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Resign  作者: Nomulesse oblige


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9/23

9、転校生に学校案内する文化は多分ない。

「さて、どこからどこまで行きますか?」とこんなことまで言う。

「端から端までではなくて?」

「そうだね」


 歩き出したのは良いが、会話が続かない。後ろの伽華と桐花は他愛のない会話をしている。モール行ってから百均に行くと損した気分になるという話を。まあそんな話を殆ど初対面の人たちとするほど私はそんなに流暢に喋れないし、打ち解けない。


 敢えて話せるならフィボナッチ数列についてだろうか……。駄目だ。こんな話題、誰に需要が発生するのだろうか。


 今の流行が分からない。多分切り落とした所にあったのだろう。

 困るなあ。いや、困るためにそうしたのだ。

 このように考え倦んだ結果端まで来てしまったようだ。


「ここが端だね」

「最東端だね~」

「根室か」


「夏夏呼。誰だ、その女」

「違いますよ~。北海道、日本の最果て」

「占守じゃなくて?」

「放棄しましたよ……と言うか、南鳥島でしょ。一番有名で教科書に載っているでしょう?」


 滑稽な会話が繰り広げられている。

 見ると一つ窓がある。廊下を進んできて直進に窓がある。

 その窓の下に机とも椅子とも取れそうな木製の台のようなものがある。


「なんですか?これ?」

「さあ。これずっとあるのよ」

「そうだね~。なんなんだろうね~」


「自殺扶助台じゃない?ほら私振られたときここで死にたくなるし」

「それは舞さんだけやろう。うちは何とも思わんよ」

「モテようという努力もしないからでしょ。努力しないことで自分は本気じゃない。本気出したら出来ると思いたいものね。努力したら分かるわ。虚しいなあって」

「やめて。うちには効いてまう」とのたうちまわっていた。


 滑稽な会話から滑稽な動きに変わった。

 天ちゃんは苦笑いしていた。私は何とも思わなかった。

 私の興味はこの台にしかなかった。


 ツンツンと突いてから、どうともないことを確認した後、乗り上がった。

 ミシミシという不穏な音が響き渡るが、耐久性は目視で確認したが問題ないはずだ。

 天ちゃんはまさか乗り上がると思わなかったのか、変なことを言い出した。


「ちょ、ちょお。舞の言葉に感化されて自殺しないわよね」

「自殺には難易度高いですよ。三階ですし、この窓も小窓なので、屋上から飛び降りた方が楽です。安楽死ではないですが」

「はは。恵神って結構不謹慎ちゃんなのね……」

「そうじゃないんです。死がただ近かっただけ……」


 私は何故こんなことを言ったのでしょう。窓の外が美しいからでしょうか?

 地平線と空の境界が混ざり合い桃色ががっている。

 これをビーナスの帯と言うのは地球言語の秀逸さだろう。


「大層、綺麗ですね」

「うちは西の方が綺麗なんやないかと思うけど。沈む方向だし」

「そういう所が夏夏呼に彼氏できない原因じゃない?」

「はあ?舞さんは夜景見るときに男しか見てないタイプやろ?」

「何を言う。ちょっとだけだわ」

「見てるじゃああん」


 また不毛な議論が始まったよ。

 私が蒔いた種だから収拾つけるべきだろうか。刹那的に思考して見たが要らない要らないという結論に至った。


 それよりもここを探索したかった。

 窓の外に何かあるのかなあとも思ったけど、そういう訳ではないらしい。

 次に思い当るのがこの台自体なのだ。


 私は台を持って持ち上げて見た。

 軽い。そりゃ木製だからだ。クルクルと回してみたのだが特に……何かあった。

 罰点。十字?何やら印があったが…。

 それ以上は特に何もない。


「天さん。天さん。彼女は何しているんでしょうか?」

「知らないわ。興味じゃない?」


 うん……。そこそこと話されると気分がいいものではない。

 ちょっと羞恥が勝ち越してしまいこの台をこの手から離した。


「なんかあった?うちにはただの台にしか見えないけども」

「ううん。特には…」

「まあ。そう簡単に何かあったら溜まったものではない」

「それもそうなんですけど……」


 なにかあると呟くにはまだ早計だと判断する。喉まで出かかった言葉を無理繰りに押し込んだ。

 狼少年、私は少女だが、そうになるにはまだ何も起こっていない。前兆程度で何も言えない。


「まあ。何でもないですよ」と言って拙くとも誤魔化した。

「そう。じゃあ。済んだ?」


 淡白な言葉を吐かれた。桐花さんはそこまでこの台に、この場所に好奇心はないらしい。

 天ちゃんのような八方美人でもなく、伽華さんのような大層ニコニコとした笑顔を向ける訳ではない。

 そっちの方が珍しい人種らしい。

 まあ伽華さんの方がスタンダードではある。好奇心猫を殺すとも言うし、いつかこの友人関係を壊してしまうかもしれない。

 これ以上の探索を止めてしまった方が賢しい判断であえる。


「大丈夫ですよ。ただ、気になったもので」

「そうだよね~。私も気になる~。特に何も気にしなかったけど気になる~」

「危ないものに手を出さないでください。ただでさえ、ぼおっとしている凛香さんやからこそ……」

「そんな凛香が告白され続けているのは可笑しい……。私もぼおっとした人種になれというのか」


「やめて。ぼおっとした人が増えたら、うち—―恵神くらいしかまともな人が居ないよ?」

「それもそう。悲しい現実」

「そこまで言われるのは心外~」

「ホントに訂正しなさい。まともな人は恵神くらいしかいないわ」


 私……?急に白羽の矢が立った。

 おっと。私はまともではないですけど?

 まともなら今はこんな所にいない。天で無心でハンコを押しているだろうよ。その生活が悪いとは思わないけど、もう何十億年もしたからね……。


「確かに~」と賛成票を投じたのは伽華さんだった。


 桐花さんと小野倉さんも賛成的ではあったものの、不服に見える。


「閑話休題と言うことで……、別の所に行きましょう?予想的には辛気臭い空気になりそうで、話題が枯渇しそうなのでそういう空気は嫌いなので空気清浄機で正常にしてやりますわ」


 なんて無理矢理過ぎる話題転換を図る天ちゃんであるが、素直に私たちは従った。

 もうこの場所には用がないからね。


 こう言う機会でないと中々来ないような所だ。中々来たとしてもスルーするだろう。

 だって何の変哲もない台なのだから。


 何か分かった風に私は出したが、予測が立っただけ。予測の範疇を超えない。

 もう一度来た所で何も変わらないだろう。

 この時点ではこう思っていた。



 しかし、次の日また来る機会に恵まれてしまうのは何かの意図が働いているとしか思えなかった。

 後輩か?後輩なのか?


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