15、立て続けに二つの事件が起こってしまった。
立て続けに二つの事件が起こってしまった。
それも流れるように鮮やかに。立て板に水である。
はは。犯人もセンスがあるではないかと褒めてやりたい。
難易度もそれほどでもないし、丁度娯楽程度だ。うんうん、これぐらいが考えもしやすいものだ。
さて、二つの事件を並び立てて、まず議題に上がるのが共通点と言ったところだろうか。しかし、この二つの共通点を見つけることは余程の馬鹿ではない限り、勘づく。
共通項は天川天の友人だったと言うことだ。
小野倉舞も、桐花夏夏呼も友人であった。私の友人と言えば友人なのだが、関わりの薄い、出会って三日ほどのどこの馬の骨と知れない私のことを周りが知っているのか。
そこが意外と重要事項であった。
犯人の動機である。私はその辺りに付いて考え始めていた。
いわば、劇場型犯罪の可能性である。
現在人の噂も七十五日と言わんばかり、小野倉舞の事件発生して僅か三日……。三日は十分な日数であった。事件発生当日には既に行き渡っていたのかもしれない。
そんな少ない時間でおおよそ学校内の全ての人間が知っている状態にある。
誰が考えてもこの事件の衝撃は大きかった。情報を切断されている友達の少ない奴でも誰から見てもこの教室の雰囲気がガラリと変わった。
水面下で変わった。吊るし合いが始まったのだ。
村八分が始まったのだ。人狼ゲームが始まったのだ。
誰かが、冗談でお前が犯人だとでも言ったのだろう。その一部のグループのお遊びだか何だか知らないけど、このノリがエスカレートして歪んでこの教室を包んだ。
本当の犯人。誰でもいいから犯人だと言い表せる人を探した。
曲がりなりにも、最も可能性のありそうな人物を挙げた。
ただただとばっちりである。まあ本物を求めていない空気で、ただ責められる人を探している。ただの当て馬なのだからさほど人選はこだわっていないのは追い打ちか。
それがこの結果である。
朝。教室に顔を出すと一目瞭然と目の敵にされいている人物がいた。
天川天である。
隣にいる伽華さんはこの串刺しの目線に耐え兼ねて私が教室に入るや否や助けを求めているのが分かる。
さっきまで天ちゃんとの談笑で紛らわせて済ませていたのだろうけど、流石に耐え切れないらしい。この教室のクラスメイト及び廊下で盗み見る複数の生徒。天ちゃんは三十人を優に超える人々から奇異の目を晒されていたのだ。目立たがり屋意外にこんな状況で喜ぶ人など他にいない。
桐花さんならそんな馬鹿の一つ覚えのように喜んで、小野倉さんがツッコむという世界もあっただろうけど、二人の席を見るに彼女らは今日も休みらしい。
二人とも別に病状的には問題なさそうではあるけれど、来ないらしい。
これに託けてズルで休んで二人で旅行だとか行っていたら策士である。まあそれは只の杞憂だな。
しかし、このような状況下置いて姿がないという時点で相当最悪な奴らだとは思うけど口を噤む。
あ奴らに代わって伽華さんを助けに行きましょうか。
「伽華さん。おはようございます」
「おはよ~」
「おはよう」
「ああ。天ちゃん……」
私はどういう顔をすればいいのか分からず、そのまま口を閉じてしまった。
「えっと……。この熱烈のコールは何ですかね?」
「まあ。お察しの通りですわね。こんな有様で、忸怩たる思いです」
引きつった苦笑を見せる天ちゃんだった。
でも、私は特に慰め方もどうしていいのかすらサイコメトリーもできなくなったので、茶を濁す他になかった。
解決など能力のない私ではどうするもできなかった。下手なことをするよりも黙っていた方がまし。薄情な選択であったけど、それは相手が天ちゃん以外の話だと思った。
そんなことをしたとしても彼女天ちゃんはへこたれはしない。もっと屈強な精神の持ち主なのだ。
