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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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95 モヤモヤするの(2)

「大丈夫?」

 部屋に入るなり、優香が話しかけてくる。

「大丈夫。ただ……」

 しょんぼりしたまま、部屋の隅に陣取った。

「あたし……、」

 言いかけて、キョロキョロと見渡す。万が一、アンナちゃんがいたら困るからだ。

 けど、部屋には優香と綾以外にはいないようだった。


 3人で座り込み、内緒話のように話す。

「あたし……、あの時。みんなで布団に隠れた時、尚が布団にとびこんだの、見たの」




 そう、あたしは見たんだ。


 尚が布団に入って行くところ。

 けど、あたしは尚の布団に入って行くことはできなかった。

 そりゃそうでしょ!?布団に入って行くなんておかしいでしょ!?

 実は少しだけ考えたけど、流石にそれは出来なかった。


 そこであたしは見つけてしまった。

 アンナちゃんは、じっと尚のことを見てた。

 もちろんそれは、アンナちゃんが尚がどこの布団にいるか知っていたってことだ。

 そして、ゆっくりと、それでも間違いなく尚の布団に近づくと、アンナちゃんは下から潜り込んだ。


 …………!!


 嘘でしょ……?


 そして、あろうことかアンナちゃんはこう言ったのだ。

「ごめん、ここ、尚人の布団だったんだね」


「え…………」


 嘘……!知ってたくせに……!


 その一瞬で、わかってしまった。

 尚が言ってたの……ホントだったんだ。アンナちゃんに騙された、なんて。




「だからあたし、尚が悪いんじゃないってわかってるのに」

「アンナちゃんにまだ騙されてたなんて。アレ、全部演技でしょ」

 優香は呆れ気味だ。

「そこまでは……、」

 思い返す。

 確かに、ずっと怪しいと思ってた。

 けど、全部だなんて。そう言い切ってしまうほどなのかとも、思ってしまう。

「言わないけど」

 綾が、にっこりと笑う。

「友達を、信じてたんだよね」

 その言葉に、優香が夕食後でも隙のない唇を尖らせた。


「もう尚が悪くないってわかってる、けど、あたし、わかってるのにモヤモヤするの。アンナちゃん、ズルいって思う」


 それは、あたしの正直な気持ちだった。

 アンナちゃんはズルい。

 きっと、あたしが布団に潜り込んでも、尚は受け入れてくれたのに。


「それで、嫉妬の炎でぴえんなのね」


「出来なかったのはあたしの方なのに」


 落ち込むあたしに、優香がニヤリと笑う。

「恋愛は、タイミングが大事、って聞くよ」


 その言葉に、危機感を覚えたあたしは、よほどひどい顔になったらしい。それを見る綾の顔も衝撃的なことになっていた。


「慰めてくれるんじゃないの?」


「自分からどーんと行くことも大事だよ」


 自分から……。

 そうだよね。

 あたしだって、負けてられないんだ。

 モヤモヤするくらいなら、自分から行かなくちゃ。


 そこで、目の前で寸劇が始まった。

「『尚……!あたし、あなたのことが……、好きなの!!』」

「ぷはっ!!」

 あまりの恥ずかしさに、あたしの顔が真っ赤になった。

「『莉子……僕と同じ気持ちなんだね。もう離さないよ』」

 綾の尚は思った以上にイケメンだ。

これでも前進はしてるはずなんですよね。

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