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答えのない世界で、それでも僕らは歩き出す  作者: UTARO
第一章 君の祈りに、祝福がありますように。
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Ⅸそれぞれの信念

 リアナは腰のホルスターからCell Automaticを抜く。


 赤いラインが淡く灯った。


 子どもの頃は、何度も遊びに来た教会。


 AEGISへ入ってからは、一度も近づいていない。


 砕けた正門を越える。


「……!」


 礼拝堂の入口にダブリスが倒れていた。


 腹部から大量の血を流し、動かない。


 その先、祭壇の前で一人のシスターが祈りを捧げていた。


 金色の髪に、白い修道服。


「……エレナさん?」


 エレナが振り返る。


「リアナさんが来たということは……ソラは」


「はい」


「ホンスーン支部で保護しています」


「……そうですか」


「ユリィちゃんは……亡くなりました」


 エレナは目を閉じた。


「神よ」


「どうか、ユリィをあなたのおそばへお導きください」


 エレナが祈りを終える。


 リアナはダブリスを見る。


「この人は……」


「離れぇ! リアナ!」


「……!」


 ラディスとイネスが礼拝堂へ入ってきた。


 イネスがエレナを見る。


「投降する意思はあるか」


 エレナは首を横へ振った。


「……ありません」


 胸の前で両手を重ねる。


《オラシオ》


 黄色い光が身体を包んだ。


「リアナ、下がれ」


「はい!」


 リアナが入口まで下がる。


 イネスが端末をエレナへ向けた。


「Code反応を確認。出力、レベル3相当」


 端末を下ろす。


 イネスが腰のAEGIS Bladeを抜く。


 ラディスも続いた。


 二人が同時に起動する。


 鍔から漆黒の刃が伸びた。


「レベル3相手や」


「分かっとるな?」


「ああ」


 二人が左右へ散る。


 ドンッ!!


 石床が砕けた。


 イネスの刃が右から迫る。


 ラディスも左から斬り込んだ。


 黄色い腕が二本現れた。


 ガキィン!!


 二本の刃を同時に受け止めた。


「硬いなぁ!」


 ラディスが身体を沈める。


 黄色い腕の下を抜けた。


 刃がエレナの右脚を浅く裂く。


 血が床へ落ちる。


 イネスが正面から踏み込んだ。


 もう一本の腕はラディスへ向いている。


 刃が胴へ迫る。


 残った黄色い腕が胸元へ回り込み、刃を受け止めた。


 ガンッ!!


「……なるほど」


 イネスが離れる。


 ラディスも間合いを取った。


「守る場所を変えられるんやな」


 エレナは答えない。


「もう一度いくぞ」


「了解や」


 二人が踏み込む。


 黄色い腕が床へ突き立った。


 ドンッ!!


 石床が砕ける。


 破片が二人の進路へ飛んだ。


 イネスが刃で弾く。


 その間に黄色い腕が左右へ広がった。


 礼拝堂の奥へ続く道を塞ぐ。


「……奥には行かせへんつもりか」


 ラディスが横へ回る。


 黄色い腕も動き、進路を塞いだ。


 イネスが正面から踏み込む。


 ガキィン!!


 刃と腕がぶつかる。


 ラディスも横から斬り込む。


 もう一本の腕が刃を止める。


 二人が離れる。


 エレナは追わない。


「……追ってこんな」


「ああ」


 イネスが礼拝堂の奥を見る。


「時間稼ぎか」


 エレナは何も答えない。


「なら、なおさら急ぐぞ」


「ここは通しません」


 エレナが両手を重ねる。


 黄色い光が広がった。


 二本だった腕が四本へ増える。


「来るで!」


 四本の腕が一斉に動いた。


 ドゴンッ!!


 イネスが一撃を受け流す。


 ラディスも刃で弾く。


 別の腕が横薙ぎに迫った。


「くっ!」


 二人まとめて吹き飛ばされ、長椅子を巻き込みながら床を滑った。


 イネスが立ち上がる。


「長引くのはまずいな」


 ラディスのCell Suitが点滅する。


「せやなぁ」


「ガレリアを使う」


「了解や」


 イネスは刃を停止させ、柄を腰へ戻す。


 白い鍔を持つ柄を抜いた。


「ガレリア・起動」


 白い鍔から白銀の刃が伸び、その表面を薄い光が覆った。


 ラディスも刃を停止させ、柄を腰へ戻した。


 手が腰の黒い球体へ伸びる。


「ガレリア・起動」


 低い駆動音が響いた。


 黒い球体に幾筋もの継ぎ目が走り、五枚の黒い花弁が一斉に開く。


 ラディスの姿が黒い花に覆われた。


「行くで!」


 二人が同時に踏み込む。


 黄色い腕が迎え撃つ。


 ドンッ!!


