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答えのない世界で、それでも僕らは歩き出す  作者: UTARO
第一章 君の祈りに、祝福がありますように。
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Ⅲ小さな違和感

「思ったより歩くなぁ。まだ着かへんの?」


「この広場を抜けたらすぐです!」


「頑張りましょう、ラディスさん!」


「いや、頑張るほどではないんやけどな……」


 広場の中央には、明日の収穫祭に使う大きな塔が建っていた。


 男たちが塔へ飾りを取り付け、その周りでは露店の準備も進められている。


「明日はここも凄い人になりますよ!」


「そら賑やかになりそうやなぁ」


「ラディス」


「分かってるって。仕事やろ?」


 広場を抜けると、大きな白い石造りの建物が見えてきた。


 正面にはAEGISの紋章が掲げられている。


「着きました!」


「ホンスーン支部です!」



 支部へ入ると、受付の女性が顔を上げた。


「リアナ、おかえりなさい」


「ただいま、アイネちゃん!」


 リアナは敬礼する。


「イネス二級員、ラディス二級員をお連れしました!」


「遠方よりお越しいただきありがとうございます」


「イネスです。世話になります」


「ラディスです。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 アイネが受付横の黒いゲートを示す。


「入館前の検査をお願いいたします」


 イネスがゲートへ入る。


 赤い光が頭上から足元まで走った。


「コア反応なし」


「身分情報も一致しています」


「お通りください」


 続いてラディスも検査を終える。


「問題ありません」


「では、リアナ」


「案内をお願いします」


「はい!」



 四階、会議室。


 リアナが扉をノックする。


「ライナース支部長。リアナ四級員です」


「イネス二級員、ラディス二級員をお連れしました」


「おう。入ってくれ」


「失礼します」


 部屋の奥には、白髪交じりの大柄な男がいた。


「遠いところご苦労さん」


「ホンスーン支部長のライナースだ」


「グランディア支部のイネスです」


「ラディスです。よろしくお願いします」


「ガハハッ!」


「二級員を二人も回してくれるとは、ありがたい話だ」


 ライナースが三人へ席を勧める。


「移動したばかりで悪いな」


「まず事件の概要だけ説明させてくれ」


「今回、うちの三級員が一名殉職した」


「町で起きた窃盗事件を追っていた隊員だ」


「容疑者は?」


「ダブリスという男だ」


 ライナースが写真を机に置く。


「喧嘩と窃盗で何度か拘留している」


「ただ、今まではどれも軽犯罪だった」


「殉職した隊員は?」


「三級員になって十年以上だ」


「現場経験もある」


 ラディスが口を開く。


「それなら、簡単にやられるような人やないな」


「ああ」


「だから妙なんだ」


 イネスが資料を確認する。


 Code:《ドルディア》


 Codeレベル:1


「……レベル1?」


「ああ」


「測定日は?」


「事件の二週間前だ」


「その時点ではレベル1だった」


「二週間……」


 リアナが口を開く。


「事件までに、Codeレベルが上がった可能性はありませんか?」


「可能性だけならある」


 ラディスが答える。


「けど、二週間でレベル2まで上がった例なんて俺は知らん」


「私も聞いたことがない」


 イネスがライナースを見る。


「その間にCodeを使った形跡は?」


「今のところ出ていない」


「ダブリスは事件までホンスーンを離れていない」


「Code使用の通報もない」


「目撃証言もなしか?」


「ああ」


 ラディスが少し考える。


「人目につかん場所で使っとった可能性は残るな」


「そこまでは否定できん」


 ライナースが答える。


「ただ、それだけで今回の件を説明できるとも思っていない」


「仮にレベルが上がっていたとしても……」


 リアナが言葉を止める。


「本当に、それだけで三級員を……?」


「そこだ」


 イネスが答える。


「Codeだけで説明できるとは限らない」


「今分かっているのは、二週間前までレベル1だったことだけだ」


「……はい」


「他に人間がいた可能性は?」


「それも調べている」


「ダブリスといつも一緒にいた少年が一人いる」


「ジェイという男だ」


「事件当日の所在は?」


「確認できていない」


「事件のあとから姿も見せていない」


「なら、そのジェイが何か知っている可能性は高いな」


「ああ」


「こちらでも捜索を続けている」


「殉職した隊員の死因は?」


「胸部の致命傷だ」


「傷の状態は?」


「まだ検視中だ」


「事件が起きたのは昨日だからな」


「今あるのは簡易報告だけだ」


「現場は?」


「封鎖してある」


「鑑識も残している」


「分かりました」


「なら、先に遺体を確認します」


「傷を見たい」


「ダブリスのCodeと関係があるのか確かめます」


「その後で現場へ向かいます」


「分かった」


「すぐに手配しよう」


「リアナ」


「案内を頼む」


「はい!」


 窓の外は、すっかり暗くなっていた。


「……もう夜やで?」


「飯くらい食べてからでもええんちゃう?」


「時間が惜しい」


「やっぱりそうなるかぁ」


「しゃあない。仕事や」


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