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第58話 魔剣の噂


話は俺の泊まっている部屋ですることになった。


センヴェントは受け取ったラフマの剣を険しい表情で見ている。


「ーー要するに、その子らからこの剣を貰ったんじゃな?」


「ああ。よくこんな剣を今まで持っていたと感心するよ」


「本当じゃな。下手をすれば己の命すら危うい立場になるやもしれんのに」


「確かに」


ラフマの剣は何も魔物を斬るだけでなく、ただ持っているだけで命を狙われる可能性すらある。

ラフマの剣は10ある魔剣の一つでその位置は3番目にある。

多くの武器屋ではまず買い取ってもらえないが、魔剣を狙う勇者は意外にも多いと聞く。


「それでこの剣のことを詳しく知りたいと言っとったが、大方その見解で間違いないじゃろう。じゃから、間違っても魔物相手にその剣で技など使うな」


「やっぱりそうなのか……」


技の反動は受けないと期待していた。

ただ、他の9つの魔剣についても同様のことが言えるのか、たまたま、俺がルイたちから譲り受けたラフマの剣がそうなのか。

なんとも恐ろしい剣があったものだ。


「そんな剣に頼っても意味はないぞ、シン坊。大会の賞品になっている宝剣もそうじゃが、全ての実力は己の精神と肉体に宿る」


センヴェントほど、その言葉に説得力がある者はいないだろう。


「その通りだ」


「……それじゃあ儂はもう用済みじゃろうから行くとしよう」


セルヴェントはドアを開けて部屋から出て行った。

セルヴェントは10ある魔剣のうち、5番目と8番目を持つ者と出会ったことがあるそうだが、並みの精神力では持つことさえ許されないと感じたそうだ。

それはそうだろう。もしも他の魔剣もラフマの剣と同じように諸刃の剣ならば、3度目の斬撃で大ダメージを受けることになる。


宝剣が神の武器だとするならば、魔剣はさながら悪魔の武器と言ったところか。

テーブルの上に置いてあるラフマの剣を暫く見ていた後、ギルドサル-フに行って今回討伐依頼のあった食人植物とその他の討伐した魔物の報酬を受け取りに出かけた。





「ーーそれでは、今回の食人植物の討伐依頼を含めまして、こちらの報酬をお支払いします」


受付嬢エレナは報酬の入った袋を俺に渡す。

報酬引き取りが久しぶりになった為、かなりどっしりくる。金貨118枚、それが今回受け取った枚数。

それから宿泊代の支払いに衣類の洗濯、食事などを支払っていく。もちろん、俺とメアはそれぞれがお金の管理をしている。

ただ、セシルが旅に同行することで人1人分の資金は増える。セシルは勇者では無い為、ギルドで黒の紙の発行をすることは出来ず、報酬を得る手段は今のところ無い。

まあそこは俺が負担していこう。


「次回も頼むよ」


「またのご利用をお待ちしております。勇者様に聖なる神の加護があらんことを」


受付嬢エレナは祈り、次に並んでいた勇者の対応をし始めた。


「さてと、そろそろメアたちと合流でもするか」


メアとセシルはバタリアの街の何処かに居るとは思うのだが、探すとなると骨が折れる。

だがこういう時にこそ、通信水晶体が使える。


リュックの中からビー玉ほどの大きさの無色透明の通信水晶体を小包み出して握る。

そうすることで、相手の通信水晶体までに魔力磁場が行き届いて通話が可能となる。

会話内容は頭の中点から30cmで誰かに話を盗み聞きされるはそうない。仮にその範囲内に入って来たとしても、魔力の違う人間には聞こえない。


「メア、俺だ。聞こえるか?」


暫く応答を待つ。


『ーーシンね。ルイとルリカとはどうなったの?』


直ぐに応答が来た。


「ダメだったよ。まあ、アスティオンは自力で回収する。それより今何処にいるんだ? 一度合流しよう」


『私たちは今、メシェケールのカフェにいるわ』


と言うことは今は昼食か。


「分かった。……そうだな、ならそこから見える鉄筋柱の手前広場で待ち合わせでいいか?」


『おっけー! じゃ、あとで!』


通信水晶体の通話が切れる。


メシェケールのカフェはギルドサルーフを出て東にある。メシェケールのカフェはスイーツがとても有名で、それ目当てで遥々違う街からやって来る人もいるらしい。


その後俺も昼食をとる為、ギルドサルーフを出て店を探す。





宿屋を出て直ぐ左折した通りにあった店で食事をした。

その後、待っていたメアたちと合流し、広場で少しばかりの休憩を取る。

セシルは無法地帯の人身売買所にいたのかと見違えるほど元気な様子だ。


「ラフマの剣だなんて……ルリカたち、そんなもの持っていたのね」


「よっぽど早く誰かに渡したかったんだろうな」


魔剣を捨てれば死ぬ時まで不幸に見舞われる。そんな噂も広まりに広まり、魔剣を捨てるわけにもいかなかったのだろう。


ベンチに座って足をぶらぶらさせるセシルは、そんなことどうでもいいのだろう。

広場を眺めているようだ。


「私もその魔剣を持ってる勇者に会ったことがあるけど、まるで取り憑かれたように魔物を斬っていたわ」


「安心しろ。俺はそうなるまでこの剣を使う気はない」


とは言うのだが、実際のところどうなるか分かったものではない。

テクニック・ザ・ト-ナメントに出場して優勝賞品であるアスティオンを取り返せば、早々にラフマの剣を手放したいところ。


だが、このラフマの剣ーー魔剣を捨てればどんな目に遭うか……


最も、俺にとってはどうでもいいことだが。ただの迷信だろうそんなもの。

ルイたちに返すわけにもいかないし、しばらくは俺が持っておこう。


「そうね、シンなら大丈夫そうな気がするわ。魔剣に従われるっていうがらじゃなさそうだし」


「……違いない」


本来、剣を振るう勇者が持つ剣に従われるなんて持っての他。だがこと魔剣に関して言えばそういうわけにはいかない。


「人が持つ武器を選ぶように、武器も人を選ぶ--だから、そのラフマの剣はシンの元を離れる……そんな気がする」


「……それならいいんだけどな」


メアの言うように、それに越したことはない。

ただ、俺はどちらかと言うとアスティオンを武器として選んだというより、武器が俺を選んだという表現に近い。

自惚れや傲慢ではない。


俺の家系に引き継がれて来た宝剣ーーアスティオン。

そう思うと、断然、他のやつに優勝されるわけにはいかない。


「難しい話ー!  セシル分かんない!」


セシルも興味深そうに話を聞いていたのだが、理解出来なかったようだ。


「いいんだよセシルは」


獣人のセシルには、人と武器の何たるかを説明しても分からないだろう。

そもそも俺はまだセシルを旅に連れて行こうか迷っている段階。

ただこのまま放ってまた闇の商人や誰かに捕まってしまうのも引ける。

一番良いのは、セシルが仲間の元に帰ることだが……


当の本人、セシルはどう思っているのだろうか。

話を聞き終わるなり、またふらふらとその辺りに行ってしまう。


「セシル!」


呼ぶと振り向いて、「な-に?」と言って来る。

聞いてみようか、セシルの本心を。


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