放った斬撃とぶつかった。

俺の放った斬撃は見事なまでに砕かれてしまい、その重力能力によって垂直に地面に落下した。

そして僅かに速度を落としたグレイスの技をラフマの剣で防ぐ。


「くっ!」


だがその技の威力たるや、半端ではない。

なかなか堪える威力。


「効くだろう? 俺の重求砲。まあ直じゃないだけまだマシな方だ。お前の斬撃を受けなかったらその2倍以上の重みは来ていただろうな」


まったく、戦いにくいことこの上ない。

真っ向から戦ってはダメだ。

相手は重力、何か良い手があるはず。


「……しかしお前のその剣。イカれ野郎が言う通り本当に第3の剣っぽいな。どうかしてるぜ、そんな剣持つなんてよ」


「お前はこれからその第3の剣でやられるんだけどな」


「強気だね~。出来るもんならやってみろってんだ! 行くぜ!!」


グレイスは図体の割にスピードも速い。

ただ、その点だけは俺に少しは部があるのかもしれない。

一歩先、グレイスのスピードより速い自覚はある。


さっきの重力の塊を飛ばされないように回りながら移動する。


「ふ~ん、スピードだけは俺より上ってわけね。面倒だな……よおし!」


グレイスの大剣がまた振動する。そしてその大剣を空高くに放り投げてしまった。


「何を……」


グレイス本体は無防備。また、良からぬ技をするのは目に見える。その前にグレイスを斬る。同じ勇者ランク7、手なんて抜いていられない。


「クッ!!」


速度を上げグレイスに近づき一閃。

両手をクロスさせて多少ガードされてしまったが、漸く初のダメージ。


「よくも傷を……落ちろ!!」


グレイスが空にある大剣に向かって手を上げると勢いよく猛スピードで地面に落下した。


「皆さま落ち着いてください!! この会場はこんな揺れではビクともしません!!」


ディズがギャラリーに向かってそう言った。

それほどの大きな揺れ。

大剣の切っ先が地面に大きく突き刺さっている。


そして周囲を支配する重力空間。

立つことさえ困難だった。


「まあまあ楽しめたよ、大会初出場の勇者君」


グレイスのパンチが俺の腹部にクリーンヒットした。


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