「解決を急ぐべきだわ。夏夏呼や舞、そして他でもない私のためにも」
「そうだね~。そのためにどうする?」
「どうするって……」
天ちゃんは精神力しかなかった。
毎回これだ。
ははっ。ここで私の出番である。私は慰めもできないけど解決に導くことが出来る。足りないものを補う。これが人間と言うものかとちょっと感心した私がいたのだった。
「では、一旦。一旦ですよ。次に狙われそうな人は誰と言うのを考えて見ませんか?」
「えっ……」
「……」
天使が通った。ここに居るのは元神様なのに。でも天は居る。いやいや、言葉遊びをしている場合ではない。
二人はフリーズしてしまったのだ。
私は別にそんなに頓珍漢なことは言っていない。寧ろ正鵠を得ているつもりだ。
ではこのような反応を取られてしまったのかと言えば図星だった他にない。
天ちゃんは目を逸らし、伽華さんはばつが悪そうにしている。ここで察した。これはこれは残酷で残忍な問であると。
やはりと撤回すべきかと思い「いや、ごめん」なんて謝りだしたけど、多い被さって私の声を打ち消した。
「わ、私~。じゃないかな~。多分。御多分に漏れずに言えば~」
……。また天使が通った。
はははと伽華さんは天使の笑みのように笑っているけれど、笑えはしなかった。隣で盗聴をしている女子生徒はやっぱりかという顔をしていた。
そうやっぱりなのだ。
順当に行けばそうなる。天ちゃんが目の敵にされている要因がここにある。
天ちゃんと友達ならば狙われると。
第一筆頭候補である。
「大丈夫です。私たちで、その何とかしますから……」
私は人間の扱いが良く分からないらしい。心を読めるってそれはそれは便利な機能だったのだなとこの頃感ぜられる所存だ。
ただこれに関しては正解だったらしい。
「そうですわ。私たちが……私に疑惑が上がっているならそれは私に取っての問題です。私が解決して見せます」
「あ、有難う~」
「と、言うことで私が今突発的に思いついたことがあるんだけど……」
「なに~?」
「凛香がいいのなら一日昼夜張り付いておくなんて言うのはどう?」
「一日昼夜~?」
「そう。それなら事件は起こらないでしょう?」
「はは。それなら、泊まりがけって言うことだよね~?」
「そのつもりだけれど。迷惑でないのなら……」
「いいや~。多分大丈夫~。寝るところがあったかなあ~とそんな具合~」
「まあ。無理なら……」
「いやいや~。私の安全のためじゃ~ん。なんとしても行けるようにしますよ~」
自信満々に言った。
普通なら遠慮すべき手段ではある。しかし、最も効率的で最も実現性が高い行為と化している。
四六時中張り付いていたとしてもそれでも事件が起こらない確証はない。まだ二つの事件のトリックも解決していない。不可能犯罪を土台としている本事件はどうなるかも未知数なのだ。
彼女らだけでは心配だ。
「私も行ってもいいですか?」
「勿論!除去する理由がないじゃないか。最も戦力になる人を連れて行かないのは愚の骨頂じゃんか」
「そ~そう。私からもお願いするよ~」
本人から依頼が出れば話は違う。全力を尽くすことにしましょう。
という訳で私たちは学校がある時間ひと時だって目を離すことはなかった。
移動教室は一緒に行ったし、お手洗いだって毎度毎度、連れションした。その後に例を挙げるべきではないけれど、言うまでもなく一緒に昼食だって摂った。
たった四日前に出会った私たちは数年来の友人の如く、ベタベタと接した。
勿論理由は先に述べた通りなのだけど、傍から見た人は噂も追加されて、私たちを珍妙な目で好奇の目に晒されていた。
言うまでもなく一番それらの目に晒されていたのは伽華さんなのであった。
どうしてまだ関われるのだろうか。はっきりは言われないけれど、その様な圧力は存在した。
