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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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82 関係は変わっていく?(2)

「莉子!パス!」

「はい!」


 目の前で、楽しげなバスケが繰り広げられる。

 そんな莉子を眺めながら、僕はつぶやく。

「楽しそうだよな」

 隣りにいた日向は、その光景を無言で眺めてから、

「だな」

 とだけ返事をした。


「んで?やっと仲直りして、デートできた先がここ?」

「……うん」

 日向が苦笑する。

「ここがいいって言うんだから、仕方ないじゃん」

「それはアレだな。”デート"だと思われてないな」

「僕、けっこう勇気出して誘ったんだけど」

「……誘ってないときと行動が同じ」


「兄貴とは、動物園行ったのに」

「ああ、そりゃ、兄貴とデキてるからお前とそんななんだろ」

 それは、考えたくない事実だった。

「…………次は、もっと具体的に誘うよ」


 それはそれとして、それでもバスケは楽しかったし、莉子も楽しそうだった。

 

 雲が流れる。

 薄曇りの空の下で、莉子が笑っている。

 二人きりでこの笑顔を引き出せないのは癪だけれど、笑ってくれてるなら、よかった。

 そう思う気持ちも、嘘じゃない。


「莉子!試合しよ!」

「じゃあ俺らと3人!」

 莉子が、20代の男二人に囲まれる。

 それを見るこっちは気が気じゃないっていうのに。

「勝利の女神になっちゃうな〜」

 なんて、本人は呑気だ。


「僕も」

 と、仕方なく対戦相手として、莉子の前に並ぶことにする。

 隣には、日向と、最年少中学3年の少年が並んだ。


 かくして、3on3が始まった。


 20代の二人は、僕よりも背が高い。

 目の前に立たれると、ボールの持って行き場がなくなる。

「日向!」

「ほい!」

 僕のパスに、日向がすかさず反応する。

 しかし、敵の僕へのマークは外れない。

 けど、ここで何もしないわけにはいかなかった。


 日向が、中学生にボールをパスする。その瞬間、敵が横目でそれを確認したのをきっかけに、僕は反対側へ回り込み、ボールを受け取った。

「どりゃあ!」

 莉子が僕の前に立ち塞がる。

「させるかぁ!」

 本気のわりに、殺陣のまねごとでもしてるんじゃないかと思われそうな叫び声。


 莉子の頭越しに、ボールをシュートする。

 ボールは、きれいに弧を描いて、ぽすっと網の中へ。


「おおっ」

 莉子の感心する声に、僕はドヤ顔を返した。


 そんな場面もありつつ、試合は僅差で僕のチームが勝利した。

「カッコつけたいんだろ……」とか「相変わらず尚人が面白い」とか、そんなささやきが耳に入りつつ、だ。




 昼頃、公園を出て、二人で昼食に向かう。

 流石に莉子とデートの時まで、みんなと昼食を食べる気にはなれなかった。


「おいしい」

 オレンジジュースに、莉子が感嘆の声を上げる。

「駅の近くにこんなお店があるなんて知らなかった」

「看板以外、店っぽいものないもんな」


 そして、出来るだけみんなが来なさそうなオシャレなカフェに入ったわけである。


 やっと、二人っきりだ。


 パンケーキを美味しそうにつついている莉子を、まっすぐに見る。


「莉子、あのさ、」

日向くんは、予測をして動くのが得意です。小回りがきくタイプ。

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