93 修学旅行ってやつ(5)
解けた金髪が、モゾモゾと動く。
目が合うと、「あっ」と驚いた顔をした。
「ご、ごめん、ここ、尚人の布団だったんだね」
アンナだった。
「……ああ」
追い出すわけにもいかず、ただ、息をする。
しん、と部屋が静まりかえる。明かりの消えた室内。大勢の息をする声や、微かな笑い声を耳にしながら、じっとその場で待つ。
と、それほど待つこともなく、誰かが入ってくる。
足音からして、大柄な男のようだ。間違いなく先生だろう。
「…………」
緊張の時間。
とん、と腕に触れるものがあった。
腕一つ分空いていたはずのアンナとの隙間は、いつの間にやらなくなっていた。
ここで声をあげて布団から立ち上がるわけにもいかなかった。
腕に、柔らかいものが当たる。
どうやら、アンナが僕の腕を抱え込んでいるようだった。腕に、アンナの脇だか腹だかが押し付けられていた。
変な汗が噴き出る。
なんでこうなるんだよ……。
莉子はどうしただろう。
……まさかどこかの男とこんな風になっていたりしないだろうな?
先生が、無言のまま、部屋を立ち去る。
寝ているように見えただろうか。
何も言わなかったということは、寝ている人間を起こさないように、なんていう理由がしっくりはくるけれど。
大丈夫だと確信できるほどの間があり、コソコソとそれぞれの布団から出てくる気配がする。
「行った?」
「大丈夫そう」
僕はほっと息を吐くと、振り払うようにアンナを突き放すと、部屋を見渡して莉子を探す。
あ……。
莉子は、思ったよりも近くにいた。
一つ向こうの布団。
困ったように照れ笑いを浮かべる莉子の隣には、日向がいた。
「なんで……」
隣にいたのに。
肝心な時に限って、莉子の隣には僕じゃない誰かがいた。
日向も少し照れつつ笑っているところをみると、そういう状態になったんだろうって予想がついた。
莉子が、ふいっとこちらを向く。
けど、僕の隣には、眉をハの字に曲げて「ごめんなさい」なんて言うアンナが、僕を見上げていた。
……謝るくらいなら、そばに寄ってこないで欲しいのに。
莉子が、目を逸らす。
小さく華やかなざわめきと共に、女子たちがいなくなったあと、それぞれの布団に潜り、やっと落ち着いた空気が流れた。
「尚人くん?」
日向の声。今は、あまり聞きたくはなかった。ので、聞かなかったことにする。
せめて、何もなかったと言ってくれたら。
「不可抗力だったんだよ」
不可抗力……?
それは、他の方法がなかったのでやってしまったということで。
む〜っと日向を睨みつける。
「一度地獄に堕ちたら許してやる」
「なんでだよやだよ」
「殴らせろ」
「やだよ」
もぐりこんできたのはアンナちゃんでした!




