↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
答えのない世界で、それでも僕らは歩き出す  作者: UTARO
第六章 祝福の値段
PR
61/62

Ⅷ開演前夜

 花の街、レストラ。


 夕方。


 ソラとシンは、捕まえた二人をレストラの隊員へ引き渡し、支部で治療を受けていた。


 受付の横には黒門が一つ。その奥に数部屋が並ぶだけの、小規模な支部だった。


「ソラ君。一人で確保させることになって、すみませんでした」


「いえ。あの時は、あれが最善の判断だったと思います。捕まえた二人はこれからどうなるんですか?」


「これから一人ずつ取り調べを行います。ここからは正規隊員の仕事になりますので、ソラ君は休んでいてください」


「シンさんは? まだ背中、痛むんじゃ……」


「自分は大丈夫ですよ。取り調べと報告がありますから」


「シンさんも、無理しないでくださいね」


「ええ」


 シンはゆっくり身体を起こした。


「今夜は支部の方で泊まる部屋を用意してくれたそうです。鍵は受付でもらってください」


「分かりました。明日はどうすればいいですか?」


「朝、またここに来てください。一緒にメリディアへ戻りましょう」


「はい。明日もよろしくお願いします」


 ソラは受付へ向かった。


 カウンターにいた女性が、ソラの隊服を見る。


「学院生のソラ君よね」


「はい。寮に泊めていただけると聞いて」


「そんな大層なところじゃないのよ。すぐそこのアパートの一室に、布団を置いてあるくらいなんだから」


「十分です。ありがとうございます」


「部屋は、あの建物の二階よ」


 受付の女性が窓の外を指し、鍵を差し出した。部屋番号の書かれた札がついている。


「せっかくレストラまで来たんだし、街を見てきたらどう?」


「いいですね 少し見て回ってみます」


「この先に商店街があるから、行ってみるといいわ」


「ありがとうございます。行ってきます」


 ソラは頭を下げ、支部を出た。


◇


 通りへ出ると、店先にも窓辺にも花が飾られていた。


 商店街では、まだ買い物客が店を行き来している。


 ソラは、花を使ったアクセサリーや小物を並べた店の前で足を止めた。


「AEGISのお兄ちゃん」


 店の年配女性が、ソラへ手を振っている。


「せっかくレストラに来てんだったら、お土産でもどうだい?」


「どうして、僕がよそから来たって分かったんですか?」


「小さい街だよ。顔を見れば、すぐに分かるさ」


「すぐ分かっちゃうんですね」


 ソラは店先に並んだ飾りを覗き込んだ。


「これ、中に入ってるのは本物の花ですか?」


「そうさ。押し花にして、透明な飾りの中に入れてるんだよ。花の街ならではだろう?」


 ソラが一つ手に取って見ていると、壁のボードに掛けられた青い花のネックレスが目に入った。


「あの青いのも、見せてもらえますか?」


「気に入ったかい?」


 年配女性がネックレスを手に取った。


「こうしておけば、枯れずに残るからね。花にはそれぞれ意味もあるんだよ」


 ソラは青い花を見た。


「誰かに渡すなら、きっと相手も喜ぶよ」


「はい! これをください」


「はいよ」


 女性がネックレスを包み始める。


「そういえば、この街でおすすめの食べ物ってありますか?」


「花の形をしたお菓子が人気だよ」


「ありがとうございます。探してみます」


 女性が包み終えたネックレスをソラへ渡した。


「プレゼントかい。頑張んな」


「頑張る? ……分かりました!」


 ソラは包みを受け取り、店を離れた。


「明るい子だねぇ。ブルースターを選ぶなんて……うまくいくといいねぇ」


 ソラは少し街を見てから、寮へ向かった。


◇


 翌朝。


 レストラ支部の受付前では、シンが待っていた。


「おはようございます、ソラ君」


「おはようございます。昨日はお疲れ様でした」


 ソラは受付の女性へ向き直り、部屋の鍵を返した。


「お世話になりました。昨日、街も見てきましたよ」


「楽しめた?」


「はい。お土産まで買っちゃいました」


「よかった。今度は仕事抜きで遊びに来てね」


「また来たいです。ありがとうございました」


 荷物を持ち、シンと馬車へ乗り込む。


「あの二人の移送はどうなったんですか?」


「レストラ支部の皆さんが、ご厚意で引き受けてくださいました」


「そうなんですか」


