92 修学旅行ってやつ(4)
無理やり莉子の隣をゲットする。
周りから生暖かい視線を感じたけれど、無視。
「じゃあ、王様ゲームの続きやるかぁ」
「絶対、やってたの大富豪じゃん」
「配り直そー」
冗談を言い合いながら、大人数で大富豪が始まる。
肩に触れるほどの距離で、莉子が笑っている。
薄いTシャツ姿で。
心なしか、シャンプーの匂いがする。
いい匂い……。
いや、シャンプーは備え付けのものだろう。ここにいる大半のやつらと同じ匂いだ。
せめてその姿を心の目で見れないだろうか、なんて隣の存在に集中しつつ、僕らは大いに笑った。
ゲームの結果は散々だった。
「貧民だれ?」
「僕」
言いながら、富豪である莉子にカードを差し出すと、「にししっ」と偉そうな笑顔が返ってきた。
ゲームの結果は散々だったけれど、永久に大富豪を続けたいと思えるほど楽しい夜だった。
そんな風に、幸せを噛み締めている時だ。
「こんにちは〜」
と、やって来たのはアンナだった。
「ここに集まってるって聞いて」
えへっと笑うアンナに、正直会いたくなかったと思ってしまう。
さすがに、そう思うのはよくない、気がする。
クラスメイトなんだし。相手は、謝ってきたわけだし。
けど。
「尚人」
と、にっこりと笑顔を作りながら、隣にいた橘を押しのけ隣に座って来たところで、微かな嫌悪感を無視することはできなくなった。
莉子との間じゃなくてよかったと言うべきか。
「カードゲーム!」
言いながら、僕のカードを覗いてくる。こういう仲のいいアピールは、正直やめてほしかった。
「どういうルールなの?」
なんて聞いてくれば、もう相手をしないわけにもいかない。橘が助け舟を出そうとしてくれたけれど、結局アンナは、橘の説明をうんうんと聞きながら、僕のカードを覗き込んでいた。
カチカチと、時間は経過する。
なんだかんだで白熱したゲームは長時間続き、お菓子の袋も3袋がカラになった。
その時だった。
「やっべぇ、先生の見回り来るぞ」
そう言いながら入ってきた男子生徒の声に、全員が示し合わせたように壁の時計に目をやった。
時刻は9時50分。
9時半には自分の部屋へ戻り、10時には就寝という予定になっていた。
わっ!となったみんなの行動は早かった。
飛び跳ねるように全員が動く。トランプが片付けられ、布団が敷かれ、それぞれがわっと布団の中に潜り込んだ。
まだ就寝時間までは時間があるのに全員寝ているというのは無理があるような気もするが、見回りの先生と話したくない全員が全員、布団の中に潜り込んでしまったのだ。
莉子、どこ行った?
もちろん、布団の数は、人数分ない。
ほとんどの布団の中に2人ずつ入っているはずだった。
莉子をもっと早く、捕まえておけばよかった。
そこへ、誰かが僕の布団の中へ潜り込んで来た。
ギョッとする。
入ってきたのは……、もちろんこの人ですよね!




