工業都市編Ⅶ すくったものは
魔獣との戦闘をかろうじて勝利したルーは、直後眠る様に意識を失ってしまった。
ジッタの救出を終えた一行は安全を確認しながら坑道を後にする。
23番坑道は崩落により地下空洞と広範囲で繋がってしまった事や、空洞から現れた魔獣はレグナ達の報告から物理攻撃の通じにくい非常に厄介な魔獣であった事。その魔獣がどれほど空洞内に潜んでいるか不明瞭な事から、ギルドはより厳重な封鎖を決定した。
それに伴い頑丈な壁の建設や、後日上級冒険者を集い調査団を派遣する方向で話は進んでいる。
魔獣については、レニが持ち帰った前脚と回収できた残骸は工業ギルド預かりとなりレニが中心に調査を行う事となった。任命したホウル曰く残骸からでも得られる情報は多いらしく、任されたレニは見たことがない程はしゃいでいたようだ。
無事救出されたジッタ少年は違法に忍び込んだ事等、事の重大さからその処遇に様々な意見が出たようだが、施設預かりで監視付きではあるが鉱夫をしながら社会貢献をする処遇に落ち着いた。
ルーが自室へと担ぎ込まれた後、眠り続け数日が経った。坑道での出来事の後始末も少しずつ落ち着き始めた頃、ルーが目を覚ました。
「……っ!!……あ、あれ?」
坑道内部に未だいると思っていたが、ローゼンの自室の風景が目に映り思わず声が零れる。
混乱したまま辺りを見回すと、レグナが奥のテーブルセットで飲み物を飲みながらくつろいでいる様子が目に留まった。慌ててベッドから起き上がり、
「あの子はっ!……坑道はどうなった……あっ」
問いただそうと床に足をつけるが、数日眠っていた身体は踏ん張りが効かず、言い切る前によろけて地面にへたり込んでしまった。
レグナはその様子を見て、立ち上がりながらいつもの様子で答える。
「無事だよ。安心しろ。それからお前、数日間眠ったままだったからあまり無理するなよ」
そういうと、「医者に目が覚めた事を伝えてくる」と残し部屋を出ていった。
坑道での出来事が終わった実感も無いまま終わっている事や、からかわれるでもなくいつもの様子で話をするレグナに多少の虚無感を感じながら、ゆっくりと身体の調子を確認するように立ち上がる。
身体が鉛のように重い。
顔でも洗って少しさっぱりしようと、洗面所へ向かい蛇口を捻り洗面器に水を貯める。その水を掬う為水に手を入れると、その冷たさで頭が少し冴えてくる。それと同時に掬い上げ零れる水滴を見て、坑道での出来事を思い出してしまう。
先程感じた冷たさとは違う寒気が背筋を通り、言葉が漏れる。
「あたしには助け、れなかった……っ!」
坑道での記憶にある最後の場面。
届かなかった手や、少年の遠ざかる表情を思い出し、
「うわああぁぁ。ああぁぁっ…あぁっ……」
声を上げ泣き叫んでいた。
溜まった水面は手から零れる水滴が無くなった後も、波紋が生まれ続けていた。