「帰りは、ゆっくり戻りましょう」


「手綱は僕が握りますよ」


「ありがとうございます。では、お願いします」


 ソラが手綱を握り、シンも隣に腰を下ろした。


 馬車はレストラを出て、メリディアへ続く街道へ入った。


「事情聴取は、どうでしたか?」


「足の速い方はキートというんですが、『口が軽いから何も喋らない』と言って、そのまま黙り込んでしまいました」


「口が軽いから、喋らないって……?」


「そのあとは、本当に何も喋りませんでした」


「もう一人のオズマは、取り調べに応じていました。誰かに計画を教えられて、それに乗っただけだそうです。その男は見返りも求めなかったそうです」


「……その人には、何の得があるんだろう」


「分かりません。オズマの話では、髪が真っ白な若い男だったそうです。物腰も柔らかかったと」


 馬車が揺れ、シンが背もたれから身体を離した。


「背中の傷、まだ痛みますか?」


「少しだけです」


「それにしても、ソラ君は噂通り、事件に巻き込まれるんですね」


「そんなつもりはないんですけど」


「それとも、自分から巻き込まれに行ってるのか」


「違いますよ!」


「冗談です」


 ソラがシンへ顔を向ける。


「シンさんが……冗談を……」


「自分も、たまには冗談くらい言いますよ」


 ソラは笑った。


 馬車は街道を、メリディアへ向かって進んでいった。


◇


 メリディア教会の近くを流れる小川のそば。


 デリクは木陰に座り、新聞を広げていた。


 近くでは、ガイルスが片足で立ち、両手に持った重りを肩の高さまで持ち上げていた。


「ふんっ、ふんっ!」


 ガイルスは片足で立ったまま、デリクを見た。


「新聞なんか読んで、何か分かるのかよ」


「うんうん。新聞は情報の塊だからな」


「各地で、人を殺して『粛清』って書き残す事件が起きてるらしいぞ。何かの陰謀じゃないかってさ」


 ガイルスが両足をつき、重りを下ろした。


「……誰がやってんだよ、そんなこと」


「さあな。Codeが使われたと見られるって書いてあるけど、殺され方が違うんだ。全部同じ奴の仕業とも思えないな」


「各地で別の奴がやってんのか?」


「かもしれないな。メリディアでも起きてる」


「そんな話、全然聞かねぇけどな」


「この街、どれだけ広いと思ってるんだよ。俺たちの知らないところなんて、いくらでもあるだろ」


「おっ、さすがだね。ちゃんと情報を集めてるじゃないか、デリク」


 教会からエイドが歩いてきた。


 煙草を取り出して口にくわえると、デリクが火をつける。


「ありがと」


「ガイルスも新聞くらい読んでみなよ。見えてくるものが違うぞ」


「読めばいいんだろ」


 ガイルスはデリクから新聞を受け取った。


 記事を読み、眉を寄せる。


「なんだよ。今、デリクが言ったことしか書いてねぇじゃねぇか」


「デリク、説明してあげて」


「分かりました」


 デリクは新聞の一箇所を指した。


「被害者が襲われた場所も書いてあるだろ」


「おう」


「ほかの都市では、人が少ない時間や場所で起きてる。でも、メリディアは人通りがあって、すぐに見つかるような場所なんだ」


 ガイルスが記事を読み直す。


「……こっちの奴は、見つけてほしいってことか?」


「その可能性はあるね」


 エイドが答えた。


「ルシアもあちこちで調べてるよ。こっちにも一つ、気になる話が入ってきてね」


「何か分かったんですか?」


「劇場の座長をしてる信徒に、手紙が届いたんだ」


「『明日の公演で、お前の罪を観客の前に晒す』。最後には『粛清』と書かれていたらしい」


「……新聞の事件と同じじゃねぇか」


「それで教会に相談してきたんだ。本人は何の心当たりもないって言ってるよ」


「座長は、今どこに?」


「劇場だよ。明日の準備で、今夜は泊まり込むらしい。そこでなんだけど、二人に今夜から護衛を頼みたいんだ」


「明日の公演なら、見張るのも明日でいいんじゃねぇのか?」


「手紙に書いてあるのは、観客に見せる時だよ。殺すのが明日とは限らない」


「……今夜、先に殺しておくってことか」


「その可能性もあるね」


「分かった」


「分かりました」


 デリクは返された新聞を畳み、立ち上がった。


「エイドは来るなよ」


 ガイルスが言うと、エイドは片手を上げた。


「任せるよ」


 教会へ戻っていくエイドを見送り、デリクがガイルスへ顔を向ける。


