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Resign  作者: Nomulesse oblige


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11/18

11、私には漠然とした不安感が渦巻いていた。

 私には漠然とした不安感が渦巻いていた。

 いいや、別にいまの現状に不満感が募っているという程には暗澹とはしていない。その逆で、不満感がなさすぎるというのが私の不安感の正体であるのは愚鈍な私でも推断できた。


 端的に言えば私は興奮を隠せていなかった。

 数百年ぶりか、数千年ぶりか。


 これくらいの期間、ただ単調な日々を送っていた私にとってこの事件は不謹慎であるもののどうも過剰に反応してしまうのだ。


 君たちも百年ぐらい娯楽を立ってみるといい。私のこの感覚が分かるはずだ。

 まあその前に弱っちい人間ならば死ぬけれど……。

 だから、私は今の状況が案外一番健全な状態なのだろう。


「大丈夫かなあ」


 今度は私の方へ向き直ることはなく、普通に教室を歩いて話掛けに来た。

 この騒動のせいで一時間目乃至、どこまでそうなるかはまだ公表されていないが、永遠と自習らしい。自習エンドレス。


 一応その雰囲気を味わってみようかと参考書を広げるけれど、まあ。自習になる訳もなく、天ちゃんは私を訪ねて来たのだ。

 さっきまで、事情聴取を受けていたものだからそれの愚痴でも吐くかと思ったけどそうではないらしい。


「まあ。多分心配はそないしなくてもいいじゃないか?」

「それは、そうだけど……。それの不安を抜いたとしても不可解なことが多すぎる」


 まあキリストのように立てかけるにはちょっと意味の分からなさを通り越して、不気味さを感じるというものだ。


「だから、この事件。ちょっと考えて見たのだけれど」

「解決しようと試みているんですか?」

「そこは考えるまでもなく、そりゃそうだわ」


 その堂々たるいいっぷりに私は感銘を受けた。

 今時ここまで自信ありげに言える人は中々いないのではないだろうか。

 私は無力である。そういった自覚と言うかそういう他力本願を身に着けてしまう年頃であるのに……である。

 だからこそ色々な人に慕われるのだろう。

 私もそれに感銘を受けた。よしちょっと、ホントちょっと考えて見ようか。


「そうですね。まずどうしてこんなことしたのか、これはどういう意味があるのか?と言うことが問題でしょうか?」

「そうですわ。その一つ一つが謎に包まれていて、複雑怪奇と化しているわ。おかげでさっぱり分からない」

「じゃ~。どこを問題にするのか考えよ~よ」と優等生的な伽華さんが来たのだから、もう自習はないのと悟った。


 周りを見ると皆駄弁り散らかしている。そりゃそうだ。監督する先生がいないのなら、そして事件が起こった後の教室など進学校であってもかのようになってしまうのだ。


「えっと。問題と言うのはどういうこと?」

「だから~。問題を間違ったら、誤読してしまえば、そもそも正解に辿り着きはしないでしょ~。だからそれを考えましょ~って話~」


 その着眼点はとても素晴らしい。伽華さんは十分に探偵に向いている。


「えっと。どこを問題とするのか。それは考えるまでもなく、さっき恵神が言った通り、どうしてこんなことをしたのか、これはどういう意味があるのかは大前提として、どうして舞なのかは考える余地があるわ」

「そうだなあ。どうしてかあ。最も適当な答えは直ぐ思いつくけどね~」

「なんなの?」

「偶々。偶然。偶さか」


「それは一つの案で、通り魔的な理由で極ありふれているけれど、すっきりと噛み砕くにはあっさりし過ぎないかしら?」

「でも身近ながら、忘れそうな案が出て来たんだ。ちょっとは片隅に置いてここからは考えるべきなんだろう」

「偶然を考えて?なら、外部の犯行も考えるべきなんじゃない?」

「それは完全に排除することは出来ない可能性ではあるが、よく考えて見るべき」

「う~ん。犯行は朝のホームルームの間に行われたと、そう考えるのが妥当かな~。だとすると大体十分間程度であの状態にした訳で~。十分な時間だね~」

「十分だけど、その十分間で舞を襲って、あの大掛かりなことをして、逃走する。実現可能ではあるね。ああ……範囲が広すぎるわ……」


 天ちゃんは絶望的な表情を浮かべた。

 この町の人口は数十万以上を数える。それを分母に添えれば絶望もしたくもなる。

 しかし、そうではない。確実的に違った解釈であると断言できる。


「あの大掛かりなことはおそらく物の数秒で執り行われた可能性が高い。あれはそういう状態だった」

「そう言う状態って、そんなん分かるの~?」

「気絶と言ったから」

「気絶?どこがどう重要なの?」

「気絶と失神は明確に違う。気絶は長くとも二分程度と言う定義がある。失神はボヤっとした感覚はないと言う。で、救急車に乗っていいた医者が言ったのは気絶だった。言った通りすぐに小野倉さんは目は覚めたでしょう?病院には運ばれたけど」