 黒い花弁が拳を受け、衝撃を横へ流した。


 イネスが抜ける。


 白銀の刃が走った。


 黄色い腕が一本、宙を舞う。


 光となって消えた。


「まだや!」


 別の腕がイネスへ迫る。


 黒い花弁が割り込んだ。


 ガキィン!!


「行け!」


 イネスがさらに踏み込む。


 白銀の刃がエレナへ迫る。


 新しい黄色い腕が生まれ、刃を受け止めた。


「切っても戻るか」


「厄介やな!」


 エレナが両手を合わせた。


 黄色い光が一気に広がる。


 四本だった腕が、さらに増えていく。


「なんやそれ……!」


 黄金の腕が礼拝堂の奥を埋めた。


 拳が降る。


 黒い花弁が高速で回転する。


 ガガガガガッ!!


 花弁が拳を次々と逸らす。


 石床にひびが走る。


 ピキッ。


 黒い花弁に亀裂が入った。


「ラディス!」


「まだいける!」


 拳が止まらない。


 ガンッ!!


 花弁が一枚砕けた。


 続けてもう一枚。


 ラディスの足が下がる。


「イネス!」


「ああ!」


 イネスが腰を落とし、柄のボタンを押した。


 ブゥゥゥン――!!


 刃を覆う白銀の光が激しく震えた。


 光が刃先からさらに伸びる。


 エレナも両手を重ねる。


 広がっていた腕が一か所へ集まり、巨大な黄金の腕へ変わった。


「来るぞ!」


「分かっとる!」


 黄金の拳が振り下ろされた。


 イネスが踏み込む。


「一閃」


 白銀の刃と黄金の拳がぶつかった。


 ドォォォン!!


 イネスの足元の石床が沈む。


「くっ……!」


 黄金の拳が押し込む。


「ラディス!」


「任せろ!」


 残った花弁が高速で回転し、黄金の拳へ食い込んだ。


 ガキィィン!!


 拳の軌道が逸れる。


「今や!」


 イネスが身体を滑り込ませる。


 白銀の刃が黄金の腕を抜け、そのままエレナの胸を斬った。


 血が散る。


 黄金の腕が崩れ始める。


 黄色い光が消えていく。


 エレナが膝をついた。


「……エレナさん!」


 リアナが一歩出る。


「来るな、リアナ」


 イネスが止めた。


 エレナは礼拝堂の奥を見る。


 誰の姿もない。


「……これで」


「私の役割は、全うできました」


 イネスも奥を見る。


「最初から……これが目的だったのか」


 エレナは答えない。


「神よ」


「どうか、ノアとソラをお導きください」


 目を閉じる。


「ユリィ……」


「今、行きます」


 最後の黄色い光が消えた。


 エレナの身体から力が抜ける。


「……」


 ラディスがその場へ腰を下ろした。


 黒い花弁はすべて消えている。


 イネスもガレリアを停止させる。


「あと少し長引けば、こちらが先に尽きていた」


「リアナ」


「……はい」


「戻るぞ」


 リアナはすぐには動かなかった。


 祭壇の前に倒れたエレナと、最後まで守られていた礼拝堂の奥へ目を向ける。


「……はい」



 教会から少し離れた丘。


 二つの影が礼拝堂を見下ろしていた。


「失敗あるネ」


 黒いローブの男が呟く。


「まぁ、最初にしては悪くなかったヨ」


「えー」


 隣の少年が頬を膨らませる。


「マザーって人、もっと強いと思ってたのに」


「つまんなーい」


「……あれが、今の彼女の限界あるネ」


 黒いローブの男は礼拝堂へ目を向ける。


(昔のあなたは、もっと強かった)


「でも、人ってすぐ死んじゃうね」


「そうあるネ」


「だから世界は変わるヨ」


「ふーん」


 少年が腹を押さえる。


「あー、お腹すいた」


「今日は何食べる?」


 黒いローブの男は少し考える。


「今日は、美味しい肉が食べたいあるネ」


「やったー!」


 赤い粒子が二人を包む。


 次の瞬間、丘の上には粒子だけが残った。


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