「お前、エイドさんに失礼な口ききすぎだぞ」


「だって、エイドだろ」


「……分かってないな」


「なんだよ、その反応」


「準備するぞ」


 デリクは新聞を手に、教会へ歩き出した。


「なんか納得いかねぇな……」


 ガイルスも重りを拾い、あとを追った。


◇


 メリディア、商業区。


 周囲の店より一際大きな劇場は、外の照明が落とされていた。


 入口の前で待っていた座長が、二人の教会服を見て手を上げる。


「君たちが、教会から来てくれた護衛か」


「おう。何かあったら、俺たちに任せとけ」


「ありがとう。悪戯かもしれないが、よろしく頼むよ」


 座長が大扉を開けると、先にはいくつもの扉が並んでいた。


「どれを開ければいいんだ?」


「全部、同じホールへ繋がっているよ」


 一つを開けると、円形の大きなホールが広がった。


 奥の舞台には豪華な幕が掛かり、客席が何列も並んでいる。


「でけぇ。二階まであるぞ」


 ガイルスが上を見上げる。


「劇場は初めてかい?」


「ええ。なかなか来る機会がなくて」


 デリクが答えた。


「今夜は、舞台の照明を調整するんだ。光の当て方には、ちょっとうるさくてね」


「俺たちは舞台の近くで待機しておきます」


「ありがとう」


「それで、手紙に書かれていた罪って、何か思い当たることはあるんですか?」


「真っ当に生きてきたつもりでね。教会の信徒でもあるし、神に誓って、心当たりはないよ」


 座長は客席を見渡した。


「劇場も、なるべく普通の人が入りやすいようにしているんだがね」


「分かんねぇもんは、しょうがねぇな」


「楽観的だな、お前」


「では、私は作業をするよ」


 座長は舞台へ上がり、照明の位置を変え始めた。


 色を切り替え、幕に当たる光を確かめている。


 数時間が経った。


 客席の間を見回っても、聞こえるのは座長の作業する音ばかりだった。


 風が入り込んだ。


 ガイルスが二階席を見上げる。


 窓が開いていた。


「……あそこ、開いてたか?」


 舞台の方で足音がした。


 白い服を着た男が、座長の背後へ近づいていた。


 肩まで伸びた金髪。


 身体の表面には、透明な膜のようなものが波打っている。


「誰だね、君は」


「手紙は読んでくれましたか?」


 座長が後ずさる。


「……なぜ、私を狙うんだ」


「高貴な者のための演劇を、大衆にまで開いた。それがあなたの罪です」


 ガイルスは走りながら、胸元で両手を合わせて祈った。


《オラシオ》


 赤いオーラが身体を包む。


 床を蹴り、男と座長の間へ割り込んだ。


「お前が、最近『粛清』とかしてる奴か」


 男が目を見開いた。


「まさか護衛がいるとは思いませんでした」


「座長、出口に向かってくれ!」


「は、はい!」


 舞台から下りてきた座長を、デリクが呼んだ。


「こっちです」


 二人が出口へ向かう間に、ガイルスは両手を合わせたまま、赤いオーラを獣腕へ変えた。


 獣の拳を男へ叩き込む。


 男を覆う膜が胸元へ集まり、赤い拳を受け止めた。


 ぐにゅっ。


 拳が沈む。男の身体には届かない。


「その程度で、私を止められると思っているんですか?」


「一発防いだくらいで、調子に乗んな!」


 男が踏み込むと、胸元の膜がガイルスへ伸びた。


◇


「座長、ここで待っていてください」


 デリクが出口へ向かうと、扉が向こうから開いた。


「あら、もう出てきたの?」


 長い黒髪をまとめた男が立っていた。


 髪には桃色の筋が入り、白い浴衣のような衣の上へ、花柄の羽織を着ている。


 化粧をした顔。


 手には、血のように赤い細身の剣が握られていた。


 デリクは咄嗟に一歩下がり、座長を背にした。


「座長、下がっていてください」


 座長は客席の中央へ移り、座席の間に身を低くした。


「うんうん……こいつは、下手すりゃ死ぬな」


《グラセリオ》


 身体から、狐の姿をした半透明のエネルギー体が飛び出す。


 狐が右腕へ潜り込んだ。


 右腕の輪郭に光が走る。


 デリクは拳を握った。


「困ったわ……この人は斬っていいのかしら」


 デリクは踏み込み、右拳を振るった。


 男は深く身を沈め、床すれすれまで顔を下げた。


 拳の下から、赤い剣が斬り上がる。


 デリクは上体を逸らした。


 鼻先を刃が通り過ぎる。


 男は剣を止めず、斜めに切り返した。


 ギィィッ!


