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答えのない世界で、それでも僕らは歩き出す  作者: UTARO
第一章 君の祈りに、祝福がありますように。
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Ⅱ新たな出会い

 今日はグランディア支部から、第二級員が二人やって来る。


「……しっかりするの、リアナ。今日は大事な日なんだから」


 制服に袖を通す。


 漆黒の生地に、鮮やかな青いライン。


 襟を整え、鏡の前に立つ。


 薄茶色の髪を左右へ分け、ツインテールを結び直す。


 鏡越しに左右の高さを確かめた。


「……こっちの方がいいかな」


 もう一度結び直す。


「よしっ」



 部屋を出て、駅へ向かう。


 通りには焼きたてのパンの香りが漂っていた。


 店先からは、料理の匂いも流れてくる。


 お腹が鳴りそうになる。


「……帰りにしよう」


 今日は寄り道している場合じゃない。


 駅の入口で証明書を提示する。


 駅員のおじさんが確認すると、顔を上げた。


「立派になったなぁ、リアナちゃん。三番ホームだよ」


「ありがとうございます!」


 リアナは軽く手を振り、三番ホームへ向かった。


 初めて入る駅だ。


 三番ホームへ着いたが、列車はまだ見えない。


「……まだかな」


 やがて遠くから汽笛が響いた。


 黒い車体に赤いラインが入った列車が近づいてくる。


 車輪を軋ませ、ホームへ止まった。


 扉が開く。


 最初に降りてきたのは、狐のような目をした男だった。


「おっ、こんな可愛い子が出迎えてくれるなんて嬉しいねぇ」


「黙れ。私の教え子に軽口を叩くな」


 隣から伸びた足が、男の脇腹へ入った。


「ぐっ……!」


 男が腹を押さえる。


 赤いポニーテールの女性が、その横を通り過ぎた。


「リアナ、久しぶりだな」


「はい! イネス教官!」


 リアナは背筋を伸ばす。


「今回はお前がホンスーン地区の案内役だ」


「はい!」


「それと、教官ではない」


「え?」


「改めて」


 イネスがリアナの前に立つ。


「グランディア支部所属、第二級員イネスだ」


「よろしく頼む」


「はい! よろしくお願いします!」


 腹を押さえていた男が手を上げる。


「……あれぇ? イネスちゃん、俺の紹介は?」


 イネスの目が男へ向く。


「その呼び方をやめろ」


「はいはい」


 男はリアナへ向き直った。


「グランディア支部所属、第二級員のラディスや」


「よろしくな」


「よろしくお願いします!」



 駅を出る。


「馬車を用意してあります!」


「ホンスーン支部までは十分ほどです!」


「いや」


 駅前では荷馬車が行き交い、石造りの店先では朝の支度が始まっている。


 軒先の看板が風に揺れた。


「人の流れも見ておきたい」


「歩こう」


「わかりました、イネス二級員!」


「階級は気にしなくていい」


「えっ?」


「仕事で示してみろ」


「それができれば十分だ」


 一瞬、返事が遅れる。


「……はい!」


「イネスさん!」


 リアナが先を歩き始める。


 ラディスがイネスの横へ寄った。


「悪女やなぁ」


「人の気持ち掴むん、ほんま上手いわ」


「イネスちゃん」


 イネスの足が止まる。


「……今、何と呼んだ?」


「じょ、冗談やって!」


 ラディスが両手を上げる。


「どうしましたー!?」


 少し先でリアナが呼んだ。


「こっちですよー!」


「ほら、呼んでるで」


 ラディスが歩き出す。


 イネスも続いた。



 ホンスーンは、北部の端にある町。


 グランディアにいた頃、イネスが知っていたのはそれくらいだった。


 通りには石造りの建物が並ぶ。


 店先には野菜や果物が積まれていた。


「おはよう!」


「今日は早いな!」


 荷物を抱えた男が、向かいの店へ手を上げる。


 その横を、籠を抱えた女性が通り過ぎた。


 少し先では、子どもが露店に並んだ果物を覗き込んでいる。


「……思っていたより人が多いな」


「はい!」


「田舎ってよく言われますけど、いい町なんですよ!」


「せっかく来たなら、ブドゥも食べてほしいです!」


「ブドゥ?」


 ラディスが首を傾げる。


「プチッとした食感のやつやったっけ?」


「知ってるんですか!」


「名前くらいはなぁ」


「でも鮮度が大事なので、外ではあまり食べられないんです!」


 リアナが通りの先を指差す。


「あそこにブドゥガーデンっていう人気のお店があるんです!」


「ブドゥを使った料理もたくさんあって――」


「リアナさーーん!」


 桃色の髪を揺らしながら、ユリィがこちらへ駆けてくる。


「リアナさん!」


 その後ろを、箱を抱えたノアとソラが追ってきた。


「ユリィちゃん」


「リアナさん、こんにちは!」


「こんにちは」


 ユリィの目がイネスとラディスへ向く。


「リアナさん、あの人たちも隊員さん?」


「はい」


「でも今はお仕事中なのです」


「何のお仕事?」


「それは秘密です」


「えぇー!」


「ごめんなさい」


「また今度、ゆっくりお話ししましょう」


「絶対ですよ?」


「はい」


 ノアが抱える箱の側面には、教会の印が描かれていた。


 家々の屋根の向こうには、丘の上の小さな教会が見える。


(――教会か)


「リアナさん、忙しいからまた今度だってぇ」


 ユリィが二人のところへ戻っていく。


「仕方ないよ。仕事中なんだから」


「ノアって真面目なことばっかり言うよね」


「お目付け役なんだろ?」


「納品するの忘れてない?」


「あっ!」


 ユリィがその場で向きを変える。


「ほら! 早く行くわよ!」


 三人はブドゥガーデンへ向かっていった。


「さっき言うてた店、あそこやろ?」


「はい!」


「ほな――」


「行くぞ」


 イネスが歩き出す。


「まだ何も言うてへんやん」


「顔に書いてある」


「ひどいなぁ」


 リアナも二人を追いかける。


「仕事が終わったらご案内します!」


「ほんま?」


「はい!」


「それなら楽しみにしとくわ」


 三人はホンスーン支部へ向かった。


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