94 モヤモヤするの(1)
5人の自由時間。
「あのカフェかわいい〜」
「あとで行こ」
なんていう橘と日向の声も、どこか角ばっている。
そして、その瞬間、しん……っとしてしまう。
晴れた空の下。大勢のざわめきの中で。
莉子と僕は、思いっきり気まずい空気を醸し出していた。
どう考えても、昨日のが原因だよな。
話しかけようとすると、思いっきりあからさまに避けられてしまう。
橘と日向が気を使ってくれていて、それでもなんとか沈黙が続かずに済む、程度のものだった。
「どうしたもんかな……」
困り果てた声が、思わず漏れた。
ホテルでは、夕食は食堂でとる。
部屋ごとにテーブルが分かれており、それぞれ部屋のメンバーが揃い次第食事になる。
僕は、莉子の後ろ姿を捉えると、慌てて食事を終えた。
食堂の前で、莉子が食事を終わるのを待つ。
「莉子」
話しかけると、隣にいた女子たちが、困った顔で譲ってくれる。
莉子は、「へへっ」と硬い笑顔を向けてくる。
取り繕った笑顔。
そんな顔をして欲しいんじゃないんだ。
「話が……」
そう話し出すと、莉子は周りをキョロキョロと見渡す。
「あたし、ちょっと忙しいから、話があるならメッセージでいいかな」
莉子はそう言って、僕が捕まえようとした手からスルリと逃げていった。
肩までの髪が、くるりと後ろを向く。
ここで逃したら……今までと同じだ。
「莉子」
その腕を捕まえる。
「本当に、大事な話だから」
「え……」
莉子がじっと僕を見る。
そして、やっと、
「うん」
と返事をしてくれた。
そうと決まればどこか場所を変えなくては。
けど、この手を離してしまえば、また莉子がどこかへ行ってしまいそうだから。
僕は、その手を引いたまま、宿泊場所からは反対側のホールへと足を向けた。
ホテルのホールは、休憩スペースになっている。新聞や雑誌が置いてあり、自由に読めるようになっていた。
大きな窓の近くには、ゆったりと座れる革張りのソファがいくつも置いていた。
そこへ、その手を捕まえたまま、座る。
莉子は、仕方なく少し離れて、座った。
「ごめん」
そう咄嗟に謝ると、それを遮るように、莉子が、
「なんで謝るの?」
と口にする。
「他のやつとは、二人きりにならないって、約束したのに」
そんな約束をしたにも関わらず、まだアンナに付き纏われてるなんて、莉子からしたら嘘つきでしかないよな。
「そうだね」
莉子が、また硬い笑顔を見せる。
「うん、わかった」
わかった?
「あたし、そのごめんを受け入れるから。許すから」
許すって……。
許すって、そんな顔じゃないだろ。
莉子は、泣きそうな顔をしていた。
目には涙がたまっていて、今にも泣きそうだった。声も、微かに震えている。
「だから、今は、ね」
震える手で、僕の手を離そうとする。
だからそれ以上、僕は莉子を捕まえることは出来なかった。
走って行った莉子の髪の残り香が、僕の鼻をくすぐった。
仲直り出来るのでしょうか!?これでも前進はしてるはずなんですけどね。