 デリクは右腕で刃を受け止めた。


 押し返そうとしても、腕がじりじりと下がっていく。


 デリクは腕を振り払い、距離を取った。


「……強化してるのに、斬られかけた」


 右腕から狐が飛び出し、右足へ潜り込んだ。


 右足の輪郭に光が走る。


「なら、速さでどうだ」


 右足で床を蹴り、男へ飛び込んだ。


◇


 出口の方では、デリクが剣を持った男と戦っていた。


「もう一人いたのか」


「私の護衛ですよ。万が一の保険です」


「お前、頭おかしいんじゃねぇか」


《オラシオ》


 背後へ二本の獣腕を作り、左右から殴りつける。


 男を覆う膜が打たれるたびに歪む。


 獣の拳を引くと、膜も伸びてついてきた。


「なんだよ、そのCode」


「違いますよ。祝福です」


 ガイルスが大きく獣腕を振るう。


 男は獣腕をかいくぐり、身体を覆う膜をガイルスへ押しつけた。


 赤いオーラに透明な膜がまとわりつく。


 獣腕は膜に引かれ、思うように動かせない。


「君のオーラごと、包ませてもらいますよ」


 ガイルスが獣腕の形を崩すと、赤いオーラは膜を抜けて身体へ戻った。


 もう一度獣腕を伸ばすが、再び膜がまとわりついた。


「くそっ、しつけぇな!」


「楽しんでいてください」


 男が客席へ歩き出す。


 中央では、座長が身を低くしていた。


「さて、殺しましょうか」


「やらせるかよ」


 ガイルスは両手を強く合わせ、祈った。


 赤いオーラが前方へ膨れ上がり、巨大な闘牛の頭へ変わる。


 張りついていた膜が、大きく引き伸ばされた。


 ガイルスは一気にオーラを身体へ戻し、両手をほどいた。


 膜が縮む前に横へ抜け、床を蹴って男の顔へ拳を叩き込む。


 男の身体が吹き飛び、舞台を転がった。


「危ないじゃないですか」


 起き上がった男の顔には、透明な膜が張られていた。


「その膜ごと、ぶち抜いてやる!」


 ガイルスは再び両手を合わせ、祈った。


 背後へ獣腕が伸びた。


◇


 デリクの蹴りが、男の顔へ迫る。


 男は足の下へ身を沈め、斜めに傾いた姿勢から剣を返した。


 赤い刃が、デリクの脇腹へ走る。


 蹴り足を引き、後ろへ下がった。


「……なんだ、こいつ」


 崩れた姿勢からでも、剣筋が途切れない。


 デリクは右足へ力を込めながら、背後を確かめた。


 座長は中央付近の座席の間に身を伏せていた。


 もう一匹、出すか。


「もっと……もっと……私を楽しませて」


 男が赤い剣を揺らした。


 デリクは踏み込み、右足を高く振り上げて男へ振り下ろした。


 男が身をかわし、足が床を叩く。


 ドンッ!


 床板が割れる。


 赤い剣が右足へ斬り込んできた。


 デリクは足を持ち上げ、刃を受けた。


 ギィンッ!


 剣を弾き、後ろへ下がった。


 男は剣を構えたまま、眉を寄せた。


