第64話 魔剣VS狂気
テクニック・ザ・トーナメントの第1回戦の勝者はブレイブとなり、間も無く第2回戦が始まる。
第2回戦の出場者は俺だ。
対戦者はブラウンヘア-を後ろで括った目のクマが深い男。
一度見たことがある。
「続いての第2回戦は! 共にランク7の勇者でありながらテクニック・ザ・ト-ナメントの出場はこれが初めて! シン選手、マッド選手の入場で~す!」
マッドはバトルフィールドに入って行くなり二つのギザギザの長剣を抜き取り、上唇を舐める。そして、互いに十メートルの間隔を保った後、俺はラフマの剣を鞘から出して構える。
マッドはやたらとアスティオンに固執していた奴で、今も不気味にニヤついている。
カァンと鐘の合図が鳴った。
だが、俺もマッドもまだ動いてはいない。
同じ勇者ランク7、まずは相手の出方を見たいところ。
「なぁ、お前……この戦い、俺に勝ちを譲ってくれないか? そしたらよお、俺の相棒剣、エクスキューショナーの餌食にはさせないから、ふっふ」
「ふざけんな。譲るわけない」
「ふっふっふ、そうか……それならこの大衆の前で無様に散るがいい!」
ぎりりりりと二本のギザギザの長剣を擦り合わせ、真正面から走って来た。
足元まである黒のロ-ブが揺れる。
両剣を左右に上げた瞬間、赤い光が迸り、男は目を見開いた。
「死に晒せえええええええ!!」
男が両剣をクロスすると地面に斬り傷をつけるほどの斬撃が飛んで来る。
飛ぶ斬撃を使えるということは、少なくとも只者ではない。
勇者ランク7は妥当だ。
俺は飛んで来た斬撃を跳躍して躱し、お返しに撃技を纏わせた斬撃を放った。
男は再びクロスした斬撃を繰り出して、俺の斬撃と相殺させた。
「やるねえ……が、しかし腑に落ちねえ。白銀の刀身、間違いねえ。何故、貴様が第3の剣と言われる魔剣を持っている?」
「なんだ? 欲しいのか?」
「いんや、流石に俺もその剣は要らねえ。なんでその剣を持っているのか気になっただけだよ。その剣は命知らずの馬鹿な野郎が持つべき剣。ふっふ、名刀にはちげえねえが、宝剣の代わりにはならねえ。ーーさあ! 続きといこうか! 処刑刀の真髄をこれから嫌と言うほど見せてやろう!」
マッドが踏み込みを深くしてギザギザの二本の長剣を後ろに構える。
赤い光と青い光が微かに放出する。
その瞬間、消えたように移動するマッドの持つ二本の長剣が俺を襲う。
速技と撃技の組み合わせ技。
素早く繰り出された二刀流の技を、俺は剣一本で受け止める。
これは流石に技の解放無しでの受けは厳しく、守技を+2ほど解放した。
守技は撃技と同じように、本体である俺を通して剣自身にも纏わせることが出来る。
「これで止められたと思うな! 魔剣もろともエクスキューショナーの餌食にしてやる!!」
狂ったように斬りつけてくる両剣を受けては躱す。
マッドは完全にイカれたような目をしており、時折舌をぺろりとしながら尚も斬りつけてくる。
マッドが俺と同じ勇者ランク7というのは納得できる強さなのだが、見える狂気の性が危険だ。
少なくとも俺が知っている魔物を倒し一般庶民を助ける勇者とは程遠い。そんな感じがしてならない。
獰猛な剣筋。
勇者として剣を使う職業をしていれば、交わる相手の武器から心情が少なからず読み取れてくる。マッドの剣筋に関してはその斬り一つ一つが強く、執念、そんなものが感じ取れる。
「シン選手、防戦一方となってしまった~! 対するマッド選手はひたすら斬りまくる~! さあ! この戦いの勝敗はどちらの手に上がるのか~!?」
ディズがそう言って大会を盛り上げる。
「ふっふっふ! 反撃して来てもいいんだぜ!? それともビビって何も出来ないってか!? 腰抜け勇者にはお似合いな負け方だが、このまま負けたら大衆の前で大恥だな!」
随分と言いたいように言ってくれる。
俺は一本の剣で二本の剣を受けているというのに。
「そんなに反撃して欲しいならしてやる」
「ああ? やってみろおおお!! ーー!!」
マッドがさらにスピードを上げた。
しかしその瞬間、マッドの持つ一本の剣が高々と吹き飛んだ。
「おお~っとこれは!? マッド選手の剣が上空を……そして落下した~! 一体何が起こったと言うんだ~!?」
「お前!!」
「やりにくいんだよ、二刀流。そのギザギザも」
そしてもう一本残るギザギザの長剣を、解放した撃技による斬撃によって折ってやった。
マッドは後方に落ちたもう一本の長剣の元に3度のジャンプで拾いに行く。
これで剣一本同士の戦い。
「俺のエクスキューショナーをよくも……死に晒せええええ!!」
マッドの放った斬撃は長剣のギザギザを現したかのようだ。
それが続き様に4発飛んでくる。
俺はその斬撃を躱して行くのだが、思ったより攻撃範囲が広かったようで顔や腕に斬り傷をつけた。
テクニック・ザ・トーナメントは技を競う戦いであって対戦者の死は禁止されている。
が、それはルール上あるだけで、実際に起きてしまった死はどうすることも出来ない。
その為、過去の大会においても死んだ参加者はいる。
大会に参加する際にも、対戦者を死に追いやることは認められないとされるのだが、死を意識しない大会ほど盛り上がらないものはないとテクニック・ザ・トーナメントを始め出した頃からもはや黙認された常識となってしまっている。
マッドも俺と同じ初の大会出場のはずなのだが、彼のその狂気じみた性格が大会を良い意味で盛り上げてしまっているようだ。
現にギャラリーは騒ぎ、ますます盛り上がってきている。
言い放った言葉の通りに殺しに来ているようだ。
だが、さすがに技を使い過ぎたようで疲れた表情が確認出来る。
ラフマの剣を縦に構えーー速技でマッドの元に移動した。
「ううっ!?」
ガードが遅れたマッドの腹に一閃。
だが、さすがにそれだけでは倒れない。
今度は俺の番と言わんばかりに猛攻する。
「くそっ! こんなところで……こんなところで負けてたまるかあ!! 宝剣は俺のもんだ!!」
声を荒げたマッドが振り下ろした長剣は……俺の横をかすめ地面についた。
「悪いな、宝剣は誰にも渡せない」
そう言って、+1の撃技を乗せた掌底打ちをマッドの顔面に放った。
「決まった~!! シン選手、華麗にマッド選手に掌底打ち!!」
ディズが叫び、すかさず立会い審査員のセリオーザが駆け寄る。
マッドは体をひくひくとさせ、持っていた長剣を手放した。
セリオーザの持つ旗が俺に挙がった。
これで、1勝。
後、2勝すれば俺の元に……




