表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/81

80 君を追いかけて(4)

「な……っ、なんなの……っ!」


 ジタバタと暴れる。

 暴れたところで、尚に勝てるわけはないんだけど。けど、こんなところから逃げ出したかった。

 辛かった。

 尚の匂いに包まれるのも、その腕で抱きしめられるのも。


 それでもいい加減、諦めたところで、頭の上から声が聞こえた。


「ほんと、ごめん」

 静かな声だった。

「僕さ……、莉子と出かける約束してから、そのことしか考えてなくて。他のこと、見えてなくて。クラスのメッセも、全然見てなくて。ほんとに、みんなとの待ち合わせだって思ってたんだ。それから、みんなが気を利かせて二人きりにされたとか言われてさ。でも、せっかく浴衣着れたって、祭り見たいっていうから……、つい、保護者のつもりで。そしたら、鼻緒が切れて。抱きつかれて。他の子といるつもりなんかじゃなかったんだ。アンナのことも、父親の会社の社長の娘ってだけで、……押し付けられただけで……特別な感情は持ってない」


 どうしようもない言い訳だった。

 けど、その腕が震えているから。

「お願いだから……」

 その声が震えているから。

 尚が泣いているような気がして。


「いなくならないでよ」


 あたしは、大人しく床に座り込んだまま、尚の腕の中でそのつまらない言い訳を聞いていたんだ。


「もう、他のやつと二人にはならない」


 頭に、尚の吐息がかかる。

 そしてそれがあまりにも、『好きだ』と言われているような気さえして、恥ずかしくなってしまう。


 そんなわけないのに。


「まだ許せないかもしれないけど」


 その声はあまりにも。


「一緒にいてよ」


 あまりにも甘くて。


 あたしは何の返事も出来なかった。

 そしてあたしが何の返事もしないままでいたから、尚はあたしを抱きしめたまま動かなかった。


 静かだった。

 窓が開いているからか、外の音だけが遠くから聞こえた。木々のざわめき、誰かの足音、鳥の声。


 ……さすがに、抱きつかれたままは恥ずかしいんですけど。


「わかった。わかったから」


 あたしが、押し負けた形になる。

 けど、こんな風に言われたら、無下にも出来ない。

 ……結局あたしは、尚を嫌いになることなんて出来ないんだから。


「……逃げないから、離れて」


「うん」


 耳元で、尚の小さな声がした。

 耳に、吐息なのか唇なのか、判別つかないものが掠めるように触れた。


「…………」


 うん、って言ってる割には、抱きしめる力が強まってるんですけど……?


「……離れて?」

 向かい合っている尚を、ぐっと押してみるけれど、残念ながらびくともしない。


「ごめん。もうちょっと」


 !?


 その、寂しかったのかなんなのか、どういうつもりなのかわからないけれど、くっついていたいを全面に押し出したその言葉のせいで、あたしの熱は急激に上昇したようだった。

 なんて事言うのなんて事言うの!?

 ちょっとはあたしの気持ちも考えてよ!

尚人くんのターン!でも、ここでまともな告白出来ないのが尚人くんクオリティですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