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第63話 国を追放されし者


「あいつがセシリアか。絶世の美女ってああいう奴を言うんだろうな」


セシリアの美貌は絶え間なく大会会場に放たれ、黄色い声が飛んだり、中には突如の告白をする者たちまでいる。

セシリアは慣れているのだろうか、変わらない微笑の表情のままゆっくりと観客席に向かって手を振り続ける。


「ちげえねえ! あああ! たまんねえな!」


急に俺の隣に現れたグレイス。ニヤニヤしながらセシリアを見ている様子は、一瞬殺気めいた雰囲気を出した同一人物だと微塵も感じられない。


グレイスがそうなる気持ちも分からなくもない。

その美貌はシーラ王国のアリス王女といい勝負をしている。

紺色のエレガントなドレスの上からでもわかる色気がある肢体美。

グレイスだけでなく、他の男の参加者の表情もほころんでいるようだ。


これからいよいよ大会が始まるっていうのに、なんてだらしない奴らだ。

緊張感で張り詰めていた空気がセシリアの登場によって一気に柔らかくなったような感じがする。


ただその場にいる俺を含め数人は、表情を一切変えずにただただセシリアを見ている。

女性の参加者もいるようだが、セシリアの登場でも顔色一つ変えないとはな。

セシリアは男性より女性の方が人気の勇者で、実際に登場してからも黄色い声が絶え間なく続いている。


「さああ! それではセシリア氏に盛り上げていただいたところで! 早速第一回戦をおっ始めたいと思います! ブレイブ選手、ディアンドル選手、前へ!!」


ディスがバトルフィールドの端に移動する。

その後、ベージュ色の短髪の男がバトルフィールドへと歩いて行く。

ガタイは大きく、戦斧を携えている。


一方で遅れてバトルフィールドに入ったのは両剣を腰に携えた細身の男。

ゆらゆらと揺れる括られた長い髪が動く。

各々が10メートルほど間隔を保つと、また1人の男がバトルフィールドへ向かう。


「彼はこのテクニック・ザ・トーナメントの由緒正しき審査員、セリオーザ!」


セリオーザはそれほど若くはなく、見た感じではダンディーな中年男性。

黒を基調としたシュッとした服を着こなす。

セシリアほどではないが、黄色い声がちらほらと飛んでいる。


「では……審査員セリオーザ立会いの元、始めていただきましょう!!」


ディスがそう言った後、鐘の音が会場に鳴り響いた。


そして、先手必勝と言わんばかりに両剣を抜き取った細みの男のスピードが上がる。


「お~っと!! 出ましたディアンドル選手の速技!! まるで隼のようだああ! 対するブレイブ選手は……動かない!!」


戦斧を抜いて前に突き出す。

その映像は魔力電子版と呼ばれる巨大浮遊スクリーンに映し出されている。


戦斧を持った男の身体に白い光が浮かぶ。

これは守技を使った時に現れる現象だ。

技を使えばそのプラス値によって見える光の色がはっきりするーー撃技は赤、速技は青、守技は白。


ただ、技のプラス値が5以下だとかなり見えずらい。

両剣と戦斧が強くぶつかり合った。

そして、それを合図にしたかのように両剣の乱舞が繰り出される。

戦斧を持った男ーーブレイブはまた守技を発動した。


「激戦で始まる本大会!! ブレイブ選手は守りの手を固め、反撃のチャンスを今か今かと待っているのか~!? 元、ホックファー王国の兵でありながら勇者に転身した変わり者! その戦いっぷりを是非とも見てみたいところ!」


そうか、ブレイブはホックファー王国の人間だったのか。

他の国に比べて軒並み高い税金のせいで、移住をあまりしたがらない村の住人たちが多いと聞く。


ブレイブが戦斧を前方へ回してディアンドルに距離を取らせる。

ブレイブはその勢いのままディアンドルに向かって切っ先を放った。

戦斧は斧の先に細い剣が付いている武器。

ディアンドルは斬撃の弾をさっと避けて、すかさず空いたスペースに入り込んだ。

だが、斬りつけようとしたディアンドルの両剣よりも先に出たのはブレイブの拳だった。

その拳はディアンドルの腹部に直撃し、数メートルほど吹っ飛んだ。


薄っすら赤く見えた光ーーブレイブが撃技を使ったようだ。


ディアンドルはかなり苦しそうな表情を浮かべており、ブレイブの放った拳が見事に効いているようだ。


ブレイブが戦斧を振り上げ肩にかける。


ディアンドルは両手を使って立ち上がろうとするが、かなり厳しい様子だ。



審査員のセリオーザが旗をブレイブの方へ上げる。


「第一回戦の勝者はブレイブ選手!! 力強い拳が元兵士を感じさせられました~!! さあさあ! 続いて次の対戦の準備をする迄少々お待ちください!!」


倒れたディアンドルを大会側の人間が二人掛かりで運んで連れて行く。

このテクニック・ザ・トーナメントは勝ち抜き戦であり、負けたらその時点で終わりだ。


さて、次は俺だ。

持つ剣はアスティオン……ではなく、ルイとルリカから譲り受けたラフマの剣。


人間相手にどこまで戦えるか。


行こうか、アスティオン奪還への戦いに。


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