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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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73 甘えすぎちゃってたね(1)

「ちょっと考えといて」

 なんていうセリフで、その会話は終わった。

 ぼんやりした頭を抱えて、結局あたしは、拓真と一緒に帰ってきた。


 ベッドの上に座り込み、クッションをかき抱く。

「え……?」

 顔が熱くなるのを感じた。


 あたしもしかして……、告白、された……?いや、好きだって言われたわけじゃないし。よく思い出そう。なんて言われたっけ。えっと……。


『俺にしておきなよ』


 俺にしておきなよ……。

 頭の中で言葉がぐるぐると繰り返される。


 それはつまり、尚はやめて俺にしておきなってことで。それはつまり…………。


「う……うぅぅぅぅ」

 枕に顔を埋めて声を押し殺す。


 何せこんなことを言われたのは生まれて初めてなのだ。

 つまり、初告白ってことで……。


 相手は、お兄ちゃんだと思っていた拓真。


 いつから好きだったんだろう。


 そんな疑問がふと心に湧いて、すぐに、今まであまりにも無防備に床に転がっていたことを思い出し、改めて唸り声を上げた。


 こんな姿、本人に晒すわけにいかないのに。

 窓の向こうすぐのところに、本人がいるなんて。




 一晩中ベッドでゴロゴロと転がり、翌日起きたのはもう昼に差し掛かったところだった。

 興奮を冷ますと、まず考えるのが、これからどうしよう、だ。


 返事は、まだしてない。


 ……そもそも返事って、したほうがいいんだよね……?


 とはいえ。

 あたしが好きなのは、尚なわけで。

 上手くいきそうにないから、兄を選ぶなんて不誠実じゃないのかな。


 だから、付き合う、なんて考えられないんだけど。


 じゃあ、あたしたちはどうなるんだろう。


 これまでみたいに、会えなくなるのかな。

 漫画の話したり、漫画の手伝いしたり、二人でイベント出かけたり。

 慰めてくれることも多かったけど、あんなのも全部、なくなっちゃうのかな。


 そんなことを思うと、自然と涙が浮かんだ。


 そんなのはやだなぁ。


 けど、フラれた方からしたら……。


 自分のことを好きじゃないと知っている相手と一緒に、今まで通り友達が出来るだろうか。

 例えばあたしだったら?

 尚と一緒に、友達が出来るだろうか。

 ……まあ、あたしはまだ告白してないから?友達のままでいるのは可能かもしれないな。

 けど、尚とアンナちゃんがセットでいるならどうだろう。

 この子が彼女になったんだ、なんて言われて、これからも友達だけど三人で仲良くしよう、とか言われたら?

 それはちょっとお断りしちゃうかもしれない。


 あたしは、落ち着きを取り戻すために牛乳を一息に飲んだ。


 今まで、やっぱりあたし、拓真に甘えちゃってたんだな。

 ……甘えすぎちゃってたんだ。


 誰もいないリビング。

 ひとりぼっちが身に染みて、あたしはひとつため息を落とした。

そりゃあ、そうなるよね!

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