第4話 再会
厳しい冬も終わり、
街のあちこちに桜が咲き始める、
出会いの季節。
近所にハンバーガー屋さんができた。
この辺りにはないタイプのお店だったので
連日すごい行列で、
店内もごった返していた。
土日は行けたもんじゃない。
毎日通勤で通る道。
行列ができてるから、気になる。
平日の空いてる時間を狙って行ってみた。
それでも予想以上に人がいる。
10分程並んで
やっと注文できた!と思ったら
私が並んでたのは「現金のみ」の列だった。
そんな列があるとも知らず、1番空いてる列に並んでしまった。
普段キャッシュレスな日常を送っている私は
そんな少しの現金も持ち合わせておらず、、
落胆。並び直しか。
少し嫌な気分になった私は
「え?ずっと並んだのに、またあっちの列に並ばなあかんの?もっと後ろからも見えるように書いといてよ」
と店員さんに苦言を言った。
−−−
その時、
「しゃーないで、一緒に払ったるわ」
後ろから聞き覚えのある声がした。
そして
突然、男の人が横に来て、ドキっとした。
「か、和希っ」
たぶん会うのは4〜5年ぶり
あのお盆の日以来。
以前の陽気で、子供っぽい印象とは違って
痩せて、表情も固く、少し怖い感じがした。
「あ、ありがとう」
和希は
自分の分も注文して、まとめて支払ってくれた。
「一緒に食べてこ。奢ったったんやから」
「あ、え!?ちゃんと返すよ。いつか」
突然のお誘いに戸惑った。
正直、2人で食べるのはちょっと気まずい。
何をどこまで知らないふりをしたら良いのか。
地雷を踏んでしまわないか、
会話が続くのかも不安だった。
でも、断る事もできず、
テイクアウトで注文した紙袋を持って
席についた。
「俺、そこの車屋でバイトし始めた。
また1ヶ月くらいやけど」
「へーそうなんやー」
「やっと今、お昼」
「えーもう3時やのにー忙しんやなー」
「まぁまぁ」
ぎこちない会話が、途切れた。
・・・
沈黙。
・・・
気まずい。
・・・
「私、ここ初めて。いつもすごい人やん。
ずっと気になってたけど、なかなかこれなくて」
「俺も」
と言いながら、和希はポテトを食べた。
「なにこれ。ただのイモやん」
その一言に思わず笑った。
大手ファストフード店のポテトとは
ちょっと違って、味付けがなにもなく
素朴な、じゃがいも本来の味だった。
「これが今の流行りなんじゃない?
素材のままで、体には良さそうやん」
「えーマズ〜」
「確かに」
と言いながら食べた。
ちょっと場が和んだ。
−−−
「真子入ってくの見えたからさー。
食べるつもりなかったけど、来てみた。」
知ってて入って来たんや
「え!そーなん?
何で声かけてくれへんだん?」
「ちょっと泳がしとこと思って。
ずっとすぐ後ろに並んでたけどな。
携帯ばっか見て、全然気付いてくれへし。」
「えー。やめてよ。変な事してなかった?w」
「顔ヤバかったでw」
「うそーハズ。めちゃ気抜いてた」
「しかも店員さんに文句言うし。びっくりしたわ」
恥ずかしいところを見られた事を思い出した。
「いやいや、私普段そんな事言った事ないからな。
たまたま。
ホントにたまたま。」
「ま、そのお陰でかっこよく登場できて良かったけど。」
「え?別に、カッコよくはなかったけど?w」
「助けたらんだらよかった〜」
と言って和希が笑った。
あ、この笑顔。かわいい。
久しぶりに和希の笑顔が見れて
すごく嬉しかった。
「真子、食べ方下手すぎん?w」
「大きい口開けるの恥ずかしかったから、
ちょこちょこ食べてたら、こんなんになったw」
「大きい口開けて食べたらいいやん」
「だって、、」
「ついてるー」和希に紙ナプキンで口を拭かれた。
恥ずかしくて、顔が赤くなった気がする。
−−−
ハンバーガーはすごいボリュームで、
食べるのに苦労したけど、とても美味しいかった。
ごちそうさまをして、和希は仕事へと戻って行った。
・・・何故か、この日初めて
和希が、男性に見えた。
作業服のせいか?大人になったせいか?
登場のシチュエーションが良かった?
怖い顔からの笑顔のギャップ?
その全ての要因が重なって
不覚にもカッコいいと思ってしまった。
気のせいかと思い、
帰りに和希の車屋さんの前を通り、
和希の働いてる姿を見た。
Uターンをして
もう1度、逆に方向から通って見てみた。
やっぱり、気のせいではなかった。




