24、これからが真の解決編だ。尻拭いともいう。
しかし、されど事件の記憶が消されたとて、私たちに何の影響すらない。
小野倉さんだって、桐花さんだって、伽華さんだって、遂にはあの憎しみに悶えていた天ちゃんだって忘却の彼方にある。
これはきずなあまねの魔法のせいだろう。
この魔法が想像以上に上手く行ってしまったのはやっぱり本質的に事件ではなく、出来事だったからだ。
被害者と言っても被害者が殆ど悪戯の被害者と言う、まあ、水に流してもいいんじゃないかとも言えてしまう所だった。
だから、だれも覚えていないのなら私がどうにかこうにかすべきではないのではないかと。
いいや、違う。覚えている私だけでも何とかしなければならない。延いては世界のため。
私は密かに決心をし、彼女の、きずなあまねの所へ行くことにしたのだ。
とは、言うもののだ。彼女の家を依然として知らない。教師の名簿だって嘘で塗り固めらているのは身に染みた。ああ。そうだ。我が後輩は友達に訊くべきだと言っていた。
だからと言ってそれを信用するか……。でも、八方塞だ。
「はあ。仕方がない」として、私は携帯を取り出した。
『もしもし』
「もしもし。桐花さん。ちょっと良いですか?」
『うん?何の用や。前のキッスの話ならちょっと無理やで』
「そんな話はしませんよ。気まずくて桐花さんもできないでしょう?」
『まあ。そうやけど……。桐花さんってえらい距離あるなあ。桐花か。夏夏呼とか呼んで欲しいね』
「じゃあ桐花?、いや夏夏呼で?」
なんだか圧を感じた。
『まあ。ええわ。で、そんな親愛なる恵神であってももし、誘いの約束なら一つも役に立てないかな~。今からオンラインゲームをしなけれなならないからな。無理やで?』
「あんまり親愛なる人に言う言い訳ではないような気も知るけど、玉響、時間を取って良い?」
『まあええよ。何訊きたい~?面白いことなら、何でも知っているで?一円玉は世界で唯一水に浮く効果がある硬貨なんやで』
へー。にしかならない。全くもって無駄なトリビアは今は必要性もない。
「そんなどうでもいいことを教えてくれる夏夏呼の時間を強奪することは別に罪悪にも思えないから別に良いか」
『なんやねん。ちょっとは思ってくれてもええやんか。贖罪ぐらいには』
「重刑じゃないですか。きのこ派からタケノコ派に気移りするぐらい重刑じゃないですか」
『ホントに重刑やん。因みにうちはタケノコや』
「私は食べてことないです」
『は……?え?』とドン引きされてしまった。いやいや。本題はそこではないのだよ。
「夏夏呼。えっとですね。一つ訊きたいことがあって、それは……きずなあまねの所在地を知っていますか?」
『あ~。あ……』と言い濁し若干止まった。暫しの長考の時間が取られただろう。この時間は私に取って生殺しの他になかった。
『一分一厘待って』と言って電話を切ってからまた若干の時間が空いた。どうしたのだろうか。まさか訊いてはならないことを訊いてしまったのだろうか。天ちゃんの時のようにまた地雷を盛大に踏んでしまったのだろうか。私は次に夏夏呼さんが手に取るまでわなわなと戦慄きが止まらなかった。一分一厘が一日三秋。
ピリリと携帯が鳴ったなら、手に取った。
「はい」
『恵神。えっと、おそらく市役所駅の南ほどに居るやろう』と返って来たのは五分も後。
「南?」
『うん。市役所の近くのニュータウンに住んでいる。らしいな』
市役所駅とはこの学校から一駅ほど進んだところにある。徒歩圏内の便利な駅だ。しかし、路線図的に見れば公園前駅とは反対側である。
あれ?ということは、改竄も改竄されていたと言うことだ。公園前駅は完全なる鴨であった。
『どうしたんや。なんかギャップでもあったんか?』
「まあ。そんな感じ」
『う~ん。恵神が何をするのか想像出来そうで出来ないくらいの気持ちだけど』
「どっちよ?」
『どっちでもないんやない?まあ頑張れや。友達は何でも知っているんやで。例えば……恵神の辛苦……とか?』
大分鷹揚な態度で、軽々しいと思っていたが、心の奥底の未知の感情に急に顔を突っ込まれた感覚があった。思わず、「何を知っている?」と懐疑的な言葉を紡ぎ出してしまう所だった。まだ、一定の間隔で親身に寄り添ってくれる天ちゃんの方が良かったと羨んだ。
『まあ。うちははよおゲームしたいからもう切るからな』と言って感情の整理もない私を崖から突き飛ばしたかのようにぶちっと切った。やはり、きずなあまねという人物を良く思っていないのだろうか。
私がきずなあまねと口に出した人は誰も良い顔をしない。私だっていい顔はしてはいないのかもしれないけれど、仲良くは出来そうだ。その気概も会う人合う人はない。
「う……ん。まあ。そういう人なのだからいいんだけれど……」と無理繰りに納得を強行して置いた。
さて、有無を言わずに、準備しよう。
何がいるのだろうか?いや、別段として何も要らないはずだ。私は喧嘩をしに行くのではないのだ。
対決ではなく解決しに行くのだ。
これからが真の解決編だ。尻拭いともいう。