「確かに」

「じゃあ。私たちが発見した当時から遡って二分…一分そして少なくとも三十秒……。考えて見たけど無理ではないかな?不可能犯罪だわ」


「でも、無理に考えて見るけど~そういう仕掛けを作るしかないよね~」

「それはどうやって証拠を隠すんだ?」

「それは……。う~ん。う~ん。分からないね~」

「あれじゃない?それも仕掛けがあってそれは今もどこかにあるとかないとか……」


「これ以上話していると突飛な話になりそうだから、別の所を考えようか」

「じゃあ。犯人とか?内部犯なんでしょう?ならちょっとは考えやすそうだわ」

「内部犯なら大分絞れる。ホームルームを出席している人と、小野倉さんと関わりの薄い人を除外する。その大掛かりなことが遠隔で出来たことは考えないことも必要だ」


「どうして?」

「どうしてって~。天。そうしたら、地球人口八十億余りの人が被告人になり得るでしょ~」

「衛星を使ったならどうにかこうにかなりそうだが、考えるのも難しくなるから、除外。当たり前」

「とは、言われても結構な絞られた感があるけど、それでもちょっと考えてもそっから絞れる気がしないわ。恵神は転校して知らないと思うけど、舞は意外と顔が広いのよ。良くも悪くも陰陽に」


 そう言えば、そうだった。

 私は小野倉舞に付いて一つも知らない。これは行動、振舞から少しの口角に動きでその性格を類推しているだけに過ぎない。されども正確ではある。

 これゆえに実地調査を行っていない。


 行ったとしても、この印象は変わることはないだろうけど、しかし、サンプル的に欲しいものはある。

 その欠席している者の小野倉舞への印象と言った所だろうか。

 慕われているのか、恨まれているのか、羨まれているのか、将又どうでもいいと思われているのか。


「その中だと多分恨まれているの部類に入るんじゃない?」

「どうしてそう言うことが言えるんだ?」

「だから、良くも悪くも顔が広いからだよ。舞は恋愛関係のトラブルは私も枚挙にいとまがない程度には想像を絶するもの保有しているに違ない」


 断定で言った。

 色々不確定要素が多いような事象なのに断定形で言った。

 イレギュラーと言うか、薄々には分かっていたのだろうけど、ここにして、その問題の複雑怪奇さにはっきり言って大層面倒臭く感じた。棚上げしたかった。


 じゃあ絞れたけど、これ以上は……。なんて言う行き八方塞りじゃないか。せめて小野倉さんは八方美人であってほしかった。

 ここまで面倒ではなかった。


「でも、完全に除外出来る人もいるわ。このクラスだけなら……きずなさんとかは……私でも見たことないくらい学校に来てないね」

「きずなさん……」

「きずなさんは多分考えなくても十分よ。考えても取り越し苦労かも」

「そうならさ~。天?舞をそのようにした犯人は自ずと夏夏呼にならない~?」


 伽華さんはギョッとする発言を投げかけて来た。

 寡黙であったのに短兵急に。


「いやあ……そんな冗談……。冗談……」


 みるみるとした内に顔が青白く染まっていく。冗談には程遠い回答だったのだろう。


「いや、だってさあ~。クラスで休んでるなんて今日はきずなさんと、夏夏じゃん~。尚且つ舞と距離が近くて、恋愛的には好敵手と言える存在でしょ~」

「それはそうだけど……」

「動機がない……。違う。いや、あり過ぎる。しかし、それらは全て冗談紛いのことで、常套句みたいな戯言じゃないのかしら?」


「返って悪だと分かりやすいと、それを否定したくなるのは分かるよ~。けど……検討するには十分な状況証拠があるんだよ~」

「でもさ。これはこのクラスに犯人がいると言った仮定のもとの机上の空論だわ。だから、他のクラスを調べましょう?そこからでも断定するのには遅くはない」


 天ちゃんの額から汗が滴り落ちた。

 途轍もない緊張感で必死に庇おうとして、絞りだした言い訳とも取れそうな言葉だった。

 そんな言葉でも議論に値するし、解決を前進させる一言ではあった。

 伽華さんもそこは同意で、コクコクと首を縦に振っていた。


 ならば、と言うことで、この授業時間が終わった後、クラスの名簿を確認する作業を行うことにした。

 この学校は一組から五組まである。大規模とは言えないが中規模でもない程度の組数ではあった。

 私たちは最後のクラス。五組だった。

 五組であったから四組から順繰りに見に行くだけだった。次は三組、二組、一組。

 組が進む度に発汗量が増えて行った気がする。


「……」

「……」

「……」


 そして私たちは大層絶句をした。

 なぜならば、欠席者は確認できなかった。


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