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答えのない世界で、それでも僕らは歩き出す  作者: UTARO
第一章 君の祈りに、祝福がありますように。
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Ⅵ祭りの喧騒

 ラディスは会議室の窓辺に立っていた。


 窓の外では、収穫祭で広場が賑わっている。


「いやぁ……」


「こんだけ人がおると、探すだけでも一苦労やな」


「おはようございます!」


 リアナが会議室へ入ってくる。


「おはようさん」


「今日もかわいいな、リアナちゃん」


「もう、またそんなこと言って」


「冗談やないって」


「祭りん中でもすぐ見つけられそうや」


「えっ……ほんとですか?」


 扉が開く。


「馬鹿の言うことは聞き流せ、リアナ」


 イネスが入ってくる。


「は、はい!」


「ライナース支部長は祭りの警備指揮に出ている」


「今日の捜査は私が指揮する」


「ほな、今日はどこからいきましょう?」


「ジェイという少年を探す」


「ダブリスといつも一緒にいた人間だ」


「十代後半」


「短髪で、赤い目をしている」


「見たことがあります」


「巡回中に何度か」


「顔は覚えているか?」


「はい!」


「なら、見つけたらすぐ報告しろ」


「ホンスーン支部も捜索している」


「だが、この人混みだ」


「簡単には見つからないだろう」


「それで、ラディス」


「昨日の報告を」


「あちゃ~」


「やっぱり気づいてたんか」


「え?」


「あのあとも捜査してたんですか?」


「まあな」


「街を見るついでに、現場も確認してきた」


「結果は?」


「遺体の傷と現場の跡は一致しとった」


「ドルディアで間違いないと思う」


「ただ、一つ気になる」


「殉職した隊員が倒れとった場所」


「そこから離れた壁にも、同じ攻撃跡が残っとった」


「同じ攻撃……」


「隊員に撃ったものとは別や」


「戦闘中に外した可能性は?」


「ある」


「誰か別の人間を狙った可能性もある」


「ダブリスが意図せず放った可能性も捨てきれない」


「今の情報では判断できない」


「現場の痕跡は?」


「残しとる」


「位置も記録済みや」


「今日はジェイを追う」


「小さなことでも構わない」


「気づいたことがあれば報告しろ」


「了解!」


「了解や」



 酒場は昼前から客が入っていた。


「祭りの日は、朝からこんな感じなんですか?」


「表に人が集まれば、こっちにも流れてくる」


 店の奥では、大柄な男が酒を飲んでいた。


「少し聞きたい」


「赤い目をした短髪の少年を見なかったか?」


「ジェイか?」


「知っているのか」


「この辺じゃ有名だ」


「ダブリスの後ろをいつも歩いてたガキだろ」


「今日は?」


「さっき見たぞ」


「祭りの方へ向かってた」


「一人やった?」


「一人だったぞ」


「祭りの日は毎年あっちへ行く」


「人が多い日は稼げるからな」


「稼ぐ?」


「スリだよ」


「財布を持った奴がそこら中にいるからな」


「祭り会場へ戻るぞ」


「はい!」



 エンメルがパイ籠を覗く。


「あと少しだよ」


「ユリィちゃん、すごいねぇ」


「当然です!」


「マザーのパイは世界一だから!」


「僕もそう思う」


「ああ」


 最後の一つが売れる。


「完売!」


「三人とも、お疲れさま」


 エンメルが小さな革袋を差し出す。


 中でコインが鳴った。


「いっぱい頑張ってくれたから、ご褒美」


「こんなにもらっていいの!?」


「もちろん」


「働いた分だよ」


「……本当にいいのか?」


「いいのいいの」


「せっかくのお祭りなんだから、三人で遊んでおいで」


「やったー!」


「行こ!」


 ユリィが真っ先に飛び出す。


「待ってよ!」


 ソラが後を追う。


 ノアも二人に続いた。



 祭りの通りには、さまざまな店が並んでいた。


 焼き菓子の甘い香りが漂う。


 冷たいミルク菓子が、氷の上に並んでいる。


「見て!」


「次あれ!」


 ユリィが店を見つけるたびに走り出す。


「走ったら転ぶよ!」


「大丈夫!」


「昨日も同じこと言ってなかった?」


「今日は大丈夫なの!」


「ソラ」


「ん?」


「あの男」


 黒い帽子を被った少年がいた。


 人混みに紛れ、若い男へ近づく。


 手が懐へ入った。


 財布が抜き取られる。


 帽子の隙間から、赤い瞳が覗いた。


「……スリ?」


「ああ」


「AEGISに知らせよう」


「でも、見失ったら……」


「俺が追う」


「ソラはAEGISを探して」


「分かった」


「ユリィ」


「俺から離れるな」


「任せて!」


「絶対に前に出るなよ」


「分かってるって!」


 ソラが人混みへ走っていく。


 ノアとユリィは、見つからないよう祭り客に紛れて少年の後を追った。


 少年は祭りの通りを外れた。


 そのまま裏路地へ入っていく。


「ノア」


「追うぞ」


 二人も後を追った。



「リアナさん!」


 ソラが人混みを掻き分けて走ってきた。


「ソラ君?」


「スリです!」


「ノアとユリィが追ってます!」


「どこですか?」


「あっち!」


 ソラが裏路地を指す。


「イネスさん!」


「ああ」


「リアナはその子と行け」


「はい!」


「ラディス」


「分かっとる」


 イネスとラディスは別の通りへ回った。



 ジェイが盗んだ財布を開く。


「へっ……」


「今日は当たりだな」


「ジェイ!」


「……っ!」


 路地の入口にリアナが立っていた。


 隣にはソラもいた。


「AEGISです!」


「財布を置いてください!」


「くそっ!」


 ジェイが走り出す。


「待って!」


 リアナが追う。


 ジェイは路地の奥へ逃げ込む。


 角を曲がった。


「残念やったな」


 目の前にラディスが立っていた。


「こっちは通行止めや」


「どけ!」


 ジェイが右手を強く握る。


「一遍しか言わんぞ」


「ここでCode使って抵抗したら、さらに罪重なるで」


「……」


「やめとけ」


「これ以上、罪増やすな」


 ジェイの拳から力が抜ける。


「ええ判断や」


「リアナちゃん」


「はい!」


 リアナがジェイの腕に拘束具を掛ける。


「ジェイ」


「窃盗の現行犯で拘束します」



「捕まった?」


 ユリィが路地の入口から覗き込む。


「ユリィちゃん!」


「はい!」


「はい、じゃありません!」


「えっ」


「知らせてくれたのは助かりました!」


「ありがとうございます!」


「でも、次からは追いかけちゃダメですよ?」


「見つけたら、近くのAEGISに教えてください!」


「そのあとは、私たちに任せてください」


「……はい」


 ユリィが小さく手を挙げる。


「でも、見つけたのはノアだからね!」


「ユリィ」


「だって本当でしょ?」


「ノア君も、教えてくれてありがとうございました!」


「うん」


 少し離れた場所から、ラディスが呼んだ。


「リアナちゃん」


「そろそろ連れてくで」


「はい!」


「それじゃあ三人とも、お祭り楽しんできてください!」


「はーい!」


 ユリィが二人の腕を引く。


 三人は祭りの通りへ戻っていった。


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