重々承知の上なのだろうけど、これで本当にいいのだろうかと他意はないけれど、思ってしまった。
「大丈夫だってさ~。私の家泊まるのは~」
「おお。これで公認だわ。じゃあ。帰路でスーパーとか百貨店とか寄ろうよ。パーティーしましょう」
「パーティ~……?」
「ほら、タコパとかなんとかパーティーとか…。泊りがけならパーティーしたいわ」
「ええ…。飽く迄も事件を起こさせないという理由で来ているのに、まるで主目的がパーティーみたいじゃないですか」
「いやいや。そうやって犯人に誤認させるというのも粋ではなくて?」
「粋かなあ」
「まあ。結局、楽しまなければ。そんな難しいことに囚われていても特に視点は変わらない」
「それはそうですけど……」
「楽しいことを知っているのは自分だけだよ。自分の機嫌は自分で取るみたいのは嫌いだけど、私は他人の機嫌を取るのはうまいんだ。そして、その他人のための行為を自分のためだって誤認するのもうまいの」
「なんかそれはちょっと違うと思うけど」
「違ってもいいよ。パーティーすれば忘れる。私はそういう奴なんだわ」
天ちゃんは何故だか悲しい目をした。どこか上の空で語った。忘れることを本当はまだ知らないのかもしれない。
こんな思考をするということは恒常的にそうなのだからだろうか。でも、今確実に言えることは天ちゃんは二つの事件が要因で陰で何かを言われている。そのことにひしひしと心の奥底に澱として溜まっているのだ。
けども、それでも「まあ。ちょっとでも不安そうな顔を見せる凛香には安心して欲しいしね」と一点の曇りもなく言っている天ちゃんはまさに天であった。天界的に満点である。
しかし、これも何とかした方がいいのだろう。人間はそんなに強靭ではない。放っておけば狂人に成り果てる。そのパーティーとやらで天ちゃんを楽しませれば幾らかマシになるのだろう。忘れるほど楽しいパーティー を開催するほど私に知識は不足しているけれど、これもまた無駄な詮索で余計なお世話でしかないのだった。
どう考えたって、今の無力の私では上手くやれない。無神経な言葉しか選んでやれない。
例えば、外国に行って翻訳機を取り上げられている状態。それがサイコメトリーのない元神。
空気読む練習を一切合切行っていないそして、知識を捨てた私では思考の暴力で何とかするのも無理だった。屋はり無力だった。
終始デパ地下のスーパーで買い物をしている最中であってもない頭を節絞っていた。酷い顔をしていたと思う。
ここで同級生に出くわすと伽華さんが同情されるだろう。
両手に花ならぬ、両手に不審者でしかない。
「ねえ~。うちの家たこ焼き機あるってさ~」
「ホント?じゃあ。タコパ。タコパ決定!」
「確かにパーティーって言えばタコパな気がする~。それ以外は聞いたことないかな~」
「私もそれ以外聞いたことないわ。そもそもパーティーなんてよくわからない」
「自分で言って置いて~?」
「そりゃその場のノリだわ。大体パーティーとか英検だけでしょ。ねえ」
パーティーの解像度が全くない。
確かに英検は常にパーティーしているような印象だけども。それは三級とか準二級とかのお話でしょう。
「ねえー。恵神さあーん」
「あ、うん。えっと。タコパーの他にオコパー、お好み焼きパーティーの略称で、オコパータコパ―の日が確か十月ほどにあったと思う」
「おう……。こういうものって聞いてないって突っ込むようなやり取りじゃないの?」
「聴いてたけど……?」
「うん…。まあ。そうよね。それが当たり前なんだけど……」と若干の困惑を見せながらも必要なものを買うだけ買った。
たこ焼きの具材やら、お菓子やら。挙句の果てには化粧品だとか。高校生には少し出すのに渋る金額を軽々と支払う天ちゃんは何者なのだろう。私はその辺余裕があるので、出せば良かったとも思っていた。




