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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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81/81

81 関係は変わっていく?(1)

「もういいでしょ!」

 力ずくで尚の腕から逃げようとして、腰のあたりにまとわりついた尚を引きずるような形になった。

 とはいえこの、あたしの倍くらいありそうな体重を引きずるなんてどだい無理な話で、あたしの腰に引っ付いたまま尚は床に突っ伏した。

 あたしは必死で前へ進もうと床にすがりついた状態のまま、動けずにいる。

 側から見れば、パーティーゲームで失敗して絡んでしまった二人みたいに見えることだろう。


 そんなマヌケな格好でいるのにも関わらず、尚は、

「明日、二人でどこか行こう。やり直したい」

 なんて呟く。


「わかった。わかったから」


 確かに、夏休みは明日までだ。

 だから1日遊びに行くなら明日が最適ではある。


「どこか……」

 尚が言いかけたのを遮って、

「バスケがしたいな」

 なんて提案してみる。


 それは、こんな状態からの突然二人きりは緊張してしまいそうだったというのもあるし、久しぶりにいつも通りの会話をしたかったというのもある。

 何より、友達として出かけるのに、拓真との本当の“デート”なんかと比べてしまいそうで怖かったのだ。


 出来るだけ、今まで通りに。


 尚は、一瞬ちょっと複雑な顔をしたけれど、気を取り直したのか、決意の目をあたしに向けた。

「わかった」


 そう言うと、颯爽と窓を通り抜けて自分の家に帰って行った。

 そのあとは、呆れた顔の拓真が、やっぱり困った笑顔を見せて、黙ったまま窓を閉めた。

 それだけだった。


 なんだか少し気まずい気持ちを抱えながらも、あたしはあまり眠れない夜を過ごした。




 翌日は、Gパン、Tシャツ、キャップ、なんていう、少し間違ったら小学生男子になりそうな普段着で出かけた。

 つい、期待しないように、なんて考えてしまうのかもしれない。まあ、今日行くのはいつもの公園だもんね。


 家を出ると、尚はすでに家の前で待っていた。

 尚も、いつもと変わりない格好だ。

 手にはバスケットボールを持っている。


 尚は、バスケットボールをクルクルと器用に回していたのだけれど、あたしに気づくとバスケットボールを取り落としそうになり、すんでのところでボールを捕まえた。


「おはよ」

 正直、ずっと逃げ回ってたから、ちょっと気まずい。

「はよ」

 尚が、そっけなく挨拶を返した。


 二人、連れ立って歩く。

「今日は、みんな来てるの?」

「……来てるよ。夏休み最後だからさ、最後に3on3しようって張り切っててさ」

「そうなんだ、楽しみ」

 会話もどこかぎこちない。


 ぎこちないのは、やっぱりどこか距離があるからなんだと、そう思った。

 けど、尚が、

「なんで、バスケ?」

 なんて言うので、もしかして場所が思っていたのと違ったのかな、なんて思う。


 きっと、やり直したかったんだよね。前は、『どこ行きたい?』なんて言ってたし。


 あたしは、出来るだけ笑顔を作る。ちょっと泣きそうな自分を隠す。

「いつもの尚と、話したかったんだ」


 そう答えると、尚は、また気まずそうに顔を背けた。

さて、やっと仲直り、かな。

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