表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
93/95

93 修学旅行ってやつ(5)

 解けた金髪が、モゾモゾと動く。

 目が合うと、「あっ」と驚いた顔をした。

「ご、ごめん、ここ、尚人の布団だったんだね」

 アンナだった。

「……ああ」

 追い出すわけにもいかず、ただ、息をする。


 しん、と部屋が静まりかえる。明かりの消えた室内。大勢の息をする声や、微かな笑い声を耳にしながら、じっとその場で待つ。

 と、それほど待つこともなく、誰かが入ってくる。

 足音からして、大柄な男のようだ。間違いなく先生だろう。

「…………」


 緊張の時間。

 とん、と腕に触れるものがあった。

 腕一つ分空いていたはずのアンナとの隙間は、いつの間にやらなくなっていた。

 ここで声をあげて布団から立ち上がるわけにもいかなかった。


 腕に、柔らかいものが当たる。

 どうやら、アンナが僕の腕を抱え込んでいるようだった。腕に、アンナの脇だか腹だかが押し付けられていた。

 変な汗が噴き出る。

 なんでこうなるんだよ……。


 莉子はどうしただろう。

 ……まさかどこかの男とこんな風になっていたりしないだろうな?


 先生が、無言のまま、部屋を立ち去る。

 寝ているように見えただろうか。

 何も言わなかったということは、寝ている人間を起こさないように、なんていう理由がしっくりはくるけれど。


 大丈夫だと確信できるほどの間があり、コソコソとそれぞれの布団から出てくる気配がする。

「行った?」

「大丈夫そう」


 僕はほっと息を吐くと、振り払うようにアンナを突き放すと、部屋を見渡して莉子を探す。


 あ……。


 莉子は、思ったよりも近くにいた。

 一つ向こうの布団。

 困ったように照れ笑いを浮かべる莉子の隣には、日向がいた。


「なんで……」


 隣にいたのに。

 肝心な時に限って、莉子の隣には僕じゃない誰かがいた。


 日向も少し照れつつ笑っているところをみると、そういう状態になったんだろうって予想がついた。


 莉子が、ふいっとこちらを向く。

 けど、僕の隣には、眉をハの字に曲げて「ごめんなさい」なんて言うアンナが、僕を見上げていた。

 ……謝るくらいなら、そばに寄ってこないで欲しいのに。

 莉子が、目を逸らす。




 小さく華やかなざわめきと共に、女子たちがいなくなったあと、それぞれの布団に潜り、やっと落ち着いた空気が流れた。

「尚人くん?」

 日向の声。今は、あまり聞きたくはなかった。ので、聞かなかったことにする。

 せめて、何もなかったと言ってくれたら。

「不可抗力だったんだよ」

 不可抗力……?

 それは、他の方法がなかったのでやってしまったということで。

 む〜っと日向を睨みつける。

「一度地獄に堕ちたら許してやる」

「なんでだよやだよ」

「殴らせろ」

「やだよ」

もぐりこんできたのはアンナちゃんでした!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