「んーーー……そろそろかしら」


 舞台の方へ目を向け、剣を引く。


 客席脇の通路から舞台へ走り出した。


 デリクもあとを追う。


 舞台では、ガイルスが獣腕を構えていた。


「ガイルス、無事か!」


「おう! なんだ、あの女みたいな男」


 デリクが隣へ並んだ。


「油断するな。かなり強いぞ」


「マーティンちゃん。残念だけど、そろそろ引きましょう」


 赤い剣の男が、金髪の男へ声をかけた。


 マーティンは震える手で薬を取り出し、口へ運ぶ。


「分かりました、ムニアさん」


 ムニアがデリクへ手を振る。


「またね」


 二人は舞台から下り、二階席へ上がっていく。


 開いていた窓から外へ出ていった。


「追うか?」


「座長を置いていく気か?」


「……逃がすしかねぇか」


「これだけ騒げば、AEGISも来るだろうな」


「座長。俺たち、壊れたもん片づけとくから、AEGISが来たら追い返しておいてくれ」


「……何とか説明してみるよ」


 座長も加わり、三人で散らばった破片や倒れた物を片づけ始めた。


「結構派手にやったな」


 座長が壊れた舞台を見る。


「……明日の公演は、無理そうだね」


「命があっただけ、よかっただろ」


 コンコン。


 ホールの扉が叩かれた。


「夜分にすみません。AEGISです。入口が開いていたので、入らせてもらいました」


 座長が二人を見る。


「もう来たか」


「対応をお願いします」


 座長は扉へ向かい、少しだけ開けた。


 外には、黒髪を後ろへ流した少年と、大柄な隊員が立っていた。


「付近の方から、建物の中ですごい音がしたと通報がありまして」


「すみません。明日の公演準備をしていたんですが、照明を落としてしまって。その音かと……」


 ヴェインとダルトンが、扉の隙間からホールの中を見た。


 教会服を着た二人の男が、壊れた物を片づけている。


「……そうでしたか」


 ダルトンが座長へ目を戻した。


「夜も遅いので、作業もほどほどにしてください」


「分かりました。お手数をおかけして、すみませんでした」


◇


 劇場を離れ、二人は夜の通りを歩いていた。


「ダルトンさん」


「なんだ?」


「どうして、あれで引き上げたんですか。照明を落としただけとは思えません」


「俺もそう思う」


「だったら……」


「教会の人間がいただろ?」


 ヴェインが黙る。


「不可侵条約がある。Codeを使ったところも見てない。疑いだけで踏み込むわけにはいかん」


「……」


「納得いかないか?」


「はい。従いますが、納得はしていません」


「まあ、そうだろうな」


 ダルトンはヴェインを見た。


「怪しいと思ったことは忘れるな。後で何かにつながるかもしれん」


「……分かりました